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パナソニック、京都の学生向けアパートに宅配ボックスを設置する実証実験

 パナソニック、京都市、京都産業大学は、学内や学生が住むアパートに宅配ボックスを設置する実証実験「京(みやこ)の再配達を減らそうプロジェクト」を開始した。宅配ボックスの利用実態と、再配達削減効果を検証する。期間は2018年1月末まで。

アパートに設置される、パナソニック製の宅配ボックス

 日本一、学生が集中する京都市において、インターネット通販を利用する青少年に向けた実証実験。授業などで日中留守にすることが多い学生のアパートや学内に宅配ボックスを設置し、再配達の削減効果を検証する。

 宅配ボックスは、京都市内のアパート5箇所に設置され、パナソニックが販売するアパート用宅配ボックス「COMBO-Maison(コンボ メゾン)」を採用。モニター対象は、設置したアパートに居住する学生および単身者で、計106世帯。

 このほか、学内でも荷物を受け取れるように、公共用宅配ボックスを実証実験向けに用意。京都産業大学の図書館脇に設置される。モニター対象は、京都産業大学の学生、職員など約50名。

実際に宅配ボックスが設置された京都市内のアパート
京都産業大学
図書館脇に公共用宅配ボックスが設置されている
プロジェクト概要

 パナソニックは、2016年12月に福井県あわら市で「宅配ボックス実証実験」を行なった。宅配ボックスの設置により、再配達率が49%から4カ月平均で8%に減少。それにより、約222.9時間の労働時間の削減と、約465.9kgのCO2削減になったという。

 あわら市では、共働き世帯の戸建て住宅向けに実験を行なったが、今回は学生が住むアパート向けの実証実験としている。

2016年12月に福井県あわら市で「宅配ボックス実証実験」を行なった

「大学のまち・京都」で、単身住まいの学生の再配達を削減

 京都市長 門川 大作氏は、今回のプロジェクトについて次のように語った。

 「1997年に採択された京都議定書から20年経ち、今も京都市は温室効果ガスを削減する取り組みを行なっています。再配達を削減することで物流車両の行き来を減らし、環境負荷の軽減に繋げるほか、細い道の多い京都市の渋滞も緩和できればと思います。同時に、働き方改革というのは日本の大きなテーマです。宅配業者さんの負担を減らし、ひとりひとりが人間らしく生活していけたらと思います」

 京都市には39の大学・短期大学があり、人口の1割が学生に当たる。日本一学生が集中する「大学のまち・学生のまち」であり、地方から進学し、単身住まいの学生が多いという。学生からは、インターネット通販を利用しても、授業や部活、バイトなどにより朝から晩まで不在になり、荷物を受け取れないことが多いという声が挙がっている。

京都市長 門川 大作氏
授業や部活、バイトなどにより朝から晩まで不在がちだという

暗証番号を設定し、捺印にも対応する宅配ボックス「COMBO-Maison

 アパートに設置される宅配ボックス「COMBO-Maison」は、1台で6~8世帯に対応したもの。宅配業者は部屋番号を選択して荷物を入れられる。入居者ごとに暗証番号が設定されるため、取り間違いがなく、セキュリティ性にも配慮している。入居者が入れ替わる際は、暗証番号を変えるだけなため、錠交換も不要としている。

 捺印機能も搭載しており、伝票を差し込んで押印可能。この捺印システムは宅配業者から許可を得ており、印鑑を収納するスペースが設けられている。印鑑は1本のみ収納でき、オーナー所有などアパートを代表する印鑑の使用を推奨する。

 サイズは、390×225×590mm(幅×奥行き×高さ)で、一般的な宅配物の6割は収納できるとしている。いずれも電源不要なため、電気代が掛からない点が特徴。電気工事も不要で、既築アパートにも簡単に取り付けできるという。雨水処理を施しており、屋外に設置可能。壁掛け、自立施工どちらにも対応する。

実際に設置された宅配ボックス。6台設置してアパートの全入居者に対応する
1台で6世帯分をカバーする
宅配業者は荷物を入れたら、該当する部屋番号までレバーを合わせる
捺印機能を備える
荷物が入っているときは、該当の部屋番号のランプが点灯する

 宅配ボックスが設置されたアパートに住む、京都産業大学の学生は、「服をインターネットで買うことが多く、フリマアプリもよく使うのですが、授業やバイトなどでいつも1回で受け取れません。不在票が入っているのを確認する度に業者さんに申し訳ないなと思っていたので、宅配ボックスが設置されたのはありがたいです」とコメントした。

 なお、今回採用された宅配ボックスは2017年6月に発売されたもの。価格は、6世帯用が105,500円、8世帯用が111,500円(税抜)。

学生は、あらかじめ教えられたパスワードを入力して解錠
受け取り完了

教科書のウェブ販売も。大学で使うものを大学で受け取り

 京都産業大学の学内に設置された公共用宅配ボックスは、全19個の荷物を入れられる仕様。「Sサイズ(9ボックス)/Mサイズ(7ボックス)/Lサイズ(3ボックス)」の、3サイズを用意。防犯に配慮して、セキュリティカメラを搭載している。

 ロック機能は、電気錠による自動オープン式で、あらかじめ設定されたパスワードを入力しないと開けられない仕組みとしている。

京都産業大学の学内に設置された公共用宅配ボックス。「S/M/L」3サイズのボックスを計19個用意

 宅配業者が荷物を入れる際は、まず伝票記載の問い合わせ番号を入力するか、バーコードを読み取らせる必要がある。入力が完了すると扉が開き、荷物を入れられ、扉が閉じると納品完了になる。

 荷物を依頼したユーザーは、宅配業者のウェブサイトなどから納品を確認できる。取り出す際は、あらかじめ登録しておいたIDとパスワードを入力すると扉が開き、受け取り完了となる。

 なお、荷物を大学の宅配ボックスに届けてほしい場合は、ネット通販などで商品購入時に、住所欄に「京都産業大学宅配ボックス指定」と記載すれば問題ないという。自宅に不在票が入っている場合も、再配達先に大学の宅配ボックスを指定可能。対応する宅配事業者は、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社。

宅配事業者は、伝票のバーコードを読み取らせて荷物をセット
ボックスサイズなどの選択が完了すると扉が開く
学生はIDとパスワードを入力
受け取り完了

 京都産業大学 学長 大城 光正氏は、学内に宅配ボックスを設置したことについて以下のようにコメント。

 「昨今、人々の生活スタイルは変わり、通信販売を使う人は増えています。京都産業大学でも教科書のウェブ販売をはじめたので、大学で使うものを大学で受け取れたら便利になるでしょう。また、こうして再配達を削減することで、学生にエコ意識が生まれたらと思います」

 京都産業大学の学生は、「サークルや部活などで使うものを、大量にネットで買うことがあります。今までは代表者の自宅に届いていましたが、大学に届けば負担を減らせそうです」と話した。

京都産業大学 学長 大城 光正氏
ボックス内にはセンサーが備えられ、荷物の有無を感知する