長期レビュー
ダイソン「エアマルチプライアー タワーファン&フロアーファン」 その2
ダイソン「Air Multiplier AMO3 フロアーファン」 |
ダイソンの「エアマルチプライアー」長期レビュー第2回目。今回は「Air Multiplier AMO3 フロアーファン」の機能や使用感を中心に書いてみたい。なお、第1回目のレポートはこちら。
フロアーファンは現行のエアマルチプライアーシリーズ中、最も風量の多い床置きタイプ扇風機だ。その風量は、従来からあった機種のテーブルファンの約1.5倍。最大で毎秒約33Lを吸気し、その18倍にあたる毎秒594Lの風を生み出すという。大風量=リング部分のサイズも大きくなっているので、存在感や必要なスペースもエアマルチプライアーシリーズ中最大という感じですな。
フロアーファンのサイズは、高さが約119~140cmで、フットプリントが直径28cmの円。リング部分の直径は約45cmで奥行きは約12cmある。シンプルなデザインだが、それなりの存在感はある | 風が吹き出すリング部は高さを調節できる。最も高くすると約140cmになる。上げ下げはスムーズ | 最も下げた状態で約119cm。無段階で高さ調節を行なえるので、このように少しだけ高くするようなこともできる |
ファンや吸気部などが収まった台座部分。円形のフットプリントで、直径は約28cm。電源ボタン、首振りボタン、無段階の風量調節ツマミがある | 専用リモコンが付属する。電源のオンオフ、段階的な風量調節を行なえる | リモコンにはマグネットが埋め込まれており、このようにフロアーファンのリング部上部に吸着できる |
リング部は上下に向きを変えられる(チルトできる)。チルト角度は上下約20度 | 下向きにしたところ。角度調節は無段階で行なえる | リング部とパイプを接続する部分がフレキシブルな構造になっており、これにより上下に向きを変えられる |
フロアーファンを使ってみた印象としては、微風から強風まで幅広く風量調節が可能なのだが、微風近くなら非常に静音であることがまずひとつある。
風量は、台座部分にある風量調節ツマミで無段階調節でき、リモコンだと最小(微風)~最大(強風)まで8段階で調節できる。で、リモコンで調節した場合の8段階を基準にその印象を書いてみると、以下のような感じになる。
風量最小~2段階目あたりは、“そよ風”というイメージ。動作音も静音だと感じられる。この動作音なら、テレビを観ながらや、音楽を聴きながらの使用も現実的だろう。ただ、一般の扇風機とは違う、やや高めのモーター音が聞こえる。このモーター音は大きくはないが、人によっては「気になる音」になるかもしれない。
風量3~4段階目は、汗ばんだ体が間もなく乾くくらいの、やや強い風。自転車でゆっくり走ったときに受ける風、みたいな。この状態ではリング部分から風が吹き出す音が少し耳障りで、静かとは言えない。とはいえ、風が吹き出す音により、前述のモーター音はあまり聞こえなくなる。
風量が5段階目を超えると、風が吹き出す音でテレビやオーディオの音が遮られがちに。音響機器のボリュームを上げれば聞こえるものの、フロアーファンの騒音を超えるまでボリュームを上げるのは現実的ではない。しかし、風の量は豪快。とくに風量が6段階目あたりから最大までは、10畳くらいの部屋の空気をしっかりと攪拌してくれる。
てな感じで、フロアーファンについでだけ言えば、パワーを上げれば十二分に風量が得られるが、その場合はそーとーウルサめ、という感じ。だが、一般的な羽根有りタイプの扇風機で同様の大風量を出した場合、フロアーファンよりウルサいと思われる。
逆に、風量を微風近くまで弱めれば、静音性はかなりのもの。前述のように独特のモーター音が聞こえちゃうものの、風切り音からくる騒音は僅少。こういう静かさで動作する羽根有りタイプ扇風機は、なかなかナイと思われる。
風の質に関しては、既存機種のテーブルファンと同様に滑らかだ。微風~やや風量多め状態だと、ホントに窓からそよ風が入ってきているような印象で、長時間顔などに当たっていても気になったりストレスになったりしにくい。実は、家族は羽根有り扇風機の風が顔に直接当たるのを嫌っているのだが、「この扇風機の風だと顔に当たっても気持ち悪くない」と言う。
さて拙宅では、フロアーファンを主にリビングで試用している。最初はフツーの扇風機と同様、人に風を当てて涼を得ていたのだが、それ以上に活躍したのが、エアコンの冷房効果を増すためのサーキュレーターとしてであった。
結論から言うと、サーキュレーターとしてのフロアーファンは非常に秀逸。大風量なので、エアコンからの冷気を効率良く室内に循環させられる。よりスピーディにエアコンによる冷房効果が得られるのだ。
冷房が効いたら、フロアーファンの微風運転に移行させるのだが、これがまたサーキュレーターとしてナイス。スムーズでソフトな風を人に当てるんですな。すると、エアコンの温度設定を過度に下げなくても、十分涼しく感じられる。またフロアーファンは、一般的なサーキュレーターと比べたらかなり静音にて動作するので、常時(微風運転で)使ってもストレスにならない。
ところで、上の使用中の写真、床置きタイプの扇風機をテーブルの上に置いちゃってて、光景としては違和感があるかも。ただ、実際にフロアーファンに触れているユーザーとしては、違和感は少ない。というのも、フロアーファンは重心が低い(台座部にモーターなどの重いパーツが集中している)ので、揺れて倒れるというイメージがない。重量的にも男性なら片手で持ち上げられる程度。テーブル上に置くのは危険という印象は、使っている側の感覚としては薄いのだ。
てな感じで、おおむねイイ感じとなったフロアーファン。大風量時の騒音に対する不満はあるんだが、実際、大風量で使うときは窓を開けたりしている状況。屋外からの騒音もあったりするわけで、テレビの音や音楽を邪魔して困るというシチュエーションは、それほど多くなかったりする。窓を閉め切ってエアコン使う場合だと、微風運転でサーキュレーター的に使うので、動作音も静かだ。
風量の幅、微風運転時の静穏性、スムーズな風の質など多くの利点を持つフロアーファンだが、やはり考えちゃうのがお値段。希望小売価格54,000円はサスガに……という感じだが、掃除の手間の少なさや羽根がないことの安全性、それから優れたデザイン性などまで含めると「思い切って買ってもいいかニャ」と思わせたりもする。そのあたりの価値感は人それぞれだと思うが、なかなかナイスな扇風機なので、ぜひ一度実機に触れてみてほしい。
2010年8月6日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)