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眠気や疲れなど身体の内面が分かるアイウェアがJINSから登場
(2014/5/13 15:15)
精度の高い「Deep Data」をリアルタイムで検出
アイウェアブランドのJINSは、眠気や疲れなどを検知できる「センシング・アイウェア JINS MEME(ジンズ・ミーム)」を2015年春より発売する。現時点で発売価格などは未定だが「JINSの商品なので、手が届かない価格設定にすることはない」(ジェイアイエヌ 代表取締役社長 田中仁氏)という。
眼電位センサー、加速度、角速度センサーなどを搭載したメガネタイプのアイウェア。人間の五感の約9割を占めるという目の動きに着目し、「疲れ」や「眠気」などの情報を可視化、管理できるという。
JINS MEMEでは、人の眼球運動に伴う目の周りの電位差を検出。人の眼球は、角膜側が正の、網膜側が負の電荷を帯びており、その電位差を眼電位という。これを検知することにより、8方向の視線移動とまばたきをリアルタイムで測定することができる。同社ではこれらのデータを人間個人の深い所から得られる深度及び、精度の高いデータ「Deep Data」とする。
これまでも、視線移動を検知する「アイ・トラッキング」技術や、眼電位測定技術などは存在したが、バッテリー消費が大きかったり、特別な装置が必要だったりと、リアルタイムで、常時計測することは難しかった。同社では、東北大学加齢医学研究室の川島隆太教授をはじめとした各研究施設と共同で研究を進めることで独自の「三点式眼電位センサー」を開発。メガネの鼻パッドと、眉間部分から検出される眼電位からDeep Dataを検出できるという。
疲れや眠気を可視化
ジェイアイエヌ 代表取締役社長 田中仁氏は、JINS MEMEとスマートフォンのアプリを組み合わせることで、様々な可能性が広がるとし、具体的な活用方法として、オフィス、ドライブ、フィットネスの3つを挙げる。
オフィスシーンでは、目の動きから、疲れや集中度を割り出し、独自の疲労指数「me(Mental Energy)」で可視化。
「疲労をマネジメントできる」(田中仁代表取締役社長)という。
ドライブシーンでは、眠気を検知。人の目は眠気が増すと、特有の動きをするが、JINS MEMEでは、その点を活かして独自のアルゴリズムを構築。ドライバーの眠気の兆候を事前に察知し、アラートする機能の構築を目指す。
フィットネスシーンでは、歩数カウントや活動量のほか、ランニングや歩行中の体の傾きやブレをリアルタイムで把握できる。頭部の動きは、他の体の部位に比べ、重心や体軸などの動きを反映しやすいため、腕などに装着するリストバンド型のセンシングデバイスよりも正確なデータを得ることができるという。
オープンソースにすることで可能性を広げる
田中仁代表取締役社長は、JINS MEMEについて「想像の遙か先をいく製品。これまでのアイウェアは外を見るために使われていたが、JINS MEMEでは内面を見ることができる。疲れや眠気を検知することは社会貢献にも大きくつながる」と話す。また、JINS MEMEのAPIは全て公開され、開発者用キットの提供も行なう。これは、オープンソースにすることで、JINS MEMEの更なる可能性を広げるためで、現時点ではデンソーと共同でJINS MEMEを使った運転サポートシステムの開発を進めているという。
アプリケーション開発環境はMac OS、Windows、Linux。通信環境はBluetooth 4.0 smart。外部インターフェースはMicro USB。
JINS MEMEのデザインは、Audi A6などのデザインを担当した世界的デザイナー SWdesignの和田智氏が担当。「普通のメガネ」としての佇まいを保ちながら、テクノロジーと機能性を融合させたデザインを目指した。現時点ではウェリントン、ハーフリム、サングラスの3種類をラインナップする。
本体重量は、約36g。リチャージブルリチウムイオンバッテリー内蔵で、連続使用時間は約8時間。充電時間は1時間。本体装着の際は、3点の電極が肌にしっかりと触れるようにするほか、柄の部分に設けられている電極が肌に触れるようにする必要がある。本体には充電ケーブル、メガネ拭き、メガネケースが付属する。
世界唯一のウェアラブルデバイス
JINS MEMEの共同研究にも参加する慶應義塾大学 メディアデザイン研究科 稲見昌彦教授は、これまでのウェアラブル機器について「装着するコンピューターという世界観にとらわれすぎるあまり、20年前からほとんど進化していない。ウェアラブル機器というのは、機会が人によりそう『人機一体』であるべき。すでに社会に根付いている製品を使っているという意味でもJINS MEMEは世界で唯一のウェアラブルであるといえる。生活の嗜好や行動に大きなインパクトをもたらすだろう。このようなテクノロジーを持った製品が電気メーカーではなく、メガネブランドのアプローチから生まれたことには本当に驚く」と話す。