ダイキン、スギ花粉の新たな有害性とストリーマ放電の効果を実証

 ダイキン工業は、スギ花粉の新たな有害性と、同社独自の放電技術「ストリーマ放電」の抑制効果を発表した。

 ストリーマ放電技術とは、同社の空気清浄機「光クリエール」などに搭載されているプラズマ放電ユニットで、空気中のウイルスや細菌、カビなどが除去できる機能。一般的な放電ユニットである「グロー放電」と比べると放電領域が広い点が特徴となっており、空気中の酸素や窒素と電子がより衝突しやすい。そのため、強力な酸化力を持った「活性種」が生成されやすく、グロー放電の1,000倍以上の強力な分解能力があるという。この活性種が、ウイルスや花粉といったアレル物質の表面のタンパク質を取り囲み、分解、除去する作用がある。

 同社ではこれまでにも、多種類の花粉アレルゲンへの効果や、スギ花粉の表面だけでなく芯の部分のアレルゲンまで分解することなどを実証してきた。

 今回実証したのは、京都大学大学院工学研究科の高野裕久教授との共同研究により明らかになったスギ花粉の人の細胞に対する有害性についてと、その有害性に対してのストリーマ放電の効果について。

 実験では、スギ花粉を人の気道上皮細胞に接触させ、その後の経過を観察。すると、IL-6という炎症を発症する際に生産されるタンパク質の一種の生産量が増加し、細胞の一部を破壊する有害性が明らかになった。

 スギ花粉のアレルゲン作用に感してはこれまでにも知られていたが、人の細胞に対して直接何らかの有害性を持つということは、今回始めて判明した事実だという。

これまで、スギ花粉はアレルゲンとして人に作用し、鼻水やくしゃみなどの症状を引き起こすと考えられていた今回の実験では、スギ花粉を人の気道上皮細胞に接触させ、その後の経過を観察スギ花粉を接触させた人の培養細胞は、IL-6を生産し、細胞の生存率が低下したという
ストリーマ放電を照射したスギ花粉を接触させた細胞は、自然界のスギ花粉を接触させた細胞に比べ、IL-6の生産量が少なく、細胞の増殖率/生存率が高かった

 さらに、人の細胞に対するスギ花粉の有害性をストリーマ放電が抑制できることを実験/実証した。実験では、ストリーマ放電を照射したスギ花粉とそうでないスギ花粉を人の培養細胞に接触し、そこで生産されるたんぱく質の量と、細胞増殖率を比較。

 その結果、ストリーマ放電を照射したスギ花粉を接触させた細胞は、自然界のスギ花粉を接触させた細胞に比べ、IL-6の生産量が少なく、細胞の増殖率/生存率が高かったという。これにより、スギ花粉による人に対する直接作用をストリーマ放電が抑制することが明らかになった。

ダイキン工業株式会社 環境技術研究所 主席研究員 医学博士 新井潤一郎氏

 ダイキン工業株式会社 環境技術研究所 主席研究員 医学博士 新井潤一郎氏は、今回の実験結果について「日本人の3人に1人が花粉症と言われているが、その原因や判断方法については未だにわかっていないことも多い。花粉が直接人の細胞に作用するという今回の実証結果は、花粉症について長年抱えていた疑問を解決する1つの道筋になるかもしれない」と話した。

京都大学大学院工学研究科の高野裕久教授

 共同研究した京都大学大学院工学研究科の高野裕久教授は、ストリーマ放電について「医療界においては、エビデンス(証拠)に基づいた治療を行なうのが、当然の流れになっている。しかし、一般的な製品においては、確固たる証拠もないのに、性能を謳っている製品が横行している。その点、ダイキンのストリーマ放電はエビデンスを重要視している」と話した。

 なお、今回の研究成果は2012年11月29日から大阪国際会議場で開催される「第62回日本アレルギー学会秋季学術大会」にて、京都大学と共同で発表する予定だという。





(阿部 夏子)

2012年1月20日 15:26