三洋の電解水技術、院内感染の一因「アシネトバクター菌」を10分で99%除去

三洋電機の除菌・脱臭技術「電解水技術」は、家庭用の空気清浄機や業務用空調システムに搭載されている。写真は同技術が採用されているヨドバシカメラのマルチメディア京都店

 三洋電機は、同社の除菌・脱臭技術「電解水技術」が、院内感染の一因とされる「アシネトバクター菌」を10分で99%以上除菌することを実証したと発表した。

 電解水技術とは、水道水を電気分解することで、次亜塩素酸とOHラジカルという2種類の活性酸素を生成し、その酸化力でウイルスや菌、ニオイなどを浄化するというもの。同社の空気清浄機や加湿器、業務用空調システムなどには、「ウイルスウォッシャー」の名称で搭載されている。


電解水では、水道水を電気分解し、酸化力の強い次亜塩素酸とOHラジカルという活性酸素で除菌・脱臭するというもの除菌方式には、電解水のフィルターに空気を通す「除菌エレメント」方式と、電解水をミスト化して放出する「電解ミスト」方式がある
電解水がウイルスを抑制する仕組みウイルスやアレル物質、ニオイなどに効果がある
アシネトバクター菌は、院内感染問題で注目されている、抗生物質が効かない菌「多剤耐性菌」の一種

 電解水技術はこれまでにも、インフルエンザウイルスやノロウイルスに対する効果が実証されてきたが、今回はアシネトバクター菌に対する効果の検証実験が行なわれた。アシネトバクター菌は、現在、院内感染問題で注目されている、多くの薬が効かない細菌「多剤耐性菌」の一種。健康な人には病原性を示さないものの、体力や免疫力の弱った人に対しては病気を起こす“日和見感染症”の原因になるという。

 実験は、電解水に直接アシネトバクター菌を接触させる「電解水直接実験」と、電解水をミスト化して室内に放出する「電解ミスト」による2通りが行なわれた。なお、実験は群馬県衛生環境研究所との共同で実施されている。

 電解水直接実験は、アシネトバクター菌液と電解水を混和し、10秒接触させた後、電解水の反応を停止するための「チオ硫酸ナトリウム水溶液(0.2%)」を加え、溶液中に生存している細菌数を計測するというもの。この結果、水道水と比較すると、同菌を99.9%以上減少できたという。

 電解ミストでの実験は、アシネトバクター菌をガーゼに付着させ、電解ミストユニットから30cmの位置に菌付着ガーゼを200Lのチャンバー(実験室)に吊し、電解ミストを10分間放出するというもの。この結果、電解ミストを放出しなかった場合と比較すると、10分間で同菌を99%以上減少できたという。

実験は、電解水に直接アシネトバクター菌を接触させる「電解水直接実験」と、電解水をミスト化して室内に放出する「電解ミスト」の2通りが行なわれた。写真は「電解水直接実験」電解水直接実験では、10秒間で菌を99.9%以上除菌できたという
電解ミストの実験の概要電解ミストでは、付着菌の99%以上が除菌できたという効果の概略図。薬剤耐性に関係なく、幅広い細菌に効果を発揮するという
 三洋電機では、今後も電解水技術の新たな効果の検証実験を行ない、研究・応用をさらに発展させていきたいとしている。

 なお、電解水技術を搭載した商品は病院での導入例もあり、待合室に置かれていることが多いという。

電解水技術の導入事例。病院には待合室に電解水技術を搭載した装置が置かれるケースがあるという電解水技術に関する効果一覧

多剤耐性菌の増加は文明の発達とパラレル

今回の実験を行なった、群馬県衛生環境研究所の小澤邦寿所長

 説明会では、実験を行なった群馬県衛生環境研究所の小澤邦寿所長が登壇。小澤氏は電解水技術について、ウイルス全体に対する効果がある点を評価した。

 「呼吸器で感染するウイルスは、細かく分けると千種類ある。ウイルスに対する治療をするとなると、免疫をつけるためのワクチンや抗ウイルス薬を開発するしかないが、千種類すべてにワクチンや薬を開発するのは不可能。そうなると、個別に対抗するよりも、全体的にウイルスにある程度効果のある対抗策が必要になるが、電解水技術はそういった意味で効果がある」

 また、多剤耐性菌による院内感染については、感染例として人工呼吸器で使用するチューブや加湿器、バイトブロック(チューブが噛まれて空気の通り道が塞がれないようにするための器具)による感染例が多いことを指摘。また、日本でも多剤耐性菌が増えてきていることについては、「(多剤耐性菌が増えるのは)文明の発達とある意味パラレル(平行)。あらゆる菌が病院には集まっているが、感染を最低限度に抑えるために、あらゆる手段を動員して制御していくことが重要」と話した。

呼吸器感染症の原因はほとんどがウイルスという院内感染は人工呼吸器を通じて発生する例があるという
ノロウイルスによる感染症胃腸炎の発生状況。2010年は、例年を上回るペースで増えているというインフルエンザの発生状況。年明けから発症事例が増えているのがわかる





(正藤 慶一)

2010年12月17日 17:19