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着られる家電やペット用端末など「ウェアラブル EXPO」レポート
(2015/1/16 15:00)
ウェアラブル技術が一同に会する「第1回ウェアラブル EXPO」が、東京ビッグサイトで1月14日~16日の3日間、開催されている。今回初めて開催された同展示会は、会場の面積自体は巨大ホールのなかの一区画だけを使っていることもあり、そこまで広くはないものの、各ブースには多くの来場者が集まっており、ウェアラブル技術への注目度の高さをあらためて窺わせていた。
ウェアラブルデバイスと家電の接続といえば、昨年アップルの年次開発者会議「WWDC」でスマートホーム規格Homekitが発表されたことを皮切りに、今年発売予定のApple WatchがiPhoneを経由して家電と繋がることが予想され、今後、技術的にもより盛り上がる分野のひとつとして注目されている。
ここではそんな状況を鑑みて、家電に親和性が高そうなウェアラブル技術やデバイスなどについて、筆者が注目したものをレポートする。
着ている衣類を温かくするウェアラブルヒーター
三機コンシスはウェアラブルヒーターを展示。なかでも金属繊維を内側に縫い込んだ布を使用した「マイルドウォーマー」シリーズに注目したい。
マイルドウォーマーはヒーターが放熱する仕組みとして、銀の糸を編み込んでいるのがポイント。とはいえ、つるっとした生地表面で肌触りも良く、柔軟性・通気性・伸縮性ともに良好だ。それを縫製次第でさまざまな用途に転用できる。さらに薄手のメッシュ状に編まれたマイルドメッシュウォーマーは、レースのように透ける薄さだが、こちらも通電するとすぐに温まるのは驚きだ。
“着ることのできるヒーター”の用途として、マイルドウォーマー製のウインドブレーカーや靴下、膝を保護するサポーターなどが展示されていた。これらは“ウェアラブル家電=着られる家電”と呼んでもいいほどのクオリティで、電源はデジタル機器などと同様に、モバイルバッテリーを使用。
電源を取るコードやバッテリーはウインドブレーカーなどは内側を這わせたり、ポケットに入れこむことで、一般的な洋服類と見分けがつかない。靴下やサポーターなどは、電源コードなどをズボンのなかを通して、ポケットなどのモバイルバッテリーなどと接続して使うなど、少しだけ工夫が必要だ。
さらに、ウェアラブルではないものの、カーテンとしての使用もオススメだ。例えば寒冷地などでは、マイルドウォーマーとマイルドメッシュウォーマーを二重に使用し、窓の外から伝わる冷気を完全にシャットアウト。モバイルバッテリーで温まるほどの省電力なファブリックなので、エアコンなどとの併用で電気代や燃料代を確実に抑えられる。
マイルドウォーマー、マイルドメッシュウォーマーとも用途に応じて電力を計算したうえで、電極線加工と電源コードを取り付けられた状態で出荷される完全受注生産制。また、基本的には編み物として組成されているファブリックなので、手洗い洗濯に対応していて汎用性が高い。
ペットの居場所や健康状態がわかるanicallの「つながるコル」
愛犬家、愛猫家にオススメのウェアラブルアイテムが、anicallが発表している「つながるコル」だ。犬や猫の首輪と最新通信モジュールやセンサー、さらにはクラウドデータベースと解析技術を組み合わせたペットコミュニケーションツールだ。Amazonなどで3月から3,000円で発売予定だという。
「つながるコル」は、スマートフォンと接続することで、専用アプリからペットの足跡記録や友達探索ができるほか、GPSや地図と連動して迷子探索機能も搭載している。ペットの姿が見当たらない時、約20~40mの範囲ならスマホなどから自力で探索でき、さらには他のユーザーに、自身のペットが迷子であることをソーシャル経由で通知することで、一緒に探してもらうこともできる。Bluetooth L.E.モジュールを搭載し、ボタン電池1個で約1年動作可能
anicallは昨年3月に設立されたばかりの国内ベンチャーメーカー。「すべての動物にインターネットを~Internet of Animals」という標語を掲げ、ITテクノロジーによって、動物と人との新しいコミュニケーションを実現するのが設立目的だという。その第1弾製品がこの「つながるコル」だが、2015年中頃には加速度センサーを使い、犬や猫の行動や感情を伝える機能や、呼吸や心拍をセンシングするライフログ機能を搭載したモデルも投入予定とのこと。
また、2015年6月にはビーコンタグに加え、運動量センサーを搭載し、活動量測定機能を追加した「しらせるアム」も発売予定。20種類の行動解析機能があり、解析結果や行動起因要素を踏まえた「犬のキモチ」表示機能が使える。こちらの価格は現在は未定としている。
シート状でくしゃくしゃにしても使える、JENAXのフレキシブルバッテリー
韓国のJENAXが発表していたのが、フレキシブルバッテリー「J.Flex」。いわゆる既存の長方形や円柱、ボタン形状のバッテリーとは違い、最大の特徴は、シート状でフレキシビリティが高く、折り畳んだり、くしゃくしゃにしてもしわができる紙のようなバッテリーであること。
薄いシート状であるメリットに加え、製造注文段階で自由にサイズや形状を変えられる。例えば、ウェアラブルデバイスであるスマートウォッチや眼鏡型デバイスのバンドやフレームに内蔵させたり、それらと接続するスマートフォンのバッテリーを飛躍的に薄くできる。バッテリー内蔵のモバイル系、卓上系家電品などを、より自由なデザインやフォルムで製造することも可能となるはずだ。
さらに、同社によるとバッテリーは「フレキシブル リチウム二次電池」というもので、すでに国際基準の評価で安全性や耐久性が認められている。既存の一般的なスマートウォッチのバッテリーより6倍高い容量を実現できるほか、防水仕様であるとのこと。例えば、洗濯が必要なスポーツウェア自体に縫い付けることも可能で、今後センサー内蔵のスポーツウェアへの利用なども考えられる。
JENAXのシン・イヒョン代表理事は製品について、「ウェアラブルデバイス市場が大きくなるにつれ、新技術とウェアラブルデバイスを駆動させるバッテリーの存在がより重要になってくる。J.Flexは既存のバッテリーのデザインの限界を超えて、製品のより自由なデザインや革新的なデバイスを誕生させられる」と語っている。
世界初のフレキシブルバッテリーJENAXは、今後、既存のウェアラブルデバイスが抱えるスタミナ面やデザイン面の弱点を解消するものだけでなく、モバイル系、卓上系家電のデザインを飛躍的に向上させる革新的バッテリーとしても注目したい。
IoTを支えるクラウドサーバー「Kii Cloud」のウェアラブル端末
先日、米国ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES」でも盛り上がった、IoT(インターネット・オブ・シングス)。その縁の下の力持ち的役割を担うのが、クラウドサーバーを管理し、ユーザーに快適なプラットフォーム環境を提供するクラウドサーバー業者たち。Kii Cloudもそのひとつで、自社サービスをすでに採用しているウェアラブルデバイスや家電を紹介していた。
まずはアクセサリー風で、首に装着するウェアラブルデバイス「Fineck」。姿勢矯正用のネックウェアラブルであり、首の角度を常に計測し、首に過度の負担がかからないようにチェックする。スマホの専用アプリから、Bluetoothで連動するモニター情報を共有。特にスマホやタブレットの操作のやりすぎで、ついつい不自然な姿勢を長時間とってしまうなど、首の痛みなどに悩んでいる人におすすめだ。
例えば今後、日々のデータをクラウド上に蓄積し、健康診断の前に指定の医師にデータを提出することで、さまざまな生活習慣に対するアドバイスが受けられるような使い方も想定される。すでにクラウドファンディング「Kickstarter」で製造までの目標金額が集まったため、現在製品化に向けて動いているところのようだ。
続いて、卓上の温度&湿度計「Dita」。一見、木製のミュージックプレーヤー風のアイテムだが温度と湿度を計るだけでなく、PM2.5なども計測できる。それらの蓄積データはクラウド上に逐一送られ、専用アプリやWebサイトなどに表示可能。地図機能などとも連動しているので、世界中のDitaユーザーがクラウド上にアップしている大気情報などが一目瞭然で掴める。ただし、本製品は残念ながら日本では未発売のようだ。
最後は、洋服に装着して常に周囲の環境を計れる「Climate」。温度や湿度、紫外線量などをスマートフォンに同期し続けるコンパクトサイズのトラッカーである。24時間装着し続ければ、自分の周囲の環境数値をずっと計測できる。それらをクラウド上にデータとして記録し続けることで、専用アプリから日々の生活環境などをチェックできるというもの。
雲形のフォルムがキュートでカラーリングは全6色。iOS/Androidデバイスに対応し、バッテリーは6カ月連続可動。Kickstarter発のデバイスで、すでにAmazonで11,090円で購入可能。