三菱、LED照明事業拡大に向け事業再編、施設用でトップシェアを目指す

~価格を抑えた全方向タイプのLED電球も11月より発売

 三菱電機は、LED照明事業拡大を目指し、3社体制だった照明分野を1社に統合し、10月1日より三菱電機照明会社株式会社として発足する。新体制に伴う体制概要や今後の事業方針に関する説明会を、25日、報道陣向けに開催した。

 三菱電機では、従来、照明器具の製造/販売を担当する現・三菱電機照明、ランプ/蛍光灯の製造を担当するオスラム・メルコ、販売を担当する三菱電機オスラムの3社体制で照明事業を担当していたが、照明事業の製造、開発、販売を一括して行なうことを目的とし、三菱電機照明の1社体制に再編。

 三菱電機照明では、特にオフィス・工場・倉庫・店舗商業施設分野を重点3分野とし、2016年度の売上目標額を500億円と掲げる。

従来3社体制で行なったいた照明事業を1社体制に再編した三菱電機照明の事業方針。照明事業分野の強化を目的とし、特にオフィス、工場倉庫、店舗商業施設を施設用重点3分野とし、トップポジションを目指すという2016年度の売上目標として500億円を掲げる

 製造体制においては、従来オスラム・メルコの工場であった静岡・掛川市の掛川北工場と、旧・三菱電機照明の器具を製作していた掛川南工場の2つの工場を軸とする。国内工場で生産することで、高い品質基準と安定した製品供給を実現するという。

 開発体制では、独自技術の開発を推進するために、研究開発部を新設し、差別化技術開発を進めていく。光学/放熱/電源設計においての内製化技術のほか、様々な規模で応用可能な照明制御システムを強みとし、独自の「色度層別実装システム」により、光の質向上にも配慮するという。

 これらの戦略によって、製品ラインナップをさらに拡充し、2016年度で5,000機種を目指すという。

製造拠点は、従来オスラム・メルコや三菱電機照明が使っていた静岡県掛川市の工場光学/放熱/電源設計においての内製化技術のほか、様々な規模で応用可能な照明制御システムを強みとする独自の「色度層別実装システム」により、光の質向上にも配慮する
三菱電機 常務執行役 リビング・デジタルメディア事業本部 本部長 梅村博之氏

 なお、これまで資本提携していた独・オスラム社との契約は切れるものの、技術・開発においての連携体制については従来通り行なう。ライセンス契約については、現在話し合いを進めている最中だという。

 三菱電機 常務執行役 リビング・デジタルメディア事業本部 本部長 梅村博之氏は「KED照明事業分野は、先日発表した新しいトータルコンセプト『スマートクオリティ』を支える重要な事業分野であり、省エネ・環境負荷商品の基幹製品」と位置づけ、2016年度のLED照明市場を1兆1,000億円と見込む。

三菱電機照明 中村俊夫取締役社長

 三菱電機照明 中村俊夫取締役社長は、今回の再編の狙いについて「開発や決断のスピードアップが狙い」と答え、その理由について「従来型の照明は、器具と光源が別々だった。それが、LED照明では器具と光源が限りなく近くなっている」と答えた。

 会場からは「業務用分野においてもLED化はかなり進んでおり、大きな市場成長は望めないのではないか」という質問が出た。これに対して中村俊夫取締役社長は、「節電や省エネが求められる市況環境において、まだまだ成長機会はある。特に注目しているのは、リニューアル事業。新築件数が前年比105%に対して、業務用LEDが前年比260%の伸長を見せているのは、リニューアル件数が多いことが要因。リニューアルの場合、新築物件と異なり、施主に直接営業をかけて、製品の説明する必要があり、現時点ではそこまでルートが確立されていない。事業再編に際して、リニューアル事業を強化するという目的も含まれている」と説明。

 営業力を強化するために、三菱電機本社の営業本部に三菱電気照明の開発営業部を新設。既に活動を開始しているLED営業推進センターと連携することで、営業力・販売力を強化するという。三菱電機との連携営業によって導入が決まった事例として渋谷の商業施設「ヒカリエ」や東京駅丸の内駅舎などを挙げる。

 またLED照明の新ブランドとして「MILIE(ミライエ)」を立ち上げ、広告や宣伝も積極的に展開する構えだ。

三菱電機本社の営業本部に三菱電気照明の開発営業部を新設。三菱電機と連携することで、営業力・販売力を強化するという三菱電機照明の新ブランドとして「MILIE(ミライエ)」を立ち上げる10月1日にリニューアルオープンする東京駅丸の内駅舎にも三菱電機照明のLED照明を納入したという

 そのほか会場からは、LED照明事業に参入しているメーカーが液晶テレビ同様に多く、様々なメーカーが乱立している状況を指摘した上で、「三菱電機照明はどのようなスタンスで事業を進めていくのか。シェアを重視していくのか、それとも付加価値を高めて利益率を重視していくのか」という厳しい質問が出た。

 中村俊夫取締役社長は、「非常に答えにくい質問」と前置きしながらも「会社として利益を追求していくのは当然のことではあるが、正直にいうと、全方位で戦っていくというのは無理がある。だからこそ、施設3分野に的を絞って徹底的に強化していく」と答えた。

 梅村博之常務執行役は、同じ質問に関して「(施設3分野に関して)トップポジションである25~30%のシェアを穫るという覚悟で新会社をスタートしている」と自信を見せた。

新会社記念商品として全方向タイプのLED電球を発売

新会社発足記念商品として発売される、オフィスや施設用の直管形ランプ搭載器具「Lファインecoシリーズ」。右から3,500lm/2,400lm/2,000lm/1,500lmの4種類の明るさを用意する

 説明会では、新会社発足記念商品として、オフィスや施設用の直管形ランプ搭載器具「Lファインecoシリーズ」と、E26口金の「全方向タイプ 一般電球形」、工場・倉庫向けの「LED高天井シーリング」などを展示していた。

 Lファインecoシリーズは、昼光色/昼白色/白色/温白色/電球色の5つの光源と、3,500lm/2,400lm/2,000lm/1,500lmの4種類の明るさから計10種類(明るさによっては光源の種類が少ないものがある)のラインナップを揃えたオフィスや施設向けの直管形ランプ搭載器具。

 直付タイプ、埋込タイプ、特殊用途タイプなど様々な器具と組み合わせることが可能で、組み合わせは約1,000通りにも及ぶ。価格帯は、6,000円~16,000円。オーソドックスな定格出力タイプ、明るさ2,400lmの希望小売価格は9,500円で、これは、従来モデルと比べると約2,500円、大幅に価格を下げている。

 中村俊夫取締役社長は「普及を進めるために、性能、価格ともにトップを走りたい」とコメントした。

11月1日発売の「全方向タイプ 一般電球形(E26口金)」。一般電球40W相当タイプと60W相当タイプで、それぞれ昼光色と電球色を用意する

 家庭用のLED電球に関しても価格を抑えている。11月1日発売の「全方向タイプ 一般電球形(E26口金)」では、一般電球40W相当タイプと60W相当タイプで、それぞれ昼光色と電球色を用意。いずれも密閉器具に対応する。

 価格はオープンプライスだが、40W相当タイプで2,000円以下、60W相当タイプで2,500円前後を想定している。担当者は「光が全方向に広がるタイプとしては抑えた価格設定で、購入しやすい」と話す。

 本体サイズは60×116mm(直径×高さ)。演色評価数はRa80。いずれの製品も定格寿命は4万時間。一般電球60W相当の全光束は電球色で810lm、色温度は2,700K。

一般電球60W相当、電球色の「LDA11L-G-D1」。全光束は電球色で810lm、色温度は2,700K。消費電力は11.4W一般電球60W相当、昼光色の「LDA11D-G-D1」。全光束は電球色で810lm、色温度は6,500K。消費電力は10.3W
一般電球40W相当、電球色の「LDA7L-G-D1」。全光束は電球色で485lm、色温度は2,700K。消費電力は7.3W一般電球40W相当、昼光色の「LDA6D-G-D1」。全光束は電球色で485lm、色温度は6,500K。消費電力は6.4W
照明器具に取り付けたところ。光が全方向に広がっているのがわかる上から見たところ従来の全方向タイプのLED電球に比べ、価格を抑えている





(阿部 夏子)

2012年9月25日 15:41