【IFA 2012】
パナソニック、2015年度に欧州で白物家電の生産拠点を稼働

~欧州での白物家電事業を1,000億円に上方修正
欧州市場向けに開発した洗濯機。パナソニックは2009年に欧州市場に参入、高付加価値としてのブランドを浸透させてきた

 パナソニックは、2015年度の欧州市場におけるアプライアンス(白物家電)事業の売上規模を1.000億円に上方修正するとともに、新たな白物家電の生産拠点を欧州に設置、2015年度の稼働を目指す考えを示した。

 9月2日、ドイツ・ベルリンで開催中のIFA 2012で、パナソニック アプライアンス社の高見和徳社長が明らかにした。


2015年にヨーロッパ市場で1,000億円の売上を目指す

 パナソニックは2009年に、欧州市場向けに開発した冷蔵庫、洗濯乾燥機を投入し、欧州の白物家電市場に参入。その後、エアコンを発売し、大型家電での展開を進めてきた。従来の計画では、2015年度に800億円の事業規模を見込んでいたが、このほど、調理家電や理美容製品を本格的に欧州市場に展開するのにあわせて、事業計画を上方修正し、売上規模を1,000億円とした。

パナソニック アプライアンス社の高見和徳社長

 パナソニック アプライアンス社の高見和徳社長は、「この2年間の取り組みのなかで、高付加価値ブランドとしての評価を得てきた。その点では予想通りの成果が出ている。年間売上高も400億円規模に拡大した。その実績をベースに、冷蔵庫、洗濯機、エアコンでの展開を継続的に主軸に置くとともに、新たな製品群の投入により、パナソニックブランドのさらなる浸透を図りたい」とした。

 2015年度の売上高1,000億円のうち、冷蔵庫、洗濯機、エアコンの主要3製品で約7割の売上高を占めるが、残りの3割で、日本で実績がある理美容製品、調理家電などが占めることになるという。

 「調理家電については、欧州向けにデザイン性を重視した『ブレックファースト』モデルを投入した。これは日本では発売していない製品。また、理美容製品では、欧州の人の髪質などを研究し、最適化した製品を開発する。パナソニックならではの技術力を生かした製品によって差別化を図る」とする。

 さらに、付加価値モデルの販売拡大に向けて、欧州の高所得層を中心として普及しているビルトイン型の製品を取り扱う販売ルートの開拓にも取り組み、欧州の白物家電市場において重要となるビルトイン型市場にも新たに乗り出す考えを示した。

 またその一方で、ODM(製造を受託した会社が、発注会社のブランド名で製品の生産・設計を行なうこと)を活用することで、冷蔵庫および洗濯機を中心として、普及価格帯ゾーンにまで製品ラインアップを拡充するという。

 「従来の付加価値ゾーンによる冷蔵庫、洗濯機、エアコンのビジネスに加えて、さらに製品の裾野を広げることでシェア向上につなげたい」とする。

 欧州のアプライアンス市場は市場規模で約4兆円と見られており、パナソニックが掲げる1,000億円の計画は出荷金額によるもの。市場価格から逆算すれば、欧州市場で3%のシェア獲得を目指すことになるという。

調理家電では、欧州向けにデザイン性を重視した『ブレックファースト』モデルを投入したドイツ国内の量販店でも、理美容製品の販売を本格化させる

欧州での冷蔵庫・洗濯機の生産を2015年にスタート。中国の生産より2割のコスト削減

 一方、欧州におけるアプライアンス事業の拡大に向けて、2015年度までの稼働を目指して、白物家電の生産拠点を設置する考えも明らかにした。

 現時点では、場所については検討中とするが、まずは冷蔵庫および洗濯機の生産を行なう拠点として稼働させる考えだ。

 「投資額は約80~100億円。今年8月に稼働したブラジルにおける冷蔵庫の生産拠点は、世界でもっとも軽い生産体制となっており、このノウハウを活用する。欧州の新たな生産拠点では、洗濯機、冷蔵庫ともに、年間100万台の生産規模を見込んでおり、欧州市場におけるコスト競争力を高めることにつながるだろう」としている。

 現在、欧州市場向けには中国で生産した冷蔵庫、洗濯機を流通させているが、欧州地区で生産することにより、物流コストや関税費用を削減できる。中国で生産するのに比べて、2割弱のコスト削減が可能になるという。

 パナソニック アプライアンス社の高見和徳社長は、「シェアを追うよりも、収益性を重視したビジネスを展開していきたい。さらに燃料電池にも範囲を広げ、パナソニックの技術力を前面に打ち出した事業展開を進めていく」とした。






(大河原 克行)

2012年9月3日 13:01