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オランダ発のスマート自転車メーカー・バンムーフ、原宿に日本初の新店舗オープン&ニューモデルを発表

 オランダのスマート自転車メーカー・バンムーフ(VanMoof)は、2世代目となる電動アシスト自転車「Electrified S2」と「Electrified X2」の予約を開始した。製品の発送は12月から2019年1月を予定。価格はいずれも43万円(税込)。早期予約特典として32万円(税込)で購入できる。

 また同社は、10月2日に日本初のブランドストアを東京・渋谷(東京都渋谷区神宮前3-26-3)にオープン。「Electrified S2」は同ブランドストアにて試乗が可能で、「Electrified X2」は11月から試乗が可能になる予定だ。

Electrified S2
Electrified S2(左)とElectrified X2(右)

 「Electrified S2」と「Electrified X2」は、1回の充電で150kmまで走行可能な電動アシスト自転車。デザインは違うが、両モデルともに機能は同じ。バッテリーがダウンフレーム内に組み込まれているため、一見するとアシスト機構非搭載の一般的なシティバイクのように見える点が特徴だ。

 昨年モデルからの主な変更は、バッテリー容量が20%増量され、電動アシストでの走行可能距離が150kmになったこと。スピーカーが搭載され、自転車を起動した時や、ユーザー以外の誰かが触れた時にアラームがなるようになったこと。施錠が、ボタンを押すだけと簡単になり、ハンドル部や後部ライトのデザインが変更されたこと。さらに速度表示などの各種情報の表示の仕方も変更された。昨年モデルはディスプレイがトップチューブに内蔵されていたのが、同じくトップチューブに埋め込まれた166ドットのLEDによって表示されるようになった(マトリックスディスプレイ)。

スマート機能の革新部をトップチューブに搭載し、ソフトウェアのアップデートにも対応する
容量504Whのリチウムイオンバッテリーを、ダウンチューブ内に収納。1回の充電で150kmまで走行可能(エコノミー走行時)
トップチューブの前方と後方に、それぞれライトを配置。オーナー以外が自転車を動かそうとすると、アラームとともにライトが点滅し警告を発する
トップチューブに配置されたマトリックスディスプレイ。速度やバッテリー残量などの情報を、166のLEDでドット表示する

 両モデルは、施錠機構、アラームのほかに、SIMを搭載することで3つの盗難防止システムを備える。施錠機構については、新たに、後輪のハブの横に配置されたボタンを、脚で軽く押すだけでロックされるようになった。連携させたスマートフォンを持ったユーザーが、自転車に近づくと自動で解錠される仕組みだ。

後輪のハブの横に配置されたボタンを押すと、施錠されてタイヤが動かなくなる
連携したスマートフォンが近づくと解錠される。そのほか専用アプリでは、自転車の位置がマップ上に表示される

 またオーナー以外の人が自転車に勝手に触るとアラームが鳴り出し、フラッシュライトが点滅。アラームは3段階で徐々に音量が大きくなっていくという。

 SIMが内蔵されるのは昨年モデルと同様。スマートフォンアプリで、自転車の位置をいつでも確認でき、盗難時には、バイクハンターが出動し、自転車を追ってくれる。

 なお、「Electrified S2」は身長170〜210cmのユーザーを想定したフレームサイズで、「Electrified X2」は同155〜200cm。

ステムとハンドルバーが一体成型となり、フロント部がスッキリとした
ブレーキケーブル以外の配線が露出していない

日本でも“自動車から自転車へ”という流れは進んでいく

 新店舗のローンチ日となる10月2日、共同設立者のティーズ・カーリエ氏に話を聞くことができた。まずはVanMoof Japanを設立して約1年が経つが、日本の印象や感触を語ってもらった。

バンムーフの共同設立者・ティーズ・カーリエ氏

 「バンムーフは、8年前から自転車の代理店販売を日本でやっているので、日本にはたびたび来ています。そこで感じるのは、とても自転車の浸透率が高い国だということです。誰もが自転車の乗り方を知っていて、日常的に自転車に乗っています。

 また、食べ物もサービスなど、様々な点でクオリティが高いですよね。その点では、日本人はバンムーフとマインド(気持ち)の近い存在だと感じています。

 それなのに、なぜか自転車だけはクオリティが求められていないように感じます。日本で主流の電動アシスト自転車と言えば、近所のスーパーへの買い物や、子どもの送迎に使う、非常に短距離で乗るためのママチャリタイプです。

 東京を少し見回しただけでも、自転車で走るのに最高の場所なのに、長距離で乗ろうという人たちが、少ないのが驚きです。そうした短距離ユーザーをメインターゲットとして市場形成されているのが日本だ、というのが私の印象です」

 この日本の特徴として挙げられた、短距離でしか自転車(特に電動アシスト自転車)を乗らない点については、今後は変化していくだろうと話を続けた。

 「10年前は、ニューヨークやロンドンでも今の日本と同じような雰囲気でした。私の母国であるオランダでは、誰もがいつも自転車に乗っているという様子を話すと、誰もが驚いていました。そんなニューヨークやロンドンなども、今は状況が変わり、自転車をメインの移動手段として使う人や、自転車で走ること自体を楽しむ人が増えています。これが世界の流れだと思っています」

 さらに電動アシスト自転車は、技術や性能が進化し、安く購入できるようになっているともいう。そうした状況に直面した時に、主に2つの反応が見られるという。

 「1つは、自転車に乗る人が増えたから、事故が起こったら大変だ! もっと制限をかけなくては!! という反応です。もう一方では、それくらい可能性があるものだったら、うまく利用できるようにしよう。もちろんきちんとしたルール作りは必要だけれど、制限する必要はない、という反応です。日本は後者ですよね。

 でも、日本でも自動車やバイクから自転車へ、という流れは確実に進んでいきます。ただ、まだまだ時間がかかります。バンムーフも、日本での事業を急いではいません。何でも一気に事が進むことはありませんので、徐々に徐々に浸透していけば良いと思っています」

どの方向からみても整った形をしている

 昨年、カーリエ氏は、大阪から東京を「Electrified S(日本では非発売の2017年モデル)」で旅したという。旅の途中で地方の小さな村や町に立ち寄ると、多くの人がカーリエ氏を火星からやってきた宇宙人のように見ていたという。そして、「どうしてそんな旅をしているんだ。危ないだろう。狂っているのか?」といった反応だったという。とにかくリアクションがすごかったのだ。だが、シティバイクとは言え、頑丈で耐久性も問題ない、なにより楽しいということを話しても理解されなかったという。

 「でも、バンムーフの自転車を購入した人と話をすると、自転車で走るのが楽しくて、自動車の利用率が減ったと言ってくれます。そうやって、ひとのライフスタイルが変わっていき、同じ気持ちを共有する人が増えていくのが嬉しいです。それが私のモチベーションにもなっています」

これはすげぇ! と思われる、今ある4シリーズを毎年確実にアップデートしていく

 昨年は「Electrified X」、さらにアシスト機能を省いた2モデルが日本でもリリースされた。今後、ラインナップは増えていくのかを聞いてみた。

 「今の4モデル以外に増やそうとは考えていません。まぁまぁ良いよねって言われる自転車を何十、何百モデルと出すよりも、これはすごい! 欲しい! って、思われるような自転車だけを作っていくつもりです。当面は、今ある4シリーズを毎年着実にグレードアップしていきます。その方がシンプルで、ユーザーも購入しやすいですよね。特に、シティバイクというカテゴリー以外を作るつもりはありません。

 そうすることで、ずば抜けて最高のシティバイクのブランド、というふうにバンムーフの認知が広がってくれるでしょうし、そうなってきていると思います」

 日本で電動アシスト自転車をリリースした昨年から今までは、同社にとってのテスト期間だったという。そこで、予想をはるかに超える反応を得られているという。

 そんな中での、今回の原宿でのブランドショップのオープン。ほかとは、見た目も走行性能も一味違うバンムーフの電動アシスト自転車に、気軽に乗れるようになったのだ。一度じっくりと乗ってみれば、自転車好きではなくても、乗る楽しさを体感できるかもしれない。