長期レビュー

三洋「匠純銅 おどり炊き ECJ-XP1000A」 その2

~温泉卵から雑炊まで、多彩な炊飯メニュー
by 藤山 哲人

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



三洋「匠純銅 おどり炊き ECJ-XP1000A」

 蒸気レス炊飯器という時代の流れにありながら、2.4mある天井にまで蒸気を吹き上げるおどり炊きの実力を、ムービーと写真で紹介した前回。今回は、多彩な炊飯メニューを中心に紹介していこう。

 ECJ-XP1000Aでは、メニューは大きく2つに分かれている。炊飯方式と、お米の種類を指定する方式だ。炊飯方式によっては、可変圧力のおどり炊きを行なったり、随時加圧したり、また加圧しない方式など色々あり、それぞれに異なる挙動を見ているだけでも面白い。


無洗米よりも白米を活かしたメニュー構成

 炊飯に関するメニューは、次のようにまとめられる。

【炊飯メニュー一覧】

炊飯
方式
選べるお米
加圧
方式
ワンポイントアドバイス
匠炊き白米おどり
炊き
一番おいしく炊き上げてくれるモード。
吸水工程が30分ほどあるため、炊飯時間は圧力式としては長めの60分程度。
四季炊きお米に含まれる水分量を春夏秋冬で指定する炊飯。
ご飯の甘みや粘り、固さなどをそれぞれ3段階で指定する上級モードもある。
おかゆ白米・無洗米
玄米・発芽玄米
分づき/胚芽・雑穀
高圧
炊飯
全工程加圧されるので、具も煮えておいしいおかゆができる。
若干糊っぽいので、水は多めにしたほうがよさそう。
炊き込み
おこわ
白米
無洗米
分づき
胚芽
炊き込みご飯とおこわの炊き分けは、内釜の水位線で決まる。
火の通りやすい具材は、蒸らし中に投入することも可能で、音声でタイミングを指示してくれる。
すし
カレー
通常
炊飯
すし飯とカレー用のご飯の炊き分けは、内釜の水位線で炊き分ける。
いずれの場合も、粘りが少なく、少し固めのご飯に炊き上げる。
高速高圧
炊飯
1合なら15分で炊き上げるモード。仕上がりは固いので、
あらかじめお米を浸したり、炊き上がっても少し蒸らしておくとおいしさがアップする。
甘みおどり
炊き
お米の甘みを引き出す炊飯モード。
四季炊きの操作が面倒な場合は、このモードが便利。
もちもち弾力のあるモチモチとした食感に炊き上げるモード。
四季炊きの操作が面倒な場合は、このモードが便利。
ふつう白米・無洗米
分づき/胚芽
通常炊飯モード。ご飯のかたさは普通。
匠炊きや四季炊きは無洗米に対応していないので、このモードで炊飯する。
玄米・発芽玄米
雑穀
高圧
炊飯
かため白米・無洗米
分づき/胚芽
おどり
炊き
通常炊飯モード。ご飯は固め。
匠炊きや四季炊きは無洗米に対応していないので、このモードで炊飯する。
玄米・発芽玄米
雑穀
高圧
炊飯
やわらか白米・無洗米
分づき/胚芽
おどり
炊き
通常炊飯モード。ご飯のかたさは柔らかめ。
匠炊きや四季炊きは無洗米に対応していないので、このモードで炊飯する。
玄米・発芽玄米
雑穀
高圧
炊飯

 この表を見れば分かるとおり、炊飯器の性能を最大限に利用する場合は白米を使う必要がある。つまり、「食べ慣れた無洗米があり、白米に切り替える予定がない」という場合は、コスト的にも性能的にもオーバースペックになる。ほかの炊飯器を当たった方がよさそうだ。

 なお、表中で「高圧炊飯」とあるものは、常時1.2気圧をかけて炊飯するモード。おかゆや炊き込みご飯などで、お米を一緒に具材を炊くと、具の食感が柔 らかめになることに注意して欲しい。ただし炊き込みご飯の場合は、後述のように蒸らし中に具材を入れることも可能なので、上手に使い分けるといいだろう。

まずお米の種類を選んでから、炊飯方式を選ぶ。写真は無洗米を選んだ場合白米を選ぶとすべての炊飯方式が使える玄米を選ぶと、固さの選択肢とおかゆ炊飯に絞られる


内釜には水位線の目盛りが記されている。写真は白米と無洗米、発芽玄米の水位線とおこわのもの。0.5合単位になっているので使いやすいすし飯とおかゆ(全がゆの場合)の水位線。おかゆは少し多めの水を入れたほうがいいかも?カレーとすし飯の炊き分けは、水の量で決まるので注意。すし飯は反対側に印刷されている

市販の炊き込みご飯の素でマツタケご飯を炊いてみた


具材投入のタイミングは、音声ガイドと液晶パネルに表示される
 この炊飯器で注意するのは、炊き込みご飯の場合は常時加圧炊飯されるという点だ。鳥五目御飯などで肉の食感を残したい場合は、蒸し段階で肉を入れるようにすればいい。炊き上がり12分前ぐらいになると、音声で「具材を投入してください」というアナウンスが流れ、液晶にもその旨が表示される。

 炊き込みご飯の素を使う場合は、具が全部レトルトパウチされているので、鳥五目御飯などをやると「肉がないっ!」てコトになりかねないので注意。子供たちにとって肉の有無は死活問題であり、争いの発端になりかねない。

 今回は、マツタケご飯の素を使ったが、入っている具材を見ると煮崩れしそうなものや、消失して家族を絶望させるようなものはなかったので、すべて炊き上げてしまうことにした。

強いて言えばにんじんが溶けてなくなりそうだが、より分けるのも面倒なのでこのまま炊飯!にんじんは大丈夫だった様子。こげたしょうゆの香りが食欲を誘う炊き込みご飯のできあがり動物性のたんぱく質がなかったので、うずらの卵をトッピング。ゴージャスだ(笑)

 炊き上がりはご覧の通り。ふっくらとおいしそうなマツタケご飯の完成だ。これにお味噌汁と、ダシ巻き卵 with 大根おろし&しらす、そして野沢菜でヘルシーな夕食に。


下調べすれば応用が利く「マルチ調理モード」

 この炊飯器のもうひとつのメニューがマルチ調理メニューだ。温度は35~100℃(91~99℃は設定不可)、調理時間は1分~60分までは分単位、それ以上は時間単位で10時間まで設定でき、さまざまな調理に使える。

 日立の炊飯器には、温泉たまごや煮込み、蒸し料理などのメニューが用意されていたが、こちらは完全手動。とはいえ、肉やたまごの特性などを調べれば、火の通りを自由自在に変化できるので応用範囲が幅広い。

たまごが浸る程度の水を入れる。個数の多少によって調理時間や温度を変える必要はなさそうだまずはレシピ通りにマルチ調理モードで68℃40分にして加熱するできあがったら余熱が入ってしまわないように、すぐに冷水につけるのがポイント

 写真は温泉たまごだが、添付のレシピブック通りに68℃で40分作ると、黄身に火が入り過ぎてモチモチになってしまった。こんなときは、インターネットなどでたまごの特性を調べればいい。調べてみると「黄身が65~70℃、白身が75~78℃(一部は60~65℃)で固まるという。そこで温度を67℃、調理時間を25分にして作り直すと、黄身も柔らかめの温泉たまごのできあがりだ。黄身もトローリ派なら、設定温度を65℃ぐらいにすればいいだろう。

68℃で40分だと固めの温泉たまご。ちょっと売ってるのとは違うなぁ 67℃25分にしたところ、市販のものにだいぶ近くなった65℃20分にすると、黄身がトローリの温泉たまごに。ん~これはうまい!

ヨーグルトや豆腐なども作れるレシピブックも付属する。高級炊飯器だからか、高価な食材を使ったレシピが多いのは難点だが……
 このマルチ調理メニューを使えば、火加減の調整が難しいローストビーフの焼き上がりも確実にコントロールできる。あらかじめフライパンで焼き目をつけた肉を炊飯器に入れ、肉が浸る程度の水を入れて温度と調理時間を指定。これで火の通りを自由自在に調整できる。

 ちなみに牛肉の場合は、肉の中心が60℃でレア(たたき風)、71℃ミディアム(ローストビーフ)、77℃でウェルダンという。あとは肉の中心まで火が入る時間を何度か実験すれば、確実に好みの仕上がりをコントロールできるだろう。

 さらに温度管理が大変なコンソメスープを作る場合にも重宝するだろう。コンロで作るとどうしても、濁ったコンソメになってしまうという人にはお勧めだ。鶏のひき肉などを内釜に入れ水を注ぎ、設定温度を80~90度にすればOK。これで水は沸騰することなく、澄んだコンソメスープが取れる。

 添付されているカラーのレシピブックには、温泉たまご以外にヨーグルトや豆腐などの作り方も掲載されているのでぜひ試してみてはいかがだろう。


温泉たまご入りとりがゆは絶妙にうまい!

 今回作るのは、筆者オリジナルのレシピ、中華とりがゆだ。以前、おかゆメーカーのレビュー記事でも紹介したが、我が家の定番メニューなので炊飯器を使って調理してみた。また今回は、温泉たまごも入れて豪華? なとりがゆにしてみた。

 あらかじめ研いだお米を、ごま油で半透明になるぐらいに炒めるのがポイントだ! 炒めたお米は内釜に入れ、水をおかゆの1.5のラインまで注ぐ。つまり1.5合のお米で5人分の夕食ができてしまうという、超経済的な晩ごはんだ。鶏肉を入れればうまみがじゅうぶんに出るが、さらに中華スープの元を1~2杯入れてコクを強くする。ここでネギやしょうがなどの薬味を入れたくなるが、一度炊飯をはじめるとフタを開けられないので、引き上げるタイミングがない。炊飯器でやる場合は、薬味なしで炊飯すること。

大さじ1杯程度のごま油で研いだお米を炒める1.5合のお米なので、水はおかゆの1.5のラインまで張る中華の鶏がらスープをおおさじ1~2杯入れコクを深める

 スープを入れた段階で少し味見をしてみて、塩を小さじ1杯程度いれて味を調整。その後、から揚げ用の鶏肉を投入する。

胸肉を使うとあっさり、もも肉を使うとジューシーなおかゆになる。部位は好みで炊飯時間やおよそ1時間。その間に部屋中にごま油のいい香りがしておなかが減るので注意!針しょうがとネギ、それに青いものを加えれば立派な晩ごはんのできあがり

 あとは炊飯器まかせでOK。炊いている最中から、ごま油のおいしそうな香りが部屋一杯に広がり、なんとも食欲を誘うレシピだ。炊き上がりはご覧の通り。

 加圧しない炊飯器で作ったおかゆに比べると、ご飯がかなり水を吸ってしまい全体的には少し糊っぽくなる。こんな場合は、好みでお湯を注げばいい。先ほど作った温泉たまごを落とし、針しょうがに長ネギ、緑のものとして冷凍インゲンを塩茹でしたものを添えて完成だ。味はうまいに決まってる! 塩分の調整は塩で各自調整してもヨシ、ザーサイなどを付け合わせてそれで調整するのもいいだろう。

 ちなみに子供と奥さんは鳥の皮が苦手なのだが、加圧調理したおかげで油がスープに移り、皮もフタフタに柔らかくなってすべて食べてしまった! いつもなら絶対、俺のどんぶりに回ってくるのに……。また鶏肉も絶妙なホクホク感。お箸で崩すことができるぐらい柔らかいが、肉の食感も残っている。

 レシピブックにはないが、お勧めの絶品だ。


冷凍ご飯や冷やご飯で雑炊もできる!

 マルチ調理モードの一機能としてあるのが「ご飯調理モード」だ。あまったご飯や冷凍ご飯を使い、15分で簡単に雑炊やリゾットが作れるというもの。ちょっと小腹が空いたときなどは、残りご飯にお吸い物の元を振りかけて、水を加えてれば雑炊のできあがりだ。お父さんの晩酌の〆などにも重宝しそうだ。

1膳ぶんの冷凍ご飯の上に、マツタケのお吸い物を2袋をかけ、ご飯が浸る程度の水を注ぐマルチ調理ボタンを2回押すと、ご飯調理モードになるので15分にセットできあがりはご覧の通り。マツタケの香りが鼻腔をくすぐる雑炊が完成


 今回は多彩な設定が各種揃えられている炊飯メニューを中心にご紹介したが、最終回となる次回では、まとめ編として手入れの仕方などを中心にお伝えしていく予定だ。



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2009年12月14日 00:00