【ミラノサローネ2009】
日本のデザイナーらによる光の提案

~深澤直人のスタンド、喜多俊之の有機EL照明など

和のテイストが人気、ヤマギワの新作

 Euloluce(照明展)の年、日本企業はどのようなヨーロッパに対して、どのような「あかり」の提案をしているのだろう。おもしろいことに、日本企業のほとんどは、ビジネス色の強いRho Fiera新見本市会場ではなく、ミラノの街中でのFuoriSalone(場外サローネ)に展示していた。

 CassionaやB.B. Italiaなどの超高級家具店が並ぶ、ドゥリーニ通りではヤマギワが、日本人6組を含む12組による新作コレクションを展示していた。

 ヨーロッパのプレスには障子戸を思わせるつくりや、それを開閉して明るさや光の形が調整できるおもしろさから川上 喜三郎のKISAWINGSに注目が集まっている印象を受けた。伊藤豊雄のMAYUHANA IIや堀木エリ子のSHIRABEなどの繊細なあかりや橋本夕紀夫のMOONBIRDが感じさせる木のぬくもりも日本的として好印象だったようだ。


川上 喜三郎のKISAWINGS伊藤豊雄のMAYUHANA II
堀木エリ子のSHIRABE橋本夕紀夫のMOONBIRD

 一方で、ヨーロッパのデザイナーと組んだ新作もおもしろい。英国のデザイナー、Paul Cocksedge(ポール・コックセッジ)の「Light As Ceramic」は、あかりを陶器の置き物に変えてしまった作品、そして「SWELL」は温度計をおもわせるおもしろい作品だ。パリ在住のアルゼンチン人、Pablo Reinsino(パブロ・レインシノ)は光の塔にも階段にもなる「STEPYSTEPS」を発表した。

 また、今回、吉岡徳仁はMoMA永久コレクションにもなった「Tear Drop」の小型LED版、「Tear Drop Mini」を発表していた。

 この他、Technical LightingとしてLUFINAシリーズやLED LINE PENDANTといった作品も展示されていた。LED LINE PENDANTは照明カバーガラスの形状によって拡散光と直接光が選べる。

Light As Ceramic
SWELLSTEPYSTEPS(左)

懐かしくも新しいMODIFY

 メーカー系の展示ではパナソニック電工の展示が注目を集めていた。同社は昨年同様、ミラノの中でも特にデザイン感度の高いブレラ地区で(standard)3展を開催。深澤直人、パトリシア・ウルキオラ、マルティノ・ベルキンツの3名のデザイナーとのコラボレーションだが、今年は「リラックス」をコンセプトにLED照明をはじめとした住宅用照明や新コンセプトチェアの展示に絞り込み、「デザイン」と「エコ・快適技術」の調和を目指した。

 展示の中心となったのは日本での発売が始まった深澤直人デザインのMODIFY。

MODIFYシリーズのデスクスタンド
MODIFYの展示

 「ちょっといいフツウ」を愛する深澤氏らしく、照明の原形(もっとも基本的な形)ともいえる「球(SPHERE)」、「半球(DOME)」、「円錐形(BUCKET)」の3つの形を出発点に、素材を見直し、細部のつくりこみ精度をあげることで環境や省エネに配慮した。ここには、人々は安心できる定番の形を求めるはずだが、そうした形の商品に現代の省エネや環境に対応した形に対応した光源を用いたものがないとして、定番の形を継承しながら、素材(樹脂製)、ケーブルの処理、スタンド、シェードのかたちのバランスや光の拡散むらなどを刷新している。

 もう1つの展示はRELAXATION LOUNGER。椅子内部の音響スピーカーとトランデューサー(音と連動して振動するシステム)で、体に心地よい揺れや振動、響きを与え、就寝前のひとときや休日などに心と体を安らげることを目指したチェアだ。発売検討中の製品だが来場者の評判はまずまずといったところか。展示会ではパトリシア・ウルキオラデザインの特別バージョンも展示していた。

 なお、マルティノ・ベルギンツが行なった会場構成は、「光の森」と名付けられたエントランスの展示がきれいで、これに寄せ付けられて中に入る人も多かったようだ。

 ちなみに、今回のサローネで、深澤直人は、同氏が立ち上げたブランド、「±0」が初出展を果たしていた。ヨーロッパでの展示は、これまでにも何度かあったが、実はサローネは今年が初めて、ということで、こちらも注目を集めていた。

ウルキオラがデザインしたバージョン
エントランス「光の森」深澤直人氏

有機ELで描き出された宇宙

エントランス

 一方、日本を代表するデザイナーの喜多俊之氏は「明るい未来を照らす光」をテーマにした「KITA. FUTURE DELIGHT」という独自イベントを開催して、照明の未来への提案を行なった。

 展示の中心は、新しい時代の光源として、有望視されているOLED Lighting(有機EL)で、多種多様のマテリアルをデザイン吟味しエコーサステイナブルな照明器具を提案した。

 エントランスの目の前を飾るのは「PLANET」と呼ばれる作品。地上を照らす太陽なのか、月なのか、「地球ごま」のようなフレームの中にハメられた有機ELが地上を照らし、その向かいには「COMET」と名付けられたアクリル製のテーブルスタンドが置かれていた。

 壁は和紙でつくられた「AWABI」という作品が静かに灯し、別の壁には有機ELの技術を解説するパネルも置かれていた。

PLANET全景PLANETクローズアップ
COMET
AWABI

 なお、照明ではないが、その他の日本企業としては三洋電機が、日本企業としては唯一、INTERNI誌主催のDESIGNENERGIES展に参加。ミラノ大学にMASSIMO RANDONEによってカラーリングされた同社のエアコンが展示されていた。





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(林 信行)

2009年4月27日 16:52