パナソニック、家中の家電を自動制御する「AiSEG(アイセグ)」
パナソニック エコソリューションズ社は、家庭向けのエネルギーマネジメント・システム(HEMS:ヘムス)の新製品として、エアコンなどの家電を自動で制御し、快適さを保ちながら節電する制御装置「AiSEG(アイセグ)」を、10月21日に発売する。希望小売価格は、AiSEG本体とエネルギー計測ユニットのセットで112,350円。
同社が10月より本格展開するHEMS関連製品シリーズ「スマートHEMS」の中心となる製品。HEMSとは、家庭で消費・創出するエネルギーを見える化したり、また家庭内で消費するエネルギーを最適に制御することで、エネルギーを管理するシステムのこと。今回のAiSEGは、パナソニックのHEMSの中核機器に当たり、家庭におけるエネルギーの可視化と、家電製品の自動制御という2つの役割を担う。
パナソニックのHEMSの中核機器に当たる「AiSEG(アイセグ)」 | 写真右のエネルギー計測ユニットも、AiSEGとセットとなっている。写真左は家庭に設置されている分電盤 |
HEMSとは、ホーム(H)・エネルギー(E)・マネジメント(M)・システム(S)の略。エネルギーを見える化し、機器を制御するなど、家庭におけるエネルギーを管理するシステムとなる | パナソニックでは、AiSEGを中心としたHEMS関連製品を「スマートHEMS」と称しており、今後は電気自動車やヘルスケアなどへカテゴリーを広げていくという |
■電気/ガス/水道の使用量を計測、テレビやスマホに表示
エネルギーの可視化については、電気・ガス・水道の使用量をリアルタイムに計測。電気使用料は、家全体、または回路ごとに算出できる(最大38回路)。また、家全体の電力収支、電気料金の目安や、太陽光発電システムおよび燃料電池の発電状況についても表示する。省エネの達成度をペンギンのキャラクターで表示したり、創エネルギー量で日本を横断するゲームが用意されるなど、楽しみながら節電できる機能も用意されている。
モニターは、専用の「HEMSモニター」、ドアホンと連携する「住まいるサポE型」の2種類が用意される。また、テレビやパソコン、スマートフォンでもモニタリングができる。
家庭で消費、あるいは創りだしたエネルギーをわかりやすく表示する | 創エネをサポートするモードも用意されている |
測定したデータは、専用のモニター以外でも見られる。テレビでも可能という | そのほか、タブレット端末やスマートフォンでも閲覧できるという |
パナソニック エコソリューションズ社 まるごとソリューションズ本部 システム企画グループ 商品企画チーム 岡村晶子参事 |
パナソニック エコソリューションズ社 まるごとソリューションズ本部 システム企画グループ 商品企画チーム 岡村晶子参事は、HEMSでエネルギーを見える化することに対するメリットとして、「何を節電したら良いのか分かりやすくなり、自分がやった行動の効果がわかるので励みになる。節電の達成度をアニメーションで表示するコンテンツも用意している。家族で楽しく節電できる仕様になっている」と説明した。
■エアコンなど使用電力が多い機器を自動で制御。電気の使いすぎによる停電も抑制
機器の制御では、エアコン、IHクッキングヒーター、エコキュートのうち、HEMSの標準規格「ECHONET Lite」を搭載した同社製品と連携する。
AiSEGに対応するエアコン。10月に発売する、新しいXシリーズが対象 | IHクッキングヒーターは、10月発売の新製品「KZ-R573SG」が対応する | エコキュートは現在発売中の製品の中にも、一部対応するものがある |
例えばエアコンでは、スイッチを入れてから30分後に、冷房なら28℃、暖房なら20℃の省エネ温度に自動で変更する。またエアコンの運転中に、外気温が28℃(冷房時。暖房時は20℃)になったら、テレビなどのモニターにメッセージを表示し、エアコンの無駄遣いを防ぐ。
さらに、大量に電気を使用している際に、消費電力の高いIHクッキングヒーターを使った場合は、エネルギー計測ユニットが検知。住まい全体の電気使用量に応じて、IHの火力を自動で調節し、ブレーカーが落ちるのを防ぐ。エコキュートについては、昼間に太陽光発電で作った余剰電力で、エコキュートを自動で沸き増しする。
AiSEGによる機器ごとの制御一覧 | 機器の使いすぎによる停電を防ぐ機能も用意されている |
エアコンの機能。自動的に28℃設定で冷房したり、外気温をモニターに知らせる機能を備える | IHクッキングヒーターとエコキュートの機能。エコキュートでは、太陽光発電の電気を使ってお湯を温める |
このほか、スマートフォンでの操作も可能。宅内の場合は、Wifi経由で上記3製品全てが操作可能。宅外からはエアコンのみ操作できる。操作内容は、エアコンは運転状態の確認とOFF、IHクッキングヒーターは主電源OFF、エコキュートは風呂の自動沸き増し。なお、エアコンを外出先から操作する場合は、専用のアプリと別売りの無線アダプター「CF-TA9」が必要。
岡村参事は、AiSEGの制御の対象機種がエアコン・IHクッキングヒーター・エコキュートになった理由については「空調と給湯、瞬間的に電力を買うIHクッキングヒーターを制御することが、HEMSにとって大事。機器の双方で会話をして、可能な範囲内でIHクッキングヒーターが使える」と話す。
なお、AiSEGは新築のほか、既存の住宅にも取り付け可能。機器同士の通信は無線で、電波障害に強いとされる920MHz帯を使用する。月額の利用料金は不要。AiSEGのソフトを書き換えることで、ソフトのアップデートもできる。
また、AiSEGは平成23年度のエネルギー管理システム導入促進事業における、補助金対象機器に採択されているため、「10万円の補助金が付く」(岡村参事)という。
■“スマートHEMSなら、快適さを保ちながら節電できる”
パナソニック エコソリューションズ社の長榮周作社長 |
パナソニック エコソリューションズ社の長榮(ながえ)周作社長は、スマートHEMSを展開する意義について、「今日で震災から1年半が経つが、電力の需給関係が逼迫している。現在の節電は『我慢の節電』。快適を担保しながら節電していこうということで開発した」と説明した。
また、同社が扱っているスマートHEMS関連製品は、現在のところAiSEGと、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた「創蓄連携システム」の2つが中心となっているが、今後は次世代電力計「スマートメーター」との連携や、家庭と電気自動車の間で電力が相互供給できる「V2H」(Vehicle to Home)との連携も目指していくという。
長榮社長はまた、HEMSの販売目標について、2013年度は1万セット、2015年には5万セットという販売目標を掲げた。
「BEMS(ビル版のHEMS)なども含めると、かなり大きな市場になる。非住宅用途にも応用していきたい。関連商材も含めたHEMSの販売金額目標は、13年に200億円。15年には2,000億円を予定している」(長榮社長)
パナソニック まるごとソリューションズ本部 住宅システム企画グループの磯崎典夫グループマネージャー |
このほか、他社のHEMSと比較したメリットについては、「いろいろな機器が繋がって省エネ効果を発揮できるところ。また、エコだけを目指すのではなくて、暮らしの快適性や利便性の向上など、エコ以外の拡充も図っている」(パナソニック まるごとソリューションズ本部 住宅システム企画グループの磯崎典夫グループマネージャー)とのこと。対応機器とサービスの広がりが、スマートHEMSの特徴という。
HEMSの導入による省エネ効果については「利用状況によって効果の程度がまちまち」(磯崎グループマネージャー)とのことだが、「今後は特定のパターンにおける情報を明らかにしていきたい」(磯崎グループマネージャー)と、今後は具体的な数字を示す意向を明らかにした。
(正藤 慶一)
2012年9月12日 00:00