三洋電機、2008年度決算は営業益、純益、ともに赤字

~佐野社長“不況を100年に一度のチャンスと捉える”

 三洋電機は、2008年度連結決算を発表した。

 売上高は前年比12.2%減の1兆7,707億円、営業利益は89.1%減の83億円。当期純損益は前年の287億円から、マイナス932億円の赤字に転落した。

 

三洋電機・佐野精一郎社長
 三洋電機の佐野精一郎社長は、「最終赤字の拡大は、構造改革費用として100億円積み増ししたことも影響している」とした。

 セグメント別では、コンシューマ部門の売上高は前年比10.3%減の6,787億円、営業損益はマイナス15億円。とくに、AV・情報通信機器の損益悪化が大きく、204億円悪化の21億円の黒字。電化機器は11億円改善したものの、マイナス36億円と赤字脱却はならなかった。

 デジタルムービーカメラの「Xacti DMX-CA8」が好評だったが、OEM事業が低迷。カーナビゲーションシステムは前年並み、プロジェクターは企業需要の低迷により減少。白物家電は洗濯乾燥機「AQUA」が堅調だったものの、冷蔵庫やエアコンが減収となった。

 「AV・情報通信機器ではほとんどの製品で減収。とくにグローバルにおける自動車販売の減少により、車載関連製品で収益性が悪化している。電化機器では、洗濯機が総じて堅調に推移。それ以外の白物製品についても、国内において収益優先のラインアップに見直した成果が出ている」(佐野精一郎社長)とした。

 コマーシャル部門は売上高が3.5%減の2,534億円、営業損益は51億円悪化の54億円。コンポーネント部門は、売上高が15.6%減の8,049億円、営業損益は445億円悪化の328億円となった。そのうち、電子デバイスの営業損益は354億円悪化のマイナス212億円の赤字。電池は18億円悪化の540億円の黒字。その他事業は73億円悪化のブレイクイーブンとなった。

 「電子デバイスは世界景気の悪化の影響を受けたこと、電池は上期までは好調だったが、第3四半期以降は前年割れとなっている。その他事業では、光ピックアップの減収が響いている」とした。

 2009年度の業績見通しは、売上高は前年比6.3%減の1兆6,600億円、営業利益は167億円増の250億円。当期純損益はブレイクイーブンを目指す。

三洋電機、2008年度連結決算概況2009年度の連結業績予想部門別の営業利益状況

 「少なくとも上期までは景気低迷が続くという前提での見通し。下期の回復には期待感がある。構造改革費用として140億円を予定しており、考えられるものはすべてやり抜く。人員削減は14,000人の削減をすでに実行したが、これからの動向次第とはいえ、今年度も国内で1,000人レベルのものは意識している。機能強化、原価低減、品質向上、生産技術向上などの観点から手薄な部分もあり、そこに力を注ぐ。電池の生産拠点の稼働率は8割程度にまであがっており、電子デバイスも稼働率が10%前後上昇している」(前田孝一副社長)などとした。

 営業利益250億円に向けては、売上高の減少で320億円、為替の影響で170億円のマイナス要素が見込まれる一方、2008年度に実施した構造改革の効果として300億円、2009年度の構造改革で80億円、原価低減活動などのコストダウン効果で130億円、緊急収支改善施策で150億円を見込む。

 なお、国内におけるエコポイント制度の導入に関しては、「対象となるテレビ、エアコンは、国内では主力事業とはなっていない。ただ、今後は各国において同様の政策が期待され、環境に根ざした技術開発を進めていく姿勢は変わらない。消費者にとっても、メーカーにとってもメリットがある政策であり、中期的な視点で捉えている」(佐野社長)とした。

 一方、同社では、中期経営計画について、達成年度を1年先送りにする計画の見直しと、これまでの進捗状況について説明した。

2008年度の経営状況の推移中期経営計画の達成を一年先送りにする

 説明の冒頭、佐野社長は、「中期経営計画は、経営体質の徹底強化と、成長戦略の再構築を実行するのが2つの重点施策」と基本方針を説明。

 続いて、「これを遂行することで、達成を万全なものにする。事業の選択と集中、付加価値の高い商品へのリソースシフトといった構造改革の徹底、原価低減活動の推進により、経営体質の強化を図る一方、事業環境の変化を好機と捉え、投資の前倒しなど、将来の飛躍への備えを着実に実行する。2011年度にはパナソニックとのシナジー効果も出てくるだろう。いまは100年に一度の経済危機といわれるが、米国でのグリーンニューディール政策をはじめ、全世界で経済回復に向けた政策が相次いでいる。共通キーワードとして、次世代自動車の普及、再生可能エネルギーの活用、省エネ社会の構築が掲げられており、それぞれの分野において、HEV用二次電池、太陽電池、業務用機器という当社の強みが発揮できる技術があり、世界で戦える。むしろ、当社にとっては100年に一度のチャンス」とし、2009年度には経営体質の強化で510億円、緊急収支改善施策の成果で150億円を見込むことで、2009年度に250億円の営業利益見通しを達成。

 2011年には、経営体質強化および成長戦略の成果、市況の回復による売上拡大やパナソニックとのシナジー効果を見込み、900億円の営業利益達成、1,000億円へのチャレンジを確実なものにするとした。

2009年度に経営体質の強化に510億円を見込むとする経営体質の強化として、構造改革、コストダウンの徹底を挙げた

 同社が掲げていた中期経営計画では、2010年度に営業利益900億円、チャレンジ目標として営業利益1,000億円としていたが、昨今の経済環境の変化を捉えて、これをそのまま1年間先送りにし、2010年度には営業利益700億円を目標に、売上高は1兆9,300億円を見込む。なお、2011年度の売上高見込みは2兆1,000億円を計画している。

 2011年度における事業領域ごとの営業利益目標は、エナジー事業領域が630億円、エレクトロニクス事業領域が410億円、エコロジー事業領域が170億円を見込んでいる。

 経営体質の徹底強化としては、エレクトロニクス事業領域において、2008年度に実施した光ピックアップ事業の拠点集約、高周波デバイス事業の終息、グローバルでの1万人規模の人員削減に続き、2009年度は一般LED事業の撤退により照明用LED事業へとリソースを集中するとともに、グローバル生産体制の再編を実施。これにより営業利益ベースで80億円規模の効果を見込む。

 また、半導体事業では、競争優位性を発揮できるパワーデバイスにリソースを集中。988人の希望退職を含む1,200人の人員削減や国内生産拠点の縮小、海外生産拠点の削減、国内営業拠点の統廃合などの2008年度に実施した各種施策の効果として240億円を見込む。

 エコロジー事業領域においては、2008年度に実施した業務用空調のハンガリーからの生産撤退、コンプレッサー事業におけるメキシコ合弁会社の持分譲渡に加え、2009年度には、中国市場を除いて、家庭用エアコンの低価格モデルの自社生産撤退に伴う製造拠点の再編とOEMの活用、業務用空調への開発リソースのシフト、4月1日付けで実施したコールドチェーン事業の国内販売会社の再編により、6社を1社に統合することでの体制の効率化などで30億円の効果を見込んでいる。

 さらに、アジア地域における冷蔵庫、洗濯機の販売強化に向けたリソースを集中させる考えを示した。

エレクトロニクス事業領域においては、不採算事業を撤退し、成長分野へのリソースシフトを掲げる半導体事業では、約1,200名の人員削減、海外生産拠点の削減を発表したエコロジー事業領域では白物家電のアジア展開を強化する
成長戦略の再構築では、ニッケル水素電池、太陽電池について投資を前倒しすることを発表した

 一方、成長戦略の再構築では、ハイブリッド自動車の需要拡大に向けて、HEV用二次電池への投資を拡大。300億円規模の投資を前倒しする。具体的には、ニッケル水素電池において、セル数ベースで対前年比250%となる大幅増産、徳島事業所におけるリチウムイオンの量産開始。さらに、新工場として、リチウムイオン電池の生産拠点を兵庫県加西市に設置し、18万8,000平方mの敷地面積に、130億円を投資して、2010年度の量産開始を目指すという。

 「リチウムイオン電池の収益化は2012年度以降と考えていたが、これが早まる可能性がある」とした。

HEV用二次電池はハイブリッド自動車に需要があると見込んで投資を拡大するHEV用リチウム電池の生産拠点を兵庫県加西市に設立することを発表

 太陽電池については、HIT太陽電池では、2010年度に600MWの生産体制を確立する方針には変更がなく、生産体制の強化を進める一方で、欧米での各国施策に対応した販売体制の強化、日本における官公需向けをはじめとする大規模施設への販売拡大に乗り出す。また、2009年度中に米オレゴンで、ウェハーの内製化を開始し、2010年度には20%を内製化することで、価格競争力向上に向けたコストダウンを推進できるほか、世界最高の変換効率23%の技術を生かした商品化を進める。

 薄膜太陽電池では、新日本石油との合弁会社の設立に続き、上期中に量産投資を含む事業計画を決定するという。

太陽電池では、官公需向けをはじめとする大規模施設への販売を拡大。他社との競争に備えコストダウン、変換効率の向上を更に目指すとする薄膜太陽電池では、上期中に量産投資を含む事業計画を決定する

 業務用機器では、空調、ショーケース、照明などの連携制御を行なう店舗向けのエコストアシステムの展開加速により、前年比120%以上の受注、2010年度には現在の2倍規模となる数100件の受注を見込むほか、CRMの体制構築により、提案力強化と顧客基盤の拡充を図る。

 「太陽光発電、LED照明、セキュリティ、空調、ソーラー街路灯など、ショッピングモール全体を総合的に提案できる体制が整っている。また、施設まるこどの省エネ提案も可能になる。これらを商品提供だけに留まらず、エンジニアリング、メンテナンスサービスまでを含めたワンストップで提供できる点も特徴。社内に共同事業推進本部を設置して、こうした複合型提案を行なえる体制を整えている」とした。

業務用機器では、連携制御を行なうエコストアシステムの展開を加速させる太陽光発電システムや、空調機器などを含むCRM機能の充実で提案力を強化していくとする

 なお、全社規模での2008年度から2010年度までの設備投資計画は、当初計画の3,600億円から2,900億円に削減するが、太陽電池および二次電池の領域の設備投資計画はほぼ当初計画通りにするという。

投資計画については、当初の計画は見直しているものの、太陽電池、二次電池に関する者は計画通りにすすめるという事業の領域ごとの見直し後の計画


三洋、第1四半期の白物家電は低調(2008年08月07日)



(大河原 克行)

2009年5月15日 14:06