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京セラと関西電力が新会社、初期費用なしで太陽光発電システムを設置 ~停電時も自立運転

 京セラと関西電力は2019年3月27日、太陽光発電システムを活用した新たな電力サービスの提供に向けた新会社「京セラ関電エナジー合同会社」を設立すると発表した。両社は2019年4月1日に新会社を設立し、2019年秋頃のサービス開始に向けて準備を進めていくという。

「京セラ関電エナジー合同会社」を設立する

 京セラ関電エナジー合同会社は、京セラグループが持つ太陽光発電システムとその施工・メンテナンスなどに関する技術と、関西電力グループが培ってきたエネルギーサービスのノウハウという両社の経営リソースのシナジーを追求し、再生可能エネルギー市場での事業拡大を目指していくというもの。

 新サービスは新築戸建て住宅を中心に提供する予定で、ユーザーは京セラ製の太陽光発電システムを初期費用なしで設置でき、発電した電力と関西電力による系統電力を必要に応じて使い分けられるという。原則10年の契約満了後は、設置した太陽光発電システムをユーザーに無償譲渡する仕組みになっている。さらに万が一の停電時は、自立運転機能により太陽光で発電する電気を使用できる。

 提供エリアは関東エリアと中部エリアで、2019年夏に料金体系を発表するとともに予約を開始。サービス開始は秋頃を予定している。

太陽光発電システムで発電した電力と、関西電力による系統電力を必要に応じて使い分けられる
2019年夏に料金体系を発表し、秋にサービス開始を予定している
ユーザーへの3つのメリット

 京セラ 代表取締役社長・谷本 秀夫氏は「1975年から太陽光発電システムの研究開発を開始し、93年には日本初の住宅用システム販売開始するなど、太陽光発電システムの普及に率先して務めてきた」とその技術力に自信を見せる。さらに「電力の安定供給に長年尽力してきた関西電力と協力させていただくことになり、両社のシナジーが発揮できることを大変心強く思っている」と語った。

 「価格面でも魅力ある電力サービスを提供し、10年後にはそのシステムを無償で譲渡するサービスを展開する。このサービスによってZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のような環境配慮型住宅の促進に尽力していきたい」(京セラ 谷本社長)

 関西電力 取締役社長・岩根 茂樹氏は「新会社は、太陽光発電システムを活用した新たなエネルギーサービスを提供することで再生可能エネルギーの普及を一層進め、低炭素社会の実現に貢献するとともに、エネルギーに関するお客様の選択肢を広げるものだ」と語り、次のように続けた。

 「高品質な太陽光発電システムの開発普及に努めてこられた頼もしいパートナーを得て、第一歩を踏み出せることを大変うれしく、心強く思っている」

両社の強みを生かし、再生可能エネルギー市場で事業拡大する

万が一の停電時には自立運転によって太陽光で発電

 新サービスでは、京セラグループが機器の販売や設置工事、メンテナンスを担当し、関西電力グループは電力の安定的に供給する役割を担う。太陽光発電システムは合同会社が無償で設置し、契約期間中は10年保証によって京セラがメンテナンス対応する。契約満了後、原則10年後には太陽光発電システムを無償譲渡するスキームというのは先ほど紹介したとおりだ。

 10年間のリース後は無償譲渡し、ユーザーがその後も利用し続けるというスキームのため、太陽光発電システムの信頼性が重要なポイントだと、京セラ ソーラーエネルギー事業本部 副本部長の小谷野 俊秀氏は説明する。

 「太陽光発電モジュールは今回のサービスに適した長期信頼性という特徴を備えている。契約満了後に譲渡するサービスのため、10年以降も長く使用できることが重要なポイントだ。テュフ ラインランド社の長期連続試験の認証に加えて、フラウンホーファーの高電圧負荷試験で『出力低下ゼロ』を実証した。テュフ ラインランド社の塩水噴霧腐食試験にも合格し、DNV GL社の信頼性調査において『トップ・パフォーマー』認定を受けるなど、長期信頼性を裏付けている」(小谷野氏)

 さらに、1984年に千葉県佐倉市に設置した佐倉ソーラーエネルギーセンターの事例も紹介。

 「発電開始から35年を超えて定格の90%近くの高い能力を保ったまま発電し続けている。30年以上発電している複数の事例を基に、長く提供できる製品だと自負している」(小谷野氏)

第三者機関でさまざまな認定を受けている、京セラ製太陽光発電システム
30年以上発電している佐倉ソーラーエネルギーセンター

 小谷野氏は、新サービスでは初期費用なしで利用でき、10年後に無償譲渡されること、ユーザーが魅力を感じられる料金で提供すること、万が一の停電時には自立運転によって太陽光で発電する電気の利用が可能なことという、3つのメリットを語った。

 当初は関東・中部エリアの新築戸建て住宅を中心に展開していき、5年後には4万棟に導入するという目標を掲げている。今後は既築住宅や集合住宅への展開、関西エリアなど他のエリアへの展開も視野に入れていると小谷野氏は述べた。