● パックを捨てるだけの簡単ゴミ捨て
紙パック掃除機は、ゴミ集塵用の紙パックを使用する掃除機のことです。ここ数年、サイクロン掃除機に注目が集まっていますが、紙パック掃除機は現在でも日本で主流の掃除機として広く利用されています。
電気掃除機が登場した当初、ゴミの集塵には袋状の布製フィルターが利用されていました。そのため、ある程度フィルターにゴミが溜まると、フィルターを取り出して中のゴミを捨てたり、フィルターを水洗いする必要があって、かなり手間がかかるものでした。筆者が子供の頃家にあった掃除機も布製のフィルターを使ったもので、ゴミが溜まると母親が掃除機を外に持ち出し、面倒臭そうに布フィルターの掃除をしていたのを今でも覚えています。
その手間を省くために登場したのが、使い捨ての紙パックです。ゴミが溜まったら、紙パックを取り出してまるごと捨てて、新しい紙パックと交換すればよく、手間がかからりません。ゴミに直接触れることもなく、さらに目に付くこともないというメリットもあって、一気に主流の方式として普及したのです。
ただし、手間がかからない反面、紙パックでゴミを漉し取るという方式のため吸引力が低下しやすかったり、ゴミが溜まるにしたがって排気が臭くなったり、紙パックを交換するためにランニングコストがかかるという欠点もあります。
● 排気の汚れや臭いが気にならない製品が増えている
しかし、現在市販されている紙パック掃除機では、掃除機本体や紙パックの改良が進んだことによって、以前までの欠点がかなり解消されてきています。
まず、排気の臭いについては、紙パック自体に消臭加工を施すとともに、掃除機本体にもさまざまな脱臭機能を搭載することによって、現在ではほとんど気にならないようになってきています。加えて、99.97%以上の粒子捕集率を持つ「HEPAフィルター」をはじめとする様々なフィルターを本体に搭載することによって、排気の清潔さも向上しています。一部の最新機種では、排気の臭いや清潔さはサイクロン掃除機と遜色のないレベルにまで進化しており、【紙パック掃除機=排気が臭くて汚い】という図式はもはや当てはまらなくなってきています。
また、吸引力が低下するという点も、紙パック自体を目詰まりしにくい構造に改良したり、掃除のたびに紙パックを叩いてゴミをふるい落とす機構を搭載するなどで、かなり改善されています。それでも完璧というわけではありませんが、昔のように短時間で吸引力が低下してしまうことはかなり減っていると考えていいでしょう。
ただ、ランニングコストに関しては改善されていません。紙袋の値段は、安い製品なら10枚で500円といったものありますが、脱臭・抗菌加工などが施された高機能なものになると、3枚で2,000円を超えるような高価なものになる傾向があります。
例えば、紙パック3枚セットが1,500円だった場合、2カ月に1回パックを交換するとなると、1年で3,000円のコストがかかります。一方サイクロン掃除機の場合は、紙パックを使わないためこの分のコストが浮くことになります。この点は確実に不利なポイントといえるでしょう。
それでも、紙パックを取り出して捨てるだけというゴミ捨ての手軽さは、フィルタ清掃の手間がかかる大半のサイクロン掃除機にはない大きな利点です。ゴミ捨て時の利便性や清潔を重視したいなら、多少ランニングコストがかかろうとも、紙パック掃除機を選択したほうが良いでしょう。
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日立の紙パック式掃除機「きれい宣言 CV-PL800」では、同社のサイクロン式掃除機と同様、99.999%の捕塵性能を謳っている
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本体内にHEPAフィルターなどを備えることで、排気のきれいさを保っている
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ナショナルの紙パック「逃がさんパック」は、微細なハウスダストもキャッチする立体構造を採用している
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【紙パック掃除機】の、ここだけは押さえたいポイント
・ゴミ捨ては紙パックを取り出して捨てるだけと手軽で衛生的 ・高級機では排気の臭いや汚れもほとんど気にならなくなっている ・定期的な紙パック交換のためランニングコストがかかる
2008年5月28日 初版
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2008/05/28 00:03
平澤 寿康 1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。 |
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