長期レビュー
パナソニック「3つ星 ビストロ NE-R3300」 その1
3つ星 ビストロ NE-R3300 |
■オーブンレンジの2010年モデルは各社個性派ぞろい!
今回から、3回に渡って紹介するのはパナソニックのスチームオーブンレンジ「3つ星 ビストロ NE-R3300」だ。電子レンジ機能、オーブン機能に加え、水蒸気によるスチーム加熱や赤外線ヒーターにより加熱もできる多機能タイプの調理家電だ。
メーカー | パナソニック |
製品名 | 3つ星 ビストロ NE-R3300 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | Amazon.co.jp |
購入価格 | 94,574円 |
初回は、ビストロの詳細を見ていく前に、最近のオーブンレンジのトレンドについて軽く触れていきたい。さまざまな加熱方法が搭載されたこの手の調理家電は、もはやそれほど珍しいものではない。今回紹介するパナソニックを始め、シャープ、東芝、日立など主要な国内メーカーのオーブンレンジは、全て多機能タイプとなっている。
中でも、近年注目を集めてきたのが水蒸気を使ったスチーム機能だ。2004年にシャープが出した「ヘルシオ」が、ブームの火付け役となり、それ以降各社とも、こぞってスチーム調理機能を搭載してきた。ヘルシオの最大の特徴は、水蒸気を300℃以上の高温にした過熱水蒸気で、食材の余分な油や塩分を落としたり、栄養素を保持しながら調理できる「健康調理」だ。ガスコンロやオーブン、電子レンジとは違う過熱方法で料理を作る「ヘルシー調理」はここ数年のオーブンレンジの大きなトレンドとなってきた。
そこで、改めて2010年モデルを見てみよう。2010年モデルで興味深いのは、各社それぞれ独自の機能を搭載してきたことだ。スチーム調理機能はもはや当たり前のように搭載しているが、新モデルではヘルシー調理プラスαの機能を打ち出してきているところが多い。各製品の特徴は以下の表の通りだ。
メーカー名 | 日立 | 東芝 | シャープ | パナソニック |
製品名 | 焼き蒸しふた料理 ヘルシーシェフ MRO-GV300 | 石窯ドーム ER-HD500 | HEALSIO(ヘルシオ) AX-PX1 | 3つ星 ビストロ NE-R3300 |
特徴 | 餃子を蒸し焼き | 最大350℃の本格オーブン | カラータッチパネル | 冷凍食材をそのまま調理 |
詳細 | 独自のフタ付きグリル皿でこれまでオーブンでは調理できなかった餃子が焼ける | 庫内全面から遠赤外線を発生。食品を内部まで包み込むように焼き上げる「石窯ドームシステム」。 | タッチパネルで簡単操作。メニューの写真をカラー液晶で確認 | 自宅で作った冷凍食品をスイッチ1つで調理できる |
こう特徴を並べてみると、それぞれ路線が違っているのが分かる。なお、上の機能はあくまで製品の一部で、2010年度の特徴を私の主観からひとことでまとめたものだ。詳しくは製品名からリンクしているそれぞれのニュースページで参照いただきたい。
■解凍から調理までをボタン1つで
凍ったままグリル機能は、自宅で下ごしらえした食材を凍らせて、ビストロ本体で食べられる状態まで一気に調理するというもの(写真は製品発表会時のもの) |
中でも私が気になったのが、今回取り上げるパナソニック「3つ星 ビストロ NE-R3300」(以下、ビストロ)の「凍ったままグリル」だ。冷凍食材を解凍からそのまま食べられる状態に仕上げるというこの機能。機能だけの説明をすると、それってすごいことなの? と疑問に思われる方もいるかもしれない。たとえばスーパーの冷凍食品の売り場に行けば、電子レンジで調理してそのまま食べられるなんて製品は山ほど売っている。
この製品のウリは、市販の冷凍食品ではなくて、自分で作った冷凍食品を調理できるというところにある。つまり、事前に下ごしらえしておいた食材を自分で冷凍、それをビストロではスイッチ1つで食べられる状態にしてくれるのだ。
私がこの製品に惹かれた理由は2つある。1つは、市販の冷凍食品が好きではないこと。もう1つは、週末に平日分の料理をまとめて作ることが多いということ。
これは育った環境によるところが大きいが、私の母は冷凍食品というものを一切使わない人だった。そのため、冷凍食品を食べるという習慣があまりなく、便利だろうなとは思いながらも、これまでほとんど冷凍食品を買ってこなかった。添加物の問題や、食材の産地がわかりにくいという点も気になる。
それでは冷凍機能も使わないかというと、それは別の話。共働きの我が家では、平日に食事の準備をする時間がないため、週末は食材のまとめ買い、作り置きが定番。まずは、雑穀米や玄米をまとめて炊いて、1食分づつ冷凍。ハンバーグやカレーをまとめて作り、これも一食分づつすぐに冷凍。つまり、パナソニックがいう「おうちで冷凍食品」を日常的にやっているのだ。
ただし、冷凍→解凍→調理までの手順は全く違う。これまでの自己流冷凍食品では、まずレンジの解凍機能で解凍、そのあとにガスコンロで温めや調理を行なっていた。ビストロではこれをボタン1つで、一気に食べられる状態に仕上げてくれるというのだ。
まとめ買いや作り置き、さらには食材の冷凍を日常的にしている私のような人にとっては、まさに待っていました! といえるような製品だ。というのも、冷凍食品はやっぱり作り立てのものに比べると、味が落ちる。ハンバーグであれば、解凍時にドリップ(肉汁)と一緒に旨みが出てしまうため、ジューシーさに欠けるし、カレーやシチューの野菜も最初のみずみずしさが失われて、なんだかスカスカな印象。
ビストロでは、食材に合わせた調理法や保存法、さらにはスチームとヒーターを組み合わせた自動メニューで料理をおいしく仕上げてくれるという。自己流の冷凍食品(といってもただ冷凍しただけ)と、どう違うのか、仕上がりはどうなのか。今回のレビューではそこらへんをじっくり見ていきたいと思う。
■やっぱり大きい!
と、前置きが長くなってしまったが、ここからはビストロの外観を見ていこう。
本体が届いた時の第一声は「やっぱり大きい!」ということ。基本的なスペックは、まずサイズが509×468×414mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約22.6kg。庫内容量は約30L。本体カラーはホワイト仕事柄、製品発表会の場などで本体自体は何度も見たことがあったものの、自宅に来ると、また格別の大きさ。これまで電子レンジを入れていたキャビネットには当然入る訳もなく、試行錯誤の上、とりあえず、ダイニングテーブルの上に配置するという情けない結果に。
製品本体 | 扉を開けたところ | 庫内 |
給水タンクは本体下部に配置されている | 扉を開けた時に、本体と扉の間に落ちた食材をキャッチするケースは取り外せるようになっている | これまで電子レンジやトースターを置いていたキャビネットには置けなかった…… |
置き場所を考えるときは、特に高さと奥行きを要チェックしたい。「これまでの電子レンジと同じ場所に置けばいいわ」なんて軽い気持ちで購入すると、後から専用のラックを買うなんてことになってしまいそうだ。
まずは大きさに圧倒されてしまった私だが、外観デザインのレベルの高さも目を見張るものがある。このあたりはセンスの問題もあるが、私個人の趣味で言うと、外観デザインではビストロが一番優れていると思う。扉の部分が鏡張りで、近未来的なデザインは、高級感があって目を引く。
本体には、自動メニューなどで使う「グリル皿」と、オーブン調理などで使う「角皿」が2枚、さらに専用のミトンなどが付属する。
自動メニューなどで使うグリル皿 | 角皿は2枚付属する | 専用のミトンが2つ付属する |
■まずは基本機能をチェック!
この製品のキモである冷凍機能は次回以降で詳しく見ていくとして、まずは基本機能から見ていこう。今回は日常的によく使う、ごはんやおかずの温め、さらに冷凍ご飯の解凍、レンジ機能による茹で野菜なんかを試してみた。
最近の電子レンジは、センサーが食品の温度を検知して、自動で運転時間を設定してくれる。ごはんの温めや、おかずの温めなど日常でよく使う「温め直し」であれば、扉を開けて、温めたいものを入れて、あとはスイッチを押すだけでOKだ。そのほか、手動での調節にも対応している。温度設定はマイナス10℃から90℃まで対応しているほか、出力W(ワット)数の切り替えも、もちろん可能だ。
基本的な操作は、全て「スタート/決定ボタン」で行なう。中央のボタンの周囲には上下左右を選ぶボタンが付いているので、これでメニューを選択する仕組みだ。ボタンは押しやすく、操作しやすい。長押しすることで、時間を飛ばして設定できるところも嬉しい。
基本的な操作を行なう「スタート/決定ボタン」 | ケースに入れて冷凍したごはんを解凍 | 「あたため」を選んで「ごはん・おかず」を選択 |
あとはスイッチをスタートボタンを押すだけで、設定温度にしてくれる。加熱中は設定温度と現在温度が表示される | 温めた後のごはん。ムラなく均等に温められた |
続いてレンジ機能でブロッコリーを茹でる。ビストロでは茹で野菜専用のメニューを搭載する | ブロッコリーの場合は「ゆで野菜葉果菜」を選ぶ | 加熱前にまずブロッコリーを水にさらす |
続いて耐熱皿にブロッコリーを置いて、ラップを軽くかぶせる | 庫内中央部に置く | 加熱後 |
実は今回、初めてスチーム機能が搭載されたオーブンレンジを使ったのだが、基本的な温めだけでも違いを実感できた。それが水蒸気を使って食品を温める「スチーム温め」機能だ。電子レンジで温め直しをするというと、ラップが不可欠のように思っていたが、スチームで食品の乾燥を防ぎながら温めるスチーム温め機能では、ラップを使わずにしっとり温められる。
特に違いを実感できたのは、冷凍ご飯。冷凍したご飯は、水分が飛んでしまって表面が硬くなってしまいがちだが、スチーム温めでは、ふっくらと仕上がった。また、お肉やお魚を解凍するとき用にはスチーム解凍機能が用意されている。
蒸気で乾燥を防ぎながらあたためるスチームあたため | スチームあたための場合、まずタンクに水を入れる |
一食分づつ小分けして、ラップに包んで冷凍した黒米入りごはん | ラップを外した状態で温める | 温めたあとのごはん。ふっくらと仕上がった |
冷凍したブタのヒレ肉の塊を解凍する。スチーム解凍の場合ラップをせずに庫内に置く | スチームを使った半解凍を選択。塊肉の場合、全解凍よりも半解凍の方が切りやすく、解凍後の調理がしやすい | 解凍中。蒸気が扉に付着しているのがわかる |
解凍後の肉。しっとりと仕上がっている | 包丁でさくさくと切れるかたさだ |
■グラタンにもスチーム!?
説明書のレシピブックを見ながら作ったグラタン。材料は玉ねぎ、鶏肉、マカロニ、ホワイトソース、チーズなどで一般的なものとほとんど変わらない |
次にオーブン機能を使ってみた。メニューはグラタンだ。オーブン機能を知るために、説明書を読んでいたところ、グラタンの自動メニューが搭載されているのを発見! さっそく、試してみた。説明書のレシピ通りに下ごしらえをして、いざ電源を入れる時にグラタンの自動メニューでは、スチームを組み合わせた加熱を行なうことを知った。
オーブン料理なのに、スチーム? と、ちょっと不思議に思いながらもタンクに水を入れて、スイッチを押した。これまでのイメージからいうと、スチーム調理とオーブン調理は全く別のイメージだったが、仕上がりを見て納得。
高温のオーブンで一気に加熱すると、水分が飛んで、表面のチーズだけでなく、マカロニなど食材の一部まで硬くなってしまうことがある。スチームを使って仕上げたグラタンは、水分が飛びすぎていないので、食材はふっくらと柔らかく、ジューシーな仕上がりだ。
庫内にセットした様子 | 加熱中。蒸気が扉に付着しているのがわかる | できあがり。中の具材が硬くならずに柔らかく、ジューシーな仕上がり |
■最適な時間、調理法が吟味されている
あたためだけでも、用途に応じた6種類が用意されている |
今回は、個人的によく使う機能を中心に紹介したが、ビストロではこれ以外にもさまざまな機能を搭載している。たとえば「あたため」の機能だけでも、「ごはん・おかず」「飲み物」「中華まん」「スチームあたため」「酒かん」「フライ」といった具合で、穴がない。
感心したのは、次回以降に紹介するレシピも含めて、どれも最適な状態に仕上げてくれるということ。茹で野菜1つとっても、じゃがいもなのか、ブロッコリーなのかで違う調理時間が設定されていて、それぞれ最適な状態に仕上げてくれる。
本体には、自動メニューだけで150以上搭載されているが、このメニュー1つ1つに対して最適な調理法、温度、時間を設定しているのかと思うと、感心してしまう。数の多さだけでなく、仕上がりがこれまた絶妙。適度に歯ごたえが残ったブロッコリーなど、自分で調節するのは難しい。それをいつでも同じように仕上げくれる。
これまで電子レンジ調理というと、時短や楽さを優先した料理というイメージがあったが、ビストロを使い始めてからはそのイメージが180度変わった。
オーブンよりもフライパンよりも料理がおいしくできる! 次回はその一例として、仕上がりに感動すら覚えた「鳥の照り焼き」を紹介、さらにビストロの新しい機能「凍ったままグリル機能」も詳しくみていこう。
2010年10月6日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)