パナソニック、30年振りに省エネ化した丸形蛍光灯

~電気代を990円カット、寿命は“業界No.1”の15,000時間に

 

「パルックボールプレミアLS」。Lは長寿命の“Long”、Sは省電力の「Save」の意味

 パナソニックは、同社の製品として30年振りに省電力化を実現した丸形蛍光灯「パルック プレミアLS」を、6月1日に発売する。価格はすべてオープンプライス。ラインナップの詳細は以下の通り。

クール色
ナチュラル色電球色

※安定期内蔵器具(非インバーター)に取り付けた場合の消費電力
種別品番光色消費電力※全光束サイズ
(外径×内径)
店頭予想価格
30形FCL30EL/28LS電球色28W2,210lm225×167mm1,200円前後
FCL30ENW/28LSナチュラル色
FCL30ECW/28LSクール色
32形FCL32EL/30LS電球色30W2,640lm299×241mm1,700円前後
FCL32ENW/30LSナチュラル色
FCL32ECW/30LSクール色
40形FCL40EL/38LS電球色38W3,400lm373×315mm2,000円前後
FCL40ENW/38LSナチュラル色
FCL40ECW/38LSクール色

 同社では30年振りに省エネの新技術を導入した丸形の蛍光灯。従来製品「パルックプレミアL シリーズ」よりも5%の省エネを実現した点が特徴となる。

 わずか5%の性能向上だが、パナソニック ライティング社 民生事業担当の魚屋洋氏は30年間省エネ技術が進まなかった理由について「丸形蛍光灯は、外観サイズがJIS規格で決められているため大きさが変更できず、さらに6つの部品というシンプルな部品で構成されることもあって、省エネ化は現実的ではなかった」という2点を挙げた。しかし、「インバーター器具に取り付けて使用すれば、電流が安定するため、発光する部分を減らせば電力は減る。もちろん、それでは電力を減らしただけ暗くなってしまうが、この二律背反の課題に挑んだ」と、電力を抑えつつ、明るさを従来から維持するという2つのテーマを掲げて開発した経緯を説明した。

パナソニック ライティング社 民生事業担当の魚屋洋氏電力を減らす一方で、明るさを維持するという“二律背反”のテーマに挑戦した
新開発の「ロングマウント」を採用。エミッタが放電する範囲を20mm短縮し、消費電力を抑えた
 まず電力を抑える技術として、新たに「ロングマウント」という部品を採用した。蛍光灯は、蛍光管内のコイルから「エミッタ」という物質を放出し、エミッタがガラス管内の水銀に衝突することで紫外線を発生、ガラス管の内側に塗られた蛍光体と反応することで光る性質を持っているが、このエミッタを放つコイルを支える「マウント」の高さを、従来よりも10mm伸ばした。これにより、エミッタが放電する範囲が20mm短縮し、発光する部分が減るため、消費電力が抑制できる。

  さらに、蛍光管の内部に「クリプトン含有封入ガス」を採用した。クリプトンは粒子が大きいため、エミッタの衝突が増え、エミッタが水銀に命中する確率を高める効果があり、より少ない電力で効率よく放電できる仕組みになっている。


直管タイプの蛍光灯での比較。上が従来までの蛍光管で、下が「ロングマウント」仕様下がロングマウント。光を放つ位置が、上の従来タイプと比べてズレている左が従来タイプのマウントで、右がロングマウント。ロングマウントの方がコイルの位置が高くなっている
蛍光灯が発光する仕組み。コイルから放たれたエミッタが、管内部の水銀とぶつかり、紫外線を放つことで蛍光灯は光る

粒子が大きい「クリプトン含有封入ガス」を新たに取り入れることで、エミッタがより水銀とぶつかりやすくなtった

 

蛍光管内部のモデル。左が従来タイプで、右がパルックプレミアLS。右側の紫色の大きな球がクリプトンだ
 明るさを維持する技術としては、発光体の発光効率を向上した「高輝度新蛍光体」を新たに採用。これにより、従来製品と同じ明るさを維持できるという。

 同社ではこれらの省エネ技術の採用によって、明るさを従来製品と同様に保ちながら、15,000時間使用した場合で電気代を990円削減し、CO2排出量を2kg削減できるとしている。

新たに「高輝度新蛍光体」を採用。従来製品と同じ明るさを維持できるようになったパナソニックの蛍光灯に使用される蛍光灯の変遷
左が従来のパルック、右がパルックプレミアLS。それぞれ32形、40形の丸形蛍光灯を取り付けているが、消費電力はLSの方が低く、また明るさも上回っているパルックプレミアLSなど、家庭全体の照明を省エネタイプに変えれば、1年で約1万7千の節約になるという
定格寿命は従来の13,000時間から15,000時間に伸びた
 定格寿命も伸びており、従来の13,000時間から約15,000時間となった。エミッタの塗布量を最適化したことに加え、前述の「クリプトン含有封入ガス」によりエミッタの飛散量が抑えている効果によるもの。同社では“業界No.1の長寿命”としており、1日5.5時間、年間365日計算で約7年持つという。

 このほか、高輝度新蛍光体の採用やガラス管への保護膜の塗布により、15,000時間経過後も蛍光管内部が黒くなってしまうのを抑え、初期の約80%の明るさが維持できる仕様となっている。

 なお、本製品の省エネ性能については、すべてインバーターを搭載した照明器具に搭載した場合とのこと。点灯管(グロースターター)が点いているタイプでも使用できるが、省エネ性能は発揮されないという。なお、寿命については両タイプで使用しても変わらない。

長時間使用しても、蛍光管が黒くならない仕様となっている省エネ効果はインバーター器具を使用した時にのみ発揮される
パナソニック アプライアンス・ウェルネス マーケティング本部 副本部長 中島幸雄氏
 パナソニック アプライアンス・ウェルネス マーケティング本部 副本部長 中島幸雄氏は、3LDKの家庭での照明器具の構成比では、白熱電球や直管形の蛍光灯が減少し、丸形の蛍光灯が増えているデータを公開。さらに、社会全体におけるランプの消費電力量の73%が蛍光灯であるデータも披露し、「日本は“蛍光灯の国”。蛍光灯でも省エネを進めていかなければならない」と、蛍光灯を省エネ化する意義を語った。

 また本製品では、寿命が15,000時間とさらに伸びたことで、買い換えのサイクルが遅くなるという見方もできるが、これについて中島氏は「販売数は微減を想定している。しかしメーカーの使命としては、地球温暖化の対策としては長寿命化・節電タイプの方が良い。さらにお客様の高齢化を考えれば、(交換の手間が省けるため)ユニバーサルデザインでもある。方向性は間違っていない」と、地球環境やユーザーの使い易さという面でのメリットを強調した。

 中島氏はまた、2008年に発売した電球形蛍光灯「パルックボールプレミアQ(クイック)」の売り上げについて「大変好評を受けている」と評価。2009年度では2000万個の販売を目指している。

家庭で使用されている照明のうち38%が丸形蛍光灯だという工場やオフィス、家庭も含めると、蛍光灯の占める割合は7割以上になる
パルックボールプレミアQの売り上げは好調で、2009年度では2000万個の売り上げを想定しているインバーター器具の見分け方は、本体内に点灯管があるかないか。スイッチを入れてすぐ点灯するのがインバーター器具となるこれまでのパルックシリーズの歴史

インバーター式(左)は、電源を入れるとすぐに点灯する。右のようにチカチカと点灯するのは非インバーターの「グロー式」となるインバーター式(左)とグロー式(右)の図解模型。インバーターは電力を調節できるため、つねに一定の出力で運転できる。動画中では、カプセルを常に1個ずつ吐き出している。一方のグロー式は、電力が調節できないため、動画中も出てくるカプセルが1個だったり2個だったりしている



(本誌:正藤 慶一)

2009年4月24日 19:14