太陽電池の新製品が勢揃い

 今年12回目となった日本最大級の環境展示会、「エコプロダクツ2010」が12月9日~11日の3日間、東京ビックサイトで開催された。今年は「グリーン×クリーン革命! いのちをうなぐ力を世界へ」がテーマとなったが、昨年を上回る18万3,000人以上が来場するという盛況ぶりで、広い会場にもかかわらず、かなりの混雑となった。

 生物多様性をテーマにした展示やリサイクル、省エネほかさまざまなブースが並んでいたが、ここでは太陽光発電にテーマを絞ってレポートしてみたい。

太陽電池の大手メーカーが揃って出展

シャープ、京セラ、パナソニック/三洋電機、ソーラーフロンティア/昭和シェル、三菱電機、東芝と太陽光発電の大手メーカーが揃って出展していた

 エコプロダクツ2010ではシャープ、京セラ、パナソニック/三洋電機、ソーラーフロンティア/昭和シェル/三菱電機/東芝と太陽光発電の大手メーカーが揃って出展した。各社がみんな新製品や新発表を行ったというわけではないが、目立ったものを紹介していくと、まずはシャープが参考出品した新型の高効率単結晶太陽電池だ。

 変換効率が従来14%程度だったものを17.2%まで引き上げたというこの新型単結晶。従来型と横に並べて比較されていたが、見ればすぐに分かるとおり模様が異なる。そう、従来は受光面に電極が格子模様に置かれていたが、新型ではそれを裏に隠したため、前面が受光面となっている。さらに送電ロスを削減することで、効率を上げているのだ。実際の発売は来年度を予定しており、現行製品と比較すると、値段はやや高くなるとのことだった。

シャープが参考出品した新型の高効率単結晶太陽電池従来型(左)と比べると模様が違うのがすぐにわかる電極を受光面ではなく裏側に配置した新しい構造を採用

 そのシャープは、太陽電池セルとして世界最高の変換効率35.8%を実現する化合物3接合型太陽電池セルも参考出品していた。こちらは昨年同社が発表したものであるが、現時点でも他社に抜かれておらず、トップを維持しているという。さすがにコスト的に非常に高いため、住宅での利用は想定されておらず、現在のところ人工衛星などでの使用が検討されているという。

シャープが開発した変換効率世界最高の化合物太陽電池セル大きさは10mmほど

 京セラは多結晶シリコン型太陽電池モジュールとして、国内最高レベルとなる製品を発表した。これは、1,622×990×46mm(幅×奥行き×高さ)という太陽電池セル60枚を使ったモジュールで、238.1Wの出力を実現。太陽電池モジュールの変換効率でいうと約14.5%となるものだ。もっともこれは住宅用ではなく、公共・産業用とのこと。1MW以上の太陽光発電プラントを意味するメガソーラーなどでの需要に応えるためのものとして提案していくようだ。

 また同社では、ちょっと変わったコンセプトの太陽光発電製品である「ソーラーサイクルステーション」なるものの発表も行なっている。これは最近流行りの電動アシスト自転車の充電を行なうための“環境配慮型充電ステーション”で、公園などに縦置きで設置するというもの。1つ208.4Wの出力のモジュールを3つ並べて使う形になっており、曇りや雨、夜間などは商法電源からの充電も可能となっている。この切り替えなども行う制御盤とセットで189万円。自治体のほか、商用施設、企業、学校、ホテルなどに売り込んでいくとのことだ。

京セラの多結晶シリコン型太陽電池モジュール京セラが先日発表した電動アシスト自転車の充電を太陽電池で行なう「ソーラーサイクルステーション」

マンション向けの太陽光発電システム

 住宅用の太陽光発電システムは、通常一戸建てに設置するものとなっているが、ENEOS(JX日鉱日石エネルギー)はマンション用の太陽光発電システムを発表した。「マンション住まいなので、太陽光発電ができない」と嘆いている人にとっては嬉しい製品だ。標準的なシステムとしては6枚のモジュールを取り付け、1.26kWという比較的小規模なものだから、生活に必要な電気すべてを賄うのはなかなか難しいかもしれない。1.2kWという小型のパワコンおよびモニターもセットで100万円程度となる見込みだ。

 さらにいえば、これがあれば誰でも導入できるわけではないのが、世の中の難しいところ。そうマンションの場合、屋上やベランダは分譲された個人所有では なく、共有部分となるため、マンションの管理組合での合意を取り付けないと設置できないのだ。そのため、既築物件への取り付けよりも、マンションのディベ ロッパー向けに新築物件での取り付けを中心に提案していくとのことだった。なお、太陽電池モジュールは三洋電機(パナソニック)のHITを、パワコンには オムロン製のものを採用するなど、ENEOSが製品自体を自社開発しているわけではない。同社としてはシステムインテグレーター(システムの企画や構築、 運用などの業務を一括して請け負う企業のこと)としてマンションへの普及に力を入れていく模様だ。

ENEOS(JX日鉱日石エネルギー)のマンション用の太陽光発電システム一般的な戸建てに設置しているよりも、かなり容量が小さい1.2kWの小型のパワコン

 このように電力会社と売買電を行なう系統連系ではなく、独立型のシステムもいくつか展示された。そのひとつが、ネクストエナジー・アンド・リソースの「オフグリッドソーラー」だ。まさに「系統連系しないソーラー」というネーミングであるが、ウッドハウスやガレージ、また山小屋、さらにはキャンピングカーといったところでの利用を想定した製品を展開している。

 今回、ブースで展示されていたのも、小さな小屋の上に500Wの太陽電池パネルを設置したものだった。このパネル、油圧で設置角度を変えられるようになっているため、季節によって角度を変えればかなり効率のいい発電ができるというのもユニークなところだ。

 同社では2009年6月からオフグリッドソーラーのシステムの販売を行っているそうだが、基本システムとしては太陽電池モジュール(太陽光パネル)のほか、充電コントローラ、バッテリー、そして家庭用100Vの電源に変換するためのDC/ACインバータから構築される。80Wのシステム価格は86,800円となかなか手ごろだ。

ネクストエナジー・アンド・リソースの「オフグリッドソーラー」。小さな小屋の上に500Wの太陽電池パネルを設置しているネクストエナジー・アンド・リソースの基本システム。太陽光パネルのほか、充電コントローラ、バッテリー、そして家庭用100Vの電源に変換するためのDC/ACインバータから構築される

 太陽電池モジュールとしては40Wタイプから80Wタイプ、125Wタイプ、さらには24Vの充電容量となる125Wの製品などいろいろあって、自在に組み合わせることができる。それぞれ個別に購入でき、単品価格は結構安く、80Wの太陽電モジュールなら1つ29,800円といった具合だ。会場では「わけあり商品」としてネジ穴の位置を誤ってしまったパネルが、特別価格の23,840円で販売されていた。

 さらに手軽な製品として発表されていたのは、オンウェーブという会社の「ソーラースリムパネル SSP-15」という製品。これは360×580×10mm(幅×奥行き×高さ)で800gという軽くてコンパクトな太陽電池パネル。小さいながらも、集光型球面シリコン太陽電池を採用したことで、出力15Wとそこそこのパワーを持っている。USBおよび12V端子から各種機材への電力供給が可能とのことだ。発売は2011年4月を予定しており、価格は2万円弱になる見込みだ。

 さらに、この太陽電池を裏表に貼り付け、開くと倍の大きさになる30Wのシステムも2011年6月ごろにはリリースの予定。こちらは充電のためのリチウムイオン電池もセットとなり、6~7万円程度で出したいとのことだった。

「わけあり商品」として販売されていたネジ穴の位置を誤ってしまったパネル軽くてコンパクトなオンウェーブのソーラースリムパネル

太陽電池を使った子供たちの独創的な作品を展示

 一方、製品ではないが、見ていて楽しかったのが、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)による「第22回 新エネ・太陽電池工作コンクール」上位入賞作品の展示だ。これはNEDOが主催するアイディアコンクールで、小学生、中学生の2部門に分かれて作品作りをするというもの。

 会場ではその入賞作品がたくさん展示されていたのだが、一例を挙げると文部科学大臣賞を受賞した「ユーグレナ混声四部合唱」は中学1年生が作ったもの。音の高さに応じ、4つのポンプにスイッチが入り、タンクの水が早くなくなれば勝ちというゲームだ。ユーグレナ(ミドリムシの一種)は空気を送り込むことで培養が進むことから発想を得たもので、太陽電池はポンプと回路の電源に利用されている。

 また小学5年生が作った「サンシェードバッグ」は環境大臣賞を受賞した作品。これは駐車中にファンで車内の暑い空気を外に出し、携帯電話の充電も可能というバッグになっている。

音の高さに応じ、4つのポンプにスイッチが入り、タンクの水が早くなくなれば勝ちというゲーム。ポンプと回路の電源に太陽電池が利用されている夏の車内の暑い空気を外に出し、携帯電話の充電もできるという「サンシェードバッグ」

 さらに、小学3年生の作品「お日さま大好き水やりくん」は鉢植えが軽くなると自動で水やりを始め、重くなると水やりをとめるという自動水やり機。太陽電池で動くモーターでポンプの水をくみ上げるというわけだ。そのほかにも「自動芝刈り てんとうむしくん!」、「うわばきかんそうマシン」などなど子供のさまざまな発想の作品が展示されていた。

鉢植えが軽くなると自動で水やりを始め、重くなると水やりをとめるという自動水やり機「お日さま大好き水やりくん」てんとうむしの様な見た目がユニークな「自動芝刈り てんとうむしくん!」子供が日常的に使う上履きを乾かす「うわばきかんそうマシン」

家庭でできる風力発電システム

1.1kWの出力を持つゼファーの「Planet Home A Pack」

 最後は太陽光発電ではないが、家庭でできる風力発電システムの展示もあったので紹介しておこう。ゼファーの「Planet Home A Pack」は1.1kWの出力を持つ風車で、一般家庭で使うことを想定した機材。出力は風の強さにもよるが、1.1kWという表示ながら、風速20mでは4kWもの出力が可能というものであり、パワコンを経由して系統連系ができるので、太陽光発電と同様に生活で活用できる自然エネルギーによる発電なのだ。

 風車というと、かなり騒音があるのではとも思うのだが、一般的に問題になっているのは大きな風車による超低音。こちらは高速回転するので、出るのはもっと高い音だ。またその音も53dB以下と許容範囲内に収まっている。これはフクロウの羽をヒントに開発された、サイレントブレードという羽の構造によって騒音を抑えているのだ。気になる価格だが、風車、パワコン、コンクリートの支柱を入れて100万円強。モニターはオプションとなっているが、これを導入すれば発電量などが確認できるほか、LAN経由でパソコン上でのモニタリングやデータ管理も可能になるようだ。

フクロウの羽をヒントに開発されたサイレントブレードオプションのモニターでは、発電量を確認できるほか、パソコン上でのモニタリングやデータ管理もできるという

 以上、エコプロダクツ2010についてレポートしてみたがいかがだっただろうか。まだまだ発展途上の太陽光発電は、来年さらに大きく進化していきそうな予感がする。




(藤本 健)

2010年12月13日 14:50