パナソニック、シンガポールでエナジーソリューションの共同実証プロジェクト
キックオフセレモニーに出席したパナソニックおよびシンガポール政府関係者 |
パナソニックは、シンガポール共和国の「プンゴルエコタウン」において、創エネ、蓄エネ、エネルギーマネジメントを組み合わせたトータルエナジーソリューションの開発と実証プロジェクトを推進することで合意した。
住宅開発局、エネルギー市場監督庁、経済開発庁の3つの政府機関と共同で、今後2年間にわたり、シンガポールの公営集合住宅のエネルギー効率の改善に向けてのプロジェクトを推進する一方、パナソニックは、シンガポールにおけるトータルエナジーソリューション事業を推進し、省エネの推進、再生可能エネルギーの拡大、エネルギーの地産地消などに取り組むことになる。
シンガポールで行なわれたキックオフセレモニーで挨拶するパナソニックの大坪文雄社長 |
8月1日にシンガポールで行なわれたキックオフセレモニーに参加したパナソニックの大坪文雄社長は、1980年代末からシンガポールのAV機器製造会社の社長として自身が現地に5年半勤務していたこと、現在、パナソニックグループにはアジア太平洋地域を統括する地域統括会社を含めて10以上の会社があるなど、密接な関係にあることに触れながら、「今回のプロジェクトは、パナソニックの事業戦略全体におけるシンガポールの重要性を示したもの」と位置づけた。
さらに、「シンガポールは、人口の80%以上が住宅開発局の高層建築に住む、亜熱帯地域の都市国家。このような住環境は、他の人口密度の高い都市と類似している。パナソニックがエナジーソリューションをアジアで拡大するには、まずは成功モデルを作り、他の都市にカスタマイズしつつ展開していくことが重要。シンガポールは、エナジーソリューションを他の都市で展開する前の理想的な実証実験の場でもある」などとした。
具体的な活動として、集合住宅のルーフトップを活用した太陽光発電システムとリチウムイオン電池設置による創エネと蓄エネの推進のほか、停電時においてリチウムイオン電池を、共用部の照明、エレベーター、上水用ポンプのバックアップ電源として活用、各住宅内に設置するIHD(In Home Display)による、住宅内での電力、水道、ガスの使用量の見える化の促進、SEG(Smart Energy Gateway)を介してスマートメーターとエアコンなどの家電機器を連携させ、住宅向けデマンドレスポンスの実現に取り組みなどが挙げられた。
また、これらの取り組みを通じて、熱帯地方における太陽光発電システムとリチウムイオン電池による創エネ、蓄エネ連携技術の開発とシステム特性の評価、集合住宅におけるスマートメーター導入時のネットワーク品質の評価、スマートメーターとHEMS(Home Energy Management System)連携によるデマンドレスポンス技術の開発と導入時の省エネ性・快適性の評価などを行ない、その成果を東南アジアなどの各国地域に展開していくことになる。
まずは、2012年1月から住宅内での電力、水道、ガスの使用量を見える化を開始。3月からは太陽光発電システムを導入した試験運用を開始する。また、デマンドレスポンスやスマートメーターについては2012年9月から試験運用を開始し、2013年1月には、太陽光発電システムとリチウムイオン電池との連携システムの試験運用を開始する予定。これらの試験運用を通じて、2013年度以降、商用化していくことになる。
パナソニックでは、中国とシンガポールの共同プロジェクトである天津エコシティ、中国の大連ベストシティ、日本の藤沢サスティナブルスマートタウンといったスマートシティプロジェクトにも参画している。
また、同社は、ファミリーマート、NTTデータ経営研究所と共同で、ベトナム・タイのコンビニ・エコ店舗化への取り組みを開始することも発表した。
ファミリーマートがタイおよびベトナムで出店している約630店舗の中から、数店舗を抽出し、パナソニックグループが開発している高効率設備機器ならびにグリーンIT技術を導入することで、CO2排出量の削減ポテンシャルを調査。店舗の改装によるエコ店舗化や、ベトナムへの新規店舗におけるエコ化を進め、地球温暖化防止へ貢献することを目指すという。
現地実証によるCO2排出削減効果の確認、事業化の検討のほか、二国間クレジットで利用する新しいMRV(Monitoring, Reporting, Verification)手法に関する検討も行なうことになる。
なお、この取り組みは、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「平成23年度 地球温暖化対策技術普及等推進事業」となっている。
(大河原 克行)
2011年8月3日 13:21