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パナソニック エコシステムズ、自動車部品や畜産関連市場にも参入し事業を拡大

パナソニック エコシステムズの春日井工場

 パナソニック エコシステムズは、愛知県・春日井市にある本社工場にて、今後の事業戦略についての発表会を開催。併せて、工場内をプレス向けに公開した。

 同社の事業概要を説明すると、扇風機や空気清浄機や住宅設備向けの換気扇、消臭・除菌効果が期待できるナノイー発生機などを開発・生産している。

 こうした室内空気質(IAQ)関連事業のほかに、環境エンジニアリング関連事業を展開。工場排水の処理とリサイクル、工場排ガスの浄化と回収、事業活動で汚染された土や地下水の浄化などを行なっているという。

パナソニック エコシステムズの沿革
創業以来、扇風機や換気扇、空気清浄機などの開発・生産に強みを持つ
1913年に発売された日本初の量産交流扇風機「タイフーン」
空気清浄機や創風機Qなどの消費者向け製品も生産

新市場の開拓と新規事業の起ち上げにより販売を急伸させる

 これまで開発・生産してきた換気扇や空気清浄機、環境エンジニアリング関連事業で培ってきた技術を活かし、新たな市場を開拓。さらに新規事業を創出していく、というのが今回の発表会でのポイント。

既存事業を活かし、新市場や新規事業を開拓していく
事業を広げることで、2018年度の販売目標を2,400億円にする計画

 まず新市場については、北米向けの住宅用の換気扇事業を強化していくとする。そのために行なったのが、メキシコにおける換気扇生産拠点の新設。従来の中国生産と比較すると、リードタイムの短縮やコスト力の強化などの効果が見込めるという。同工場での生産は、2016年10月に開始する予定。2014年度に約100万台であった北米市場における換気扇の販売を、2018年度には150万台規模に引き上げるとする。

パナソニックAVCネットワークス バハ カリフォルニア内に、天井埋込形換気扇の生産拠点を新設
北米向けの天井埋込形換気扇の一例

 新規事業で新市場を広げる試みとしては、まず「ディーゼルエンジン排ガス浄化用触媒フィルター」の生産と供給が挙げられた。これは、ディーゼルエンジン車のマフラー内に設置する、フィルターに同社の触媒フィルターをコーティングするというもの。

ディーゼル排ガス浄化用触媒フィルターに関する資料
自動車マフラー内のDPFに、同社の触媒をコーティングしたもの
新設される同社の中国・蘇州工場

 同社製の触媒フィルターは、排ガスに含まれる粒子状物質を分解。同フィルターを使用することで、省エネや燃費の向上、低コスト化が実現できるという。また、燃料の質に関わらず安定した性能を発揮できるとする。

 まずは中国のエンジンメーカーからの受注が決まったことと併せ、中国・蘇州に工場を新設。来月から生産を始め、2018年度には100億円規模を目指していく。

 なお、触媒の調合に関しては、当製品最大のブラックボックス。そのため調合に関しては、ここ春日井工場で行なっていき、情報流出などを防ぐという。

さらに農畜産分野へも進出!

農畜産分野へも進出していく

 さらに環境エンジニアリング関連事業における、新規事業および新市場の拡大に関しては、農畜産分野に進出していくという。これは、従来の工場ソリューションを、同分野に応用したもの。

 一例として挙げられたのが、次世代の閉鎖型牛舎の開発提案。従来の牛舎が開放型だったのに対し、閉鎖型とし、空調を制御することで、家畜の暑熱ストレスを軽減するというもの。牛舎内には温度/湿度/風速センサーを設置。同時にエアコンやミストを配置することで、快適な牛舎空間を維持するという。

 これは、これまで夏になると他の季節に比して搾乳量が落ちる、という問題を解決するためのもの。夏場の暑さによるストレスが、搾乳量に影響していたとする。同社の牛舎ソリューションを採り入れることで、暑熱ストレスを軽減。牛乳受給率、バイオせギュリティ(ハエなどの侵入を防ぐ)、育成環境の向上を図れるという。

「ディーゼル排ガス浄化用触媒フィルター」を製造しているところ。室内は撮影禁止

 事業説明会の後には、春日井工場の中を見て回った。非公開エリアや撮影禁止の場所が多かったものの、前述の「ディーゼル排ガス浄化用触媒」の製造工程なども見ることができた。

 ディーゼル排ガス浄化用触媒は、基本材料を水の中で混ぜたり、乾燥させたり、高温で熱したりと、大きく8つの工程で作られていく様子を見学。すべて機械の中で行なわれ、人の姿はほとんどなかった。

 そのほか、様々な製品パーツの生産工程や、組み立てていく様子を見て回り、春日井工場のポテンシャルの高さを垣間見れた。

巨大な成形機などが並び、次々と製品パーツができあがっていく
組立てエリア

まるで滝の周りに佇んでいるような気持ちになれる家電を研究開発

パナソニック エコシステムズの代表取締役社長 前田潔氏

 今回はB2B向けの事業説明会であったが、記者からの質問に答える形で、今後のコンシューマー向け製品についての展望も語られた。

 パナソニック エコシステムズの代表取締役社長 前田潔氏によれば、「空気をキレイにするだけでは満足しておらず、体感できる家電を提案したいと考えています。空調家電での体感と言えば、これまでは“見える化”を進めてきましたが、さらに進化。まだ研究開発の途上で、具体的に話せることはありませんが、例えば、まるで山奥にある小さな小川や滝の周りで佇んでいる時の気持ちになれるような、そんな空調家電を実現できないか? というようなことを考えています」

河原塚 英信