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「充電式」一筋40年、パナソニックの電動工具の凄さを再確認!
2020年1月6日 12:48
「電工のドリル・ドライバ」として、多くの愛用者を魅了しているパナソニックの電動工具(パワーツール)の歴史は今年で40年。昔は「松下電工」という社名で、電動工具を発売していたため、今でも、こんな会話が。
「誰か! 電工の7.2Vバッテリ持ってない?」
「松下」も「パナソニック」も付けなくても、「電工」と言えばデフォルトが「パナソニック」なのだ(なぜか「松下」とは言わない)。パナソニックもそれをわかっていたようで、社名の松下がすべてパナソニックに変わったのに、パワーツールだけ「パナソニック電工」なんてハイブリッドな社名だったこともある。
そんな40年の歴史を一同に集めた展示会が開催されたので、ちょっと覗いてきた。
やっぱドリルって、漢(おとこ)の夢♪ 天元突破っ!
※でもアニメで出てくる円錐のドリルは、ドリルじゃなくてリーマなんだよなぁ~。なんて夢のないこと言わないお約束。
※以上は2007年放送のテレビアニメ『天元突破』を参照のこと(編集部注)
1979年の充電式ドライバがNASAの船外活動に採用
パナソニック(旧、松下電工)が初めて電動工具を発売したのは1979年(昭和54年)。ソニーが初代WALKMANを発売し、YMOが爆発的に売れた2ndアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』をリリースした年だ。
デザイン性はまったくなし、円筒形の筒にガングリップがついた充電式のドリル・ドライバ。
それまでの電気工具と言えば、グリップを押すと軸が回転するドライバを使っているのが主流(知ってる人いるのかな?)。もしくは手回し式のドライバで工事をするため、作業効率が悪かったという。当時から家の中のコンセントや壁スイッチの主流はパナソニック製。現場を見た開発陣は、とにかく電気工事を楽に効率的にできるツールを! ということでドリル・ドライバの開発に至ったそうだ。
しかしバッテリ式の電動工具は、世の中にとってセンセーショナルなハイテクだった! 当時もっともハイテクなスペースシャトルに、世界で初めて船外活動で電動工具が使われた。それが初代を宇宙仕様に改造したNASA仕様のドライバだ。このドライバは1983~1993年ほどまでスペースシャトルの標準搭載品として、さまざまなミッションに使われてきたという。
パナソニックの電動工具をお使いの方は、ちょっと思い起こしてほしい。実はパナソニックは、コンセントの100Vから電源を取る電動工具をひとつも出していない。他社は必ずバッテリ式とコンセント式の2モデルを用意しているが、なぜだかパナソニックだけは、充電式「だけ」にこだわっている。
そのこだわりも現場の実態を見てのことだという。主な電気工事は新築などの住宅。大工さんが、丸鋸をヒュンヒュン! カンカン! 唸らせる内装工事と並行して電気工事が行なわれることが多い。
建築中の住宅にも一応電気が通っているものの、コンセントは大工さん専用になってしまうのだ。というのも大工さんが意地悪しているわけではなく、電動のこぎり系は消費電力が高いので、コンセントがないと作業できないのだ。
だから電気屋さんは、電動工具にコンセントを使えない。そこで、充電式のバッテリを使った電動工具が活躍するというワケ。
この伝統は40年経った今でも引き継がれ、パナソニック製の電動工具にはコンセント式がない! これが充電電池式へのこだわりだ。
パナソニックの電動工具は、電気屋さんに愛用者が多い。それはパナソニックという身近な会社の製品というだけでなく、電気工事をするのに最適な工具であり、かつメーカー&ユーザーの垣根なく現場の事情をよく知るスピリットを共有しているからだ。
電動ドリル・ドライバに革命を起こしたキーレスチャック
パナソニック40年の電動工具を細かく追っていくと、いくつもの革命的な機構などが採用されてきた。中でも今となっては当たり前だが、1986年にパナソニックがドリル・ドライバに起こした革命ってなーんだ?
おそらく40~50歳台以上じゃないと、それ以前のドリルがどれだけ面倒だったか? すら知らないかもしれない。パナソニックが起こしたその革命とは「キーレスチャック」! マジか!?
キーレスチャックはドリル刃を固定する機構。ドリル刃をチャックと呼ばれる先端部に差し込んで、先をギュッ! と締めれば固定完了。これがキーレスチャックだ。
しかしそれ以前のチャックは、「チャックキー」という特殊な歯車を持っていないと、ドリル刃をセットできなかった。しかも、これよくなくしちゃう。かといって紐でドリルに付けておくと、作業時に歯に絡まって危険。さらに面倒なのは、チャックのサイズによっていくつかチャックキーを用意しなけりゃならないという点。サイズ違いだと、ギアがうまくかみ合わなくてウキー!
また電動工具にブラシレスモーターを初めて採用したのもパナソニック。それまではブラシという部品がモーターの軸に接触していたので、火花が散ったり、ブラシが摩耗して、部品交換が必要だった。でもブラシレスになったことで、メンテナンスフリーで長寿命、そして静かになったのが特徴だ。
バッテリの貸し借りOK!違う電圧のバッテリでも使える互換性
最近の電動工具は、用途に応じてさまざまな電圧のバッテリが使われている。でもこれが混乱のもとになってしまった。
「今日はホールソーに使う18Vの電池は余っている。でもねじを締めるための14.4Vの電池がない!」という場合、せっかくドライバよりも高い電圧の電池がフルで残っているにも関わらず、電圧が違うから手回しドライバで何とか工事をしのがなきゃいけない……。
そんなシーンで活躍するのが、18Vの電池でも14.4Vの電池でも使える「DUALシリーズ」なのだ!
また電気工事は、2人組で動くこともある。これまでは電圧が違って、先輩がせっかく余分のバッテリを持っているのに、借りられないなんてことも。
そんな時2つの電圧に対応しているDUALシリーズなら、問題を一気に解決できる。パナソニックの電動工具は、常に現場志向。
面白かったのは、エアコン設置で必須になる真空ポンプ。普通は100Vのコンセントを使うので、取付工事をすると「コンセントお借りします」などと声がけされる。でもパナソニックの真空ポンプはバッテリ式なのだ。
だからお客さんのコンセントを借りずに工事ができるし、コンセントから離れた屋外機でも難なく真空引きできるというわけ。さすが目の付け所がパナソニック! しかもDUAL!
純正バッテリパックが高いのにはワケがある
パナソニックに限った話ではないが、電動工具のバッテリはものすごく高い。感覚的にはプリンタのインク並み。バッテリを何回か買い替えると、本体が変えちゃうぐらいなのだ。
そんな事情もあって、Amazonなどで互換バッテリを買っている人もいるのではないだろうか?
でもそこには電動工具特有の問題がある。電動工具のバッテリーは、時には何十アンペアという出力を強いられる。
しかもバッテリパックには、何本もの電池が入っていて、これまた面倒なことに、1本1本に性能のバラつきがあるのだ。たとえ同じメーカーの同じロットの同じ電池だとしても、性能にはバラつきがあり、バッテリパックに入っている電池1本1本の減りや充電時間が異なる。
パナソニック純正のバッテリは、電池1本1本のコンディションを工具のコンピュータが調べて、パック内の1本が空になれば、そこで電池終了とみなす。さらに充電時もパックのうちの電池1本が満充電になれば、そこで充電を停止する。
こうして特定の電池に負荷をかけないよう、やさしく充放電を繰り返すので、安全で長寿命になっている。
しかしAmazonなどで買える激安品は、電池1本1本単位で充放電の制御ができないもの。数本の電池をまとめて管理するので、部品数も少なく構造も簡単なので「安い」。その反面、電池1本が空になってもまだ放電し続けようとすると、ほかの電池に大きな負担をかけ、最悪発熱や発火、破裂する恐れもある。充電時もしかり。
スマホやデジカメの電池と違って、電動工具の消費する電力はけた違い。それだけに安全性やバッテリへの負荷を考え、純正バッテリパックを使うことをオススメする。
回転数の制御で確実に素早く作業、トルク管理もデジタルで
最新仕様のSmartBLシリーズは、とにかく作業がサクサク早い。実際に使ってみると「速っ!」と実感できるほど。その秘密はHighモード時の70~1,800prm、Lowモード時の70~1,450prmという回転数にある。
でも、ただ単に高速に回転するだけではなく、緻密な回転数コントロールをしてくれる。モードを切り替えると、いきなりトリガーをフルに引いても、最初はゆっくり、次第に回転数を増していくよう調整するので、穴あけ加工が早い早い!
またねじ締めでは、クラッチによるトルク調整だけでなく、デジタルクラッチも使えるという。このデジタルクラッチは、モーターにかかる負荷などから逆算して、トルクを制御するというもの。ねじがきっちり閉まると、トリガーをフルに引いていても、ストン! と回転が停止するから、ねじに優しい。しかもクラッチ式のように、バリバリッ! と音がしないので、静かに作業できるのもいい。
またモーターも進化している。従来式のブラシレスモーターでは、モーター軸の位置検出を60度ごとに行なっていた。新しいベクトル制御式では、位置検出の分解能を167倍まで上げ、およそ0.36度ごとに位置検出できるようになっている。これにより緻密なモーター制御ができるだけでなく、緻密な負荷を検出できるようになり、ねじやボルトに負荷をかけず、かといってオーバートルクにならないようにねじ締めできるというワケだ。
また速度制御は不要! という場合は、モードを切り替えると「即フルモード」が使える。これはトリガーを少しでも引くと、最速で回転するモードだ。固い母材などでは便利に使えるかもしれない。
そして2019年に初めて搭載された「タップモード」が面白い。タップとは母材にねじ穴を作る工具のことで、ドリルなどの先端にタップを取り付け、下穴にねじの溝を切っていく。溝が切れたらそれを壊さないように逆回ししてタップを抜かなければならない。
従来のドリルは正逆回転をするレバーを操作すると、ドリルが揺れてしまい溝を壊してしまうだけでなく、手間がかかっていた。
しかし「タップモード」を使うと、一度トリガーを引くと正転で溝切り、トリガーを離すと停止、再びトリガーを引くと逆転するので、ねじ穴を確実に素早く切れるというものだ。
薄く柔らかい母材(数ミリのアルミ板やアクリルなど)にねじ切りするときに、便利に使えそうだ。
作業の標準化・効率化にも有効な最新の電動工具に
ここまでパナソニックの電動工具40年の歴史とともに、最近の電動工具の機能をご紹介してきた。
メーカ純正バッテリパックが何であんなに高いのか? の謎も解けたはずだ。
おそらく「できる」方は、回転数だのトルク管理だのは自分でやるものとお考えだろう。「そんなの音と挙動とトリガーで自分でコントロールする」という職人気質の方も多いはず。しかし作業の標準化や効率化は現場にとっての最優先事項。ツールひとつで解決できるなら、ちょっとだけでも使ってみてはいかがだろう?
「いい仕事はいい工具から」と手動工具で言われているように、電動工具もまた「いい仕事はいい電動工具から」なのだということを、改めて考えさせられた。