● 初期コストの高さも、消費電力の少なさと長寿命で結果的に安上がり
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電球形蛍光灯は、白熱電球よりも省エネと長寿命で、しかも現在白熱電球が取り付けてある照明器具にそのまま付け替えることができる
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電球形蛍光灯(または電球形蛍光ランプ)とは、その名の通り電球の形をした蛍光灯のことです。白熱電球と違って内部には細い蛍光管が張り巡らされていますが、白熱電球を利用する照明器具にそのまま取り付けて利用できます。
電球形蛍光灯の特徴は、なんといっても優れた省エネ性能を実現している点でしょう。同じ明るさの白熱電球と比べた場合、電球形蛍光灯の消費電力は白熱電球に比べてわずか1/4~1/5ほどでしかありません。当然、白熱電球に比べて電気代を低く抑えられます。
また、寿命が長いという点も特徴で、白熱電球と比べると、実に6~10倍という非常に長い寿命が実現されています。具体的な製品で挙げれば、パナソニックの電球形蛍光灯「パルックボールプレミアQ」の寿命は13,000時間ですが、同社の白熱電球60W形の寿命は2,000時間で、6.5倍の差があります。
その一方で、電球形蛍光灯は白熱電球よりも価格が高いという初期コストの問題もあります。実際に、パルックボールプレミアQの実売想定価格は1,500円前後ですが、同社の白熱電球の希望小売価格は230円と、かなりの価格差があります。
とはいえ、電球形蛍光灯は寿命が長いため、交換にかかるコストは結果的に抑えられることになります。つまり、1個あたりの価格が高くても、長期間で考えれば安価になるというわけです。パナソニックでは、パルックボールプレミアQを導入することで、寿命が尽きるまでトータルで見ると白熱電球よりも約1万3千円の電気代を節約できるという試算を発表しています。
このように、電球形蛍光灯は、省エネ性能に優れCO2排出量削減に貢献するだけでなく、私たち消費者にとっても非常にお得に利用できる製品と言えるでしょう。
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電球形蛍光灯の中には、螺旋状に巻いた蛍光管が入っている(写真は松下電器のパルックボールプレミア)
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「パルックボールプレミアQ」と白熱電球とのコスト比較。白熱電球を使い続けた場合と比べて、1灯当たり約13,000円を節約できる
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一般的なA形のほか、蛍光管が剥き出しになったD形、ダウンライトに使うレフランプ形といったタイプもある(写真は東芝「ネオボール」シリーズ)
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● サイズが大きい、点灯スピードが遅いといった欠点も解消されつつある
現在市販されている電球形蛍光灯は、基本的に「インバーター式」と呼ばれる方式の蛍光灯です。電球型蛍光灯が誕生した1980年当時は、このインバーター部が大く、白熱電球に比べてサイズが大きく、かつ重い製品が多かったために、電球ソケットに物理的に取り付けられないこともありました。また、蛍光灯には点滅を繰り返すと寿命が短くなるという、蛍光灯自体の性質による問題点もあります。さらに、本来の明るさになるまでに数分間かかり、低温となる冬場では余計に時間がかかるといった立ち上がりの遅さ、調光機能付き、または密閉型の照明器具で利用できない、といった汎用性の低さも欠点でした。
ただ、これらの欠点はどれも改善されています。サイズに関しては、インバーター回路の小形化が進んだために、白熱電球とほとんど同サイズのものも登場しています。点滅回数については、最近では2万~4万回の耐点滅性能を備える製品も現れているので、こうした製品であればトイレなどでの使用も問題ないでしょう。また、点灯直後や低温時の暗さに関しても、前述の「パルックボール プレミアQ(クイック)」では、内部に小型の白熱電球を入れることで、素早く明るくできます。そして、調光機能の付いた照明器具で利用できる製品や、密閉型照明器具での利用に対応した製品も存在しています。
とはいえ、これは全ての電球型蛍光灯において上記の欠点が解消されているというわけではありません。そのため、白熱電球を電球型蛍光灯に取り替える場合には、その電球型蛍光灯が取り付け予定のソケット、照明器具に対応しているかどうか、あらかじめしっかり確認することが大切です。
ちなみに日本の白熱電球製造メーカーでは、2008年4月14日、東芝ライテック株式会社が2010年を目途に白熱電球の製造を中止すると発表したのを皮切りに、三菱電機オスラム、NECライティング、パナソニックも白熱電球の製造・販売中止または規模縮小を相次いで発表しています。これは2008年4月5日に行われた「第二回 地球温暖化問題に関する懇談会」において、甘利経済産業大臣が、「家庭等で使用される一般的な白熱電球に関して、2012年を目途に、原則として電球型蛍光ランプなどへの切りかえの実現を目指す」と発言したことによるものです(議事要旨のPDF。22~23ページが発言部分)。ただし、電球型蛍光灯の利用できない一部の照明器具では、白熱電球の販売は継続される予定となっています。
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1980年、東芝は世界初のボール電球形状の電球形蛍光ランプを発売。以降、インバーターを小型にするなど、形状を白熱電球に近づける改良を行なってきた(写真はすべて電球60Wタイプ)
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東芝の「ネオボールZリアル」60W形。一番左の白熱電球と比べても、大きさはほとんど変わらない
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東芝「ネオボールZリアル」100W形のカットモデル。インバーター回路は口金の内部に設置されている
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蛍光灯はスイッチの点滅によって寿命が短くなるが、近年では耐点滅性に優れた製品が登場。頻繁に明かりを切り替える洗面所や玄関での使用も可能になってきた(写真は「パルックボールプレミアQ」の発表会のパネル)
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「パルックボールプレミアQ」では、本体内部に小型の白熱電球を入れることで、素早い点灯が可能になった
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【電球形蛍光灯】の、ここだけは押さえたいポイント
・白熱電球に比べて消費電力は低く長寿命。電気代がお得で、交換の手間も省ける ・点滅による寿命の短縮や、点灯直後の暗さといった欠点も解消されつつある ・照明器具によっては使えない場合もある。購入前に確認を
2008年7月30日 初版
■ 関連記事
・ パナソニック、すぐに明るくなる電球形蛍光灯「パルックボールプレミアQ」(2008/06/09)
・ 東芝、寿命12,000時間の60W形電球型蛍光灯(2008/04/02)
・ 東芝、2010年度までに白熱電球の製造を中止(2008/04/14)
■URL
現代家電の基礎用語 バックナンバー
http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word_backnumber/
2008/07/30 00:02
平澤 寿康 1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。 |
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