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ハンズフリーショッピングや空中テキスト入力など、ウェアラブルテックエキスポ

六本木ミッドタウンで開催された「ウェアラブルテックエキスポ・イン・東京 2014」。登壇者の多くがウェラブル機器を身につけて登場

 3月25日、26日の2日間、米国発の国際ウェアラブル・カンファレンス「ウェアラブルテックエキスポ・イン・東京 2014」が、六本木ミッドタウンのホールエリアにて開催された。

 会場は2日間に渡り、30人を超えるキーパーソンが登壇し、現状それぞれがアプローチ/開発しているウェアラブル端末などを披露するキーノート会場、各企業がそれぞれのウェアラブル端末やサービスなどをデモンストレーションするブース会場に分かれていた。

ウェアラブルマンとして登場したのは元“侍ハードラー”こと為末大氏。ウェアラブルとスポーツとの親和性について語った。この日、為末氏は全身に10個のウェラブル機器を身につけていた
ミッドタウンのホールAがキーノート会場。プレス関係や一般観覧者などで賑わっていて、注目度の高さが窺われた

 初日のキーノート会場では、本イベントを主宰する朝日新聞のメディアラボが開発するウェアラブル端末用サービス「朝日新聞AIR」が紹介された。開発に携わる竹原大祐氏は、Googleグラスを装着しながらプレゼン。朝日新聞が考える、ウェアラブル端末と融合することで新聞ができることや、その取り組みについて熱く語っていた。

 例えば、新聞紙面などに掲載されているスポーツ記事のアスリート写真を、Googleグラスなどのウェアラブル端末で認識すると、紙面上にはレイアウトの関係で掲載されなかった写真などを一同に閲覧できるフォトギャラリーが表示されるといったものだ。

 さらに、一歩踏み込んだ取り組みとして構想しているのが、スポーツ観戦に行った会場自体がメディア化されるというサービスも面白い。例えば、甲子園球場などに野球観戦に行った際に、選手をGoogleグラスで見ると、その選手のこれまでの成績などが表示されたり、関連する新聞記事が表示されたり、会場にいくだけで、そのスポーツを立体的な視点から楽しむことができる。

「朝日新聞AIR」のイメージ。甲子園球場自体がウェアラブル端末を通して空間メディアになる。
Googleグラスで新聞記事を閲覧することで、記事の関連情報なども表示される。ブースのデモンストレーションには長蛇の列ができていた

 続いて、昨秋あたりから話題の指輪型ウェアラブル端末「Ring」が登場。開発者であるログバーの吉田卓郎氏が自らデモンストレーションを行なった。

 BluetoothやWi-Fiなどが多数飛び交う会場だったため、動作は非常に不安定だったにも関わらず、リングを装着した指先を空中で動かすだけで、例えば、スマートフォンの画面上にテキストを起こせたり、ページをめくれたり、カメラを起動させ、セルフシャッターで写真を撮ったり、動画を起動させたりと、端末に手を触れることなく動かす様は、まるで魔法を掛けているようだった。

 こちらは半年後ぐらいのローンチを目指しているとのことだが、その精度が高まれば、これまでのウェアラブル端末とは違った新たなウェアラブルシーンを世界に提供してくれることだろう。

「Ring」のデモンストレーション。指先を四角を描くように動かし、カメラを起動させた後、さらに指先の動きで、スマホに触れずにシャッターを切る
空中にアルファベットで“r・i・n・g”と書くことで、書いた文字がそのままテキスト表示される
井口氏と岩佐氏のトークセッションでは、ウェアラブル端末を作るメーカー側からの視点で、テレパシーワンの今後の展開についてや、ハードを開発することの難しさなどが語られた

 このほか、初日はファッショナブルなライフログ端末「misfit Wearables」のエミー・プリアフィット氏、トークショッションでは頭に付けるウェアラブル機器「テレパシーワン」で注目の井口尊仁氏、Cerevoの岩佐琢磨氏が一緒に登壇したほか、“ウェアラブルは映画製作を変えるか?”“日本のアニメに見るウェアラブルの未来”といったテーマで本広克行監督などが登壇するなど、さまざまなアングルからウェアラブル端末についての未来が語られた。

 そんななか家電Watchが注目するのはやはり、ウェアラブル端末と家電や生活シーンの融合だ。それについては、ブースエリア内の何社かの企業ブースで、デモンストレーションで披露されていた。

 まずはオムロンヘルスケアが披露している活動量計「アクティブシフト」だ。これは、端的に言えば万歩計の未来型であり、厚生労働省の定める、生活習慣病を防止する“1週間に23エクササイズ”、歩数に換算すると「1日あたりおよそ8,000~10,000歩位(1週間で56,000~70,000歩位)」に相当する運動をすることで、目標達成とアプリがみなし、次々とその目標を自動で上げることで、いつのまにか理想的な健康体が手に入るというものだ。

 この活動量計「アクティブシフト」のいいところは、毎日、普通に生活するなかで無理なく、理想的な健康体に近づけることだ。専用アプリ「アクティブシフト」には、目標がパーセンテージで表記され、その表記の周囲を取り囲む円が時間軸となっていて、そこから棒状のグラフが色別に伸びることで、その活動強度などが分かる。

 目標がパーセンテージで分かりやすいので、無理なダイエットや、わざわざエクササイズするのではなく、例えば“この1~2時間は机に座ったままで活動してないから、1つ前の駅から歩いて帰宅しよう”ぐらいの感じで、生活のなかに取り入れやすい。

 また、自分のパーソナルデータを入れるにあたり、例えば出身地に“和歌山”などを入れると、同じ「アクティブシフト」を使用する和歌山県民たちと繋がり、目標の達成率や回数などを合算、団体戦のような楽しみ方もできるエンターテインメント性も有するところもおもしろい。これは仲間とデータを共有することで、ユーザーが継続して使えるようにするための工夫だ。

 さらにWi-Fi搭載の体組成計も用意することで、すでにAndroidで展開されているアプリ「からだグラフ」を併用すれば、体重管理も合わせて行なえるので便利だ(今後iOS用のアプリも展開予定)。

 本端末やアプリは今年中にローンチされる予定とのことだ。

オムロンブースに展示されていた活動量計「アクティブシフト」。クリップで胸ポケットや内ポケットに入れておくだけで、活動をセンシング。スマホへ自動的に転送してくれる
目標をパーセンテージで表記。歩くのはもちろん、早く歩けば、強度が高い運動をしたとみなされ、それだけ目標に近づける。UIはグラフィカルで美しい

 次に、まさに着用するウェアラブル機器「Clothing+」にも注目だ。Clothing+は、洋服にそのままセンサーを縫い付けることで、わざわざセンシングパーツを装着しなくても、着用するだけで、ストレスなく、心拍が計れるトレーニングシャツ、筋肉強度を計れるインナーパンツなどが用意されていた。

 これらはトレーニングやタウンユース以外に、例えば、医療用などにも利用することも考えられている。Clothing+を着用することで、リアルタイムで掛かり付けの医療機関などにデータが転送、それらの数値が異常であれば、すぐに医療機関から逆に検診に来てくださいと連絡が来るようなサービスとの連動などがそれだ。

左はアディダスのタウンユース、もしくはアスリートが運動中に着用するだけで、内側に縫い付けられたセンサーが心拍を計測。送信機からスマホへ自動的にデータを送ってくれる。右はフィリップスの医療用ウェア。できることは同じ
Clothing+はセンシングに強いメーカーであり、スマホのアプリや送信する端末などはサードパーティーのものを利用して使う。つまり、いつも使っている健康系アプリでも、こちらのセンサーで計った数値を読み取れる仕組みに

 続いて、野村総研がデモンストレーションで披露していたのが、Googleグラスとの連動で実現する新しいショッピング方法だ。まだ、構想段階中なので正式な名称はないが、例えば買い物をしている時に、Googleグラスでその商品を見ると、Twitterの口コミが表示されたり、その成分やら味やらが文字情報として表示されるというものだ。

 現状ではスマートフォンなどで調べればできるが、見るという行為だけで、すべての情報がそのまま目の前に表示されるという体験は、例えば両手が塞がっているようなショッピング時などに、非常に有用なサービスであり、眼鏡型のウェアラブル端末ならではの体感だろう。

Googleグラスを装着する筆者。これで商品を見るだけで、いろいろな関連情報が表示される
表示されたイメージデモ。特定のペットボトルにGoogleグラスを通じて視点を移すと、目の前にPCに表示されているようなインターネット上の口コミなどが表示され、その情報を閲覧しながら買うかどうかを決められる

滝田 勝紀