長期レビュー

シャープ「プラズマクラスター掃除機 EC-VX210」

~静かで手入れも簡単、“理想のサイクロン掃除機”の実力は
by 正藤 慶一

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



 

手入れを省いた、理想のサイクロン式掃除機

今回レビューするシャープのサイクロン式掃除機「EC-VX210」
 長い間、掃除機はサイクロン式ではなく、昔からある紙パック式で十分だろう、と思ってきた。

 というのも、昔のサイクロン式は紙パック式と比べて圧倒的に面倒くさかった。掃除した後は毎回ゴミを捨てなければいけないし、ゴミ捨て時にもゴミが舞い上がりやすい。その点紙パック式なら、パックの交換頻度も少ないし、溜まったゴミはパックのまま捨てるから舞い上がることも稀。確かにサイクロンには「吸引力が落ちない」や「紙パックがいらない」というメリットはあるが、上記のように使い勝手の面で導入するメリットは少ないと判断していた。

 しかし、そんな考えはある製品の登場で吹っ飛んでしまった。シャープの最高級サイクロン式掃除機「EC-VX200」である。

 EC-VX200は2008年の11月に発売されたサイクロン式掃除機だが、何よりも特徴的だったのが、吸い込んだゴミを押しつぶして圧縮する機能。従来はそのままダストカップに入れていたゴミを圧縮することで、ゴミ捨てを毎回する必要がなくなり、また捨てる際のゴミの舞い上がりも抑えられるのだ。

 もちろん、近年のサイクロン式掃除機では当たり前となっている、本体内フィルターの自動掃除機能も付いている。つまり、メンテナンス性での不満点を解消し、紙パック並みの使いやすさを備えているというわけだ。製品発表会でこの機能を見た際、“ついにこんな掃除機が出たか!”と感動したのを覚えている。

 使いたいと思いながらも、結局なかなか購入できないでいたが、それから1年ほど経った2009年11月に、新モデルの「EC-VX210」が登場。好評だったのか、ゴミ圧縮機能はしっかりと継承されている。2009年新モデルでも、このゴミ圧縮機能を備えているのはシャープだけだ。

2008年に発売された「EC-VX200」(写真)にて、はじめてゴミの圧縮機能を搭載。2009年製品のEC-VX210でも同機能が継承されているEC-VX210では、ゴミの圧縮効果が増加。約1カ月間のゴミ捨てが不要になるという

 そこで今回の長期レビューでは、このゴミ圧縮機能というオンリーワンの技術を搭載した「EC-VX210」を使ってみたい。

 初回となる今回は、EC-VX210の特徴的な機能と実際の使用感を紹介。2回目ではメンテナンス面を、最終回ではオプション品についてを採り上げる。

メーカーシャープ
品番EC-VX210
希望小売価格オープンプライス
購入店舗Amazon.co.jp
購入価格43,399円

流行りの静音対策でマンション向けにも

 今回このEC-VX210を購入した理由は、前述のゴミ圧縮機能のみではない。「静音」と、「排気」についてもクリアしていることが大きい。

EC-VX210では、ノズルやホース部にサイレンサーシステムを搭載し、静音性を向上している
 まずは「静音」。EC-VX210では48dBと、サイクロン式掃除機としては業界最小クラスの運転音が謳われている。我が家もマンション住まいなので、できれば音が静かなものが欲しかった。

 当然ながら、掃除機はモーターを動かして吸気/排気する以上、ある程度の音がするのは当然のことだが、マンションなど共同住宅でのニーズが高まったためか、運転音を抑えた製品も市場に登場し始めている。

 静かな掃除機の嚆矢となったのが、2008年3月に東芝から発売されたサイクロン式掃除機「クワイエ」。50dB、60dBは当たり前という掃除機業界にあって、運転音を49dBと、40dB台に抑えたことで注目を浴びた。

 シャープもこの静音化の流れに追随。EC-VX200では、運転音を48dBと、クワイエよりも1dB抑制し“業界最小の運転音”(当時)を謳った。現在では、EC-VX210も東芝の最新モデル「VC-3000X」でも、運転音は同じ値となっているが、EC-VX210では2009年度の新しい騒音基準で最小で47dBと、より静かに運転できるようになっている。

 ちなみに現在、掃除機の静音性で優位に立っているのはこの2社。それ以外のメーカーとなると、運転音が高くなる傾向にある。

【サイクロン式掃除機:2009年高級モデルの運転音と吸込仕事率】
メーカー品番愛称運転音
(dB)
新運転音
(dB)
集塵
容量
吸込
仕事率
実売価格
(Amazon.co.jp)
シャープEC-VX210プラズマクラスター
掃除機
48~4454~47400ml450W43,399円
東芝VC-3000Xクワイエ48~4355~54400ml450W50,232円
日立CV-RS3100-55~4559~51400ml460W46,800円
パナソニックMC-JC20WX-59~5063~56600ml540W77,630円
三洋SC-XD3000エアシス61~5162~55700ml500W52,851円
三菱TC-AJ15Pスタミナストロング63~5464~56700ml580W37,534円
ダイソンDC26 motorhead complete
680ml68,690円
※ホームページに情報が掲載されていない

遠心分離サイクロンにULPAフィルターなど、排気対策も

 もうひとつ、掃除機を購入する点で譲れなかったのが「排気」だ。

 我が家でこれまで使っていた掃除機は紙パック式だったが、パック内にゴミをため込むためか、どうにも排気が気になってしまう。窓のある部屋の掃除なら空気も入れ換えられるが、窓のない部屋で使った時には、しばらくの間、そのニオイが離れない。クシャミが続いてしまうということもよくあった。

HEPA/ULPAという高機能フィルターを搭載。さらにはプラズマクラスターイオンの排出など、排気対策機能も搭載
 EC-VX210では、排気をキレイにするための機能が備わっている。まずはサイクロン掃除機の基本となるゴミの遠心分離システム。吸い込んだゴミと空気を高速旋回で遠心分離することで、ゴミだけをダストカップの中に残し、キレイな空気を外に排出するというものだ。

 さらに、ダストカップの外にはHEPAフィルターが、排気口にはHEPAよりもさらに捕集率の高いULPAフィルターがある。細かいホコリもキャッチできる仕組みになっている。おまけに運転停止後は、シャープの除菌技術「プラズマクラスターイオン」を本体後方から発生する機能までも備えている。排気対策はしっかりと整っているのだ。

 まとめると、EC-VX210では紙パック並みのメンテナンスのラクさと、サイクロンならではの排気のキレイさ、業界トップクラスの静音性という、私が求める3点をすべてクリアする製品だったというわけだ。

 ちなみにEC-VX210では、新たにダストカップ内にプラスマクラスターイオンを放出する機能もあるが、これは排気とはまた違った効果が期待できる。これについては、2回目以降で解説しよう。


音は静かで、排気もキレイ。吸引力の低下も見られない

 前置きが長くなった。初回はとりあえずの使用感ぐらいは述べたいので、家に届いたパッケージを開けてみる。

 本体を見てまず感じたのが「ちょっと大きいかな?」。購入前に内覧会や店頭で見ているものの、いざ我が家の狭いマンションに持ち込んでみると迫力を感じる。これまで使っていた紙パック式と比べても大きめだ。

EC-VX210を組み立てたところ。カラーはゴールド系の「シャンパンゴールド」を選択横から見たところ。サイズは250×420×262mm(幅×奥行き×高さ)と、狭い我が家では大きく感じる
ヘッド部は従来モデルよりも軽くなったというヘッド裏面にはモーターで動くパワーブラシを採用。ブラシの素材は、拭き掃除効果のある「極細ループから拭きブラシ」

 操作はホースのハンドル部にあるスイッチで行なう。上から順に「(パワーブラシの)切/入」、「(本体運転の)強/弱」、「エコ掃除」、「(本体運転の)切」の4つ。“エコ掃除”とは、床面や吸込口の動きに自動で合わせてくれる運転モード。最近の高級掃除機では、このような自動判別機能はもう当たり前になっている。

 「エコ掃除」ボタンを押して運転スタート。まずはカーペットを掃除してみると、自走式パワーブラシがガリガリと動き、どんどんゴミを吸い取っていく。これはパワフル。吸引力はしっかり備えている。ただ、パワーブラシは夜に使うには運転音が大きめかもしれない。

 次にカーペットを外し、ビニール床材を掃除する。しかし、エコ掃除はデフォルトでパワーブラシがONとなっているため、ブラシが床に響いてうるさい。「(ブラシ)切/入」ボタンを押してブラシを停止すると、運転音は一転して抑えめに。我が家で使っていた紙パック式よりも断然静かだ。もちろん、しっかりとゴミは吸っている。まさかサイクロン式掃除機で、ここまでの静かさが味わえるとは……。

カーペットとビニール床材に片栗粉を落とし、「エコ掃除」モードで掃除しているところ。カーペットはブラシの効果か、粉を完璧に吸い取ることができた。床はパワーは最も弱く、ブラシも切っていたが、難なく吸い取ることができた

こちらは我が家で昔から使っている紙パック式掃除機。「弱」→「中」の順に上げているが、「強」にせずとも中の時点でかなりうるさい。ゴミが結構溜まっていることもあるだろう一方のEC-VX210。運転を「エコ掃除」→強→弱の順に切り替えている。強でも、左の動画の「中」よりも静か。「弱」でパワーブラシOFFなら、夜でも使用できるレベルに感じた

 「切」ボタンを押すと運転が停止し、そのままフィルターの自動掃除機能へと移行する。すでに高級ランクの掃除機をお使いの方はご存じだろうが、サイクロン式掃除機の自動掃除機能は「カタカタカタカタ」と、結構うるさい。これはフィルターに付着した細かいチリやホコリをたたき落としている音なのだが、本製品も例に漏れず、このカタカタカタという音がする。さらに追い打ちをかけるように、運転終了を告げる「ピー」というビープ音までしてしまう。静音が特徴の製品なのに、こういったところでミソを付けるのはいかがなものだろうか。

 と思っていたら、説明書にはこの自動掃除の回避方法が書かれていた。自動掃除が始る前に、もう一度「切」ボタンを押すだけで、自動掃除がすぐにストップできる。もちろん自動掃除を使った方が手入れが抑えられるのは分かるが、静かさを優先する人向けのモードもちゃんと用意されているのはうれしい。

運転をストップすると、HEPAフィルターを叩き、ゴミを圧縮するモードへ自動移行する。運転音は静かだが、コレははっきり言ってうるさい。特に最後のビープ音は強烈だ自動掃除機能は切ボタンを押せばすぐに止まる。夜の使用時には特に重宝するだろう

 その後2週間ほど使い続けたが、カップの中にはゴミがギッシリと圧縮されていた。よく見ると、細かい砂のようなゴミまで捕えてられており、ここまで集塵できるのかとビックリしてしまった。本製品はワンタッチで簡単にゴミを捨てられる機能もあるが、ゴミが満量の目盛りまで届いていないので、せっかくだからもう少し溜めて、2回目以降で捨ててみよう。なお、吸引力の低下は特に感じられなかった。

 最後に排気だが、ゴミがダストカップ内にあるというのに、かなり控えめだ。掃除機独特のニオイはかすかにするが、それも一瞬。排気口に顔を近づけるなど極端な使い方をしない限りは、特に気にすることもないだろう。

ダストカップは本体のボタンを押せばすぐに取り出せる。写真中の赤いスクリュー部分でゴミを圧縮する2週間ほど使ったダストカップ。ゴミがぎっしりと詰まっているが、吸引力の低下は特に感じられなかった。細かいホコリまでキャッチできているのは驚きだ
使用後にはプラズマクラスターイオンを本体外に出す。ニオイがそれほどしないということは、効果があるのかもしれない排気部にはULPAフィルターを搭載する。取り出すことはできない



 2週間ほど使ったとりあえずの感想は一言、イイ!。運転音は静か、ゴミも毎回捨てなくてOK、排気も気にならない、使いやすい自走式のパワーブラシ……便利な機能が満載で、とても使いやすい。まだ初回だが、日々の掃除に使うのであれば「これ買っとけばいいじゃない」と思えてくる。敢えて欠点を挙げるならサイズが大きいところくらいか。とりあえず、ここまで使った段階では非常に満足している。

 次回は、今回紹介しきれなかったゴミ捨てやメンテナンス、そしてこのEC-VX210で追加された、排気以外のプラズマクラスターイオンの効果について見てみよう。



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2010年2月10日 00:00