シャープ、堺工場で新型単結晶太陽電池の量産を開始

シャープが開発した新型高効率単結晶太陽電池

 シャープは、新型高効率単結晶太陽電池の量産を、大阪府・堺市の「グリーンフロント 堺」において2010年度内に開始することを発表した。

 量産を開始するのは、同社が独自に開発した高効率単結晶太陽電池。受光面ではなく、裏面に電極を設けた独自の「バックコンタクト構造」により、セル表面の受光面積を広げたほか、電気抵抗を低減させる独自の配線技術を採用。また、電圧出力を向上させる「再結合防止膜形成技術」を新たに採用した。

 これらの技術により、変換効率は約17%。生産に平行して、さらなる技術開発を進めていくとし、最終的な目標変換効率を20%とした。

新型は太陽電池セルの構造が従来とは全く違う。従来タイプは電極が受光面と裏面にそれぞれ配置されていたが、「バックコンタクト構造」では電極を全て裏面に配置。表面に電極がないことで、影を減らし受光面を増やすことができるという左から現行の多結晶太陽電池モジュール、単結晶太陽電池モジュール新型(左)は表面に電極がないため、現行(右)と比べるとすっきりしている

 また、量産に当たって低コスト化にも注力した。独自の配線方法により表面にかかるストレスを少なくし、セルの薄型化を実現。これにより、材料となるシリコンを薄くすることができ、材料費を抑えられるという。

 堺工場で、年間生産能力200MWの量産を2010年度以内に開始する予定だという。

配線方法を改良したことで、セルにかかるストレスを分散。これによりセルの薄型化が実現したという改良により、本来ならば工程を増やさなければいけないところを、同時形成技術を用いてプロセスを従来程度とした

 会場では、今後の太陽電池事業戦略も発表された。シャープでは、グローバル事業拡大のため、欧州・米国市場に注力。新たに海外ソーラー事業推進本部を設立したほか、地域に合わせた戦略を進めていくという。具体的な内容としては、現地の会社と共同でイタリアに薄膜太陽電池工場を建設、またイタリアの大手電力会社と共同で独立発電事業を展開していくという。米国においては、大型発電事業において現地のディベロッパーが強い影響力を持つとして、米国のリカレント社を買収したという。

イタリアの会社と共同で、太陽電池生産工場合併会社を設立。イタリアに薄膜太陽電池工場を建設するというイタリアの大手電力会社と共同で独立発電事業を展開米国の大型発電事業においては現地のディベロッパーが強い影響力を持つとして、米国のリカレント社を買収したという

 同社では今後の事業拡大において、モジュール単体の生産・販売だけでなく、その後の施工や電力マーケットも含めた全体をカバーするバリューチェーンが重要だとし、地域のローカルプレーヤーと積極的に事業を進めていくとした。

 太陽電池の生産種類においては、結晶と薄膜の両軸戦略を今後も続けるとした。大規模な発電施設などに用いられる薄膜太陽電池は奈良県・葛城工場、堺工場、イタリア工場で生産。年間生産能力480MW体制を目指すという。住宅用・産業用に用いられる結晶太陽電池は2010年度中に堺工場で新ラインを稼働、750MW体制を目指す。

生産から施行、その後の電力売買まで全て対応できるバリューチェーンを拡大していくという大規模な発電施設などに用いられる薄膜太陽電池は葛城工場、堺工場、イタリア工場で生産。年間生産能力480MW体制を目指すという住宅用・産業用に用いられる結晶太陽電池は2010年度中に堺工場で新ラインを稼働。750MW体制を目指す
シャープ 常務執行役員 ソーラー事業統括 兼 ソーラーシステム事業本部長 大西徹夫氏

 シャープ 常務執行役員 ソーラー事業統括 兼 ソーラーシステム事業本部長 大西徹夫氏は、同社の太陽電池シェアについて「世界市場で見ると、シェアは約10%程度。今後太陽電池市場はさらに拡大を進めていくが、今のポジションを維持していきたい」と話した。また、現地の会社と共同で事業を進めていくことについては「太陽電池は、モジュールだけで売っているわけでなく、パワーコンディショナーとの組み合わせなど、ほかの機器との組み合わせが重要となってくる。現地と組んで仕事をすることで、システム全体のコストダウンができる」とした。

 また、今回の事業戦略では欧州や米国が中心になっていたが、アジア市場をどう見るかという質問に対しては「現時点で、アジア各国で余剰電力買い取り制度を行なっているのは、日本、韓国、タイの3カ国だけ。今後買い取り制度を始めるかもしれないという国はいくつかあるので、その時の需要に合わせて対応していく必要がある。ただし、市場規模だけを見ると現状ではアメリカが一番大きい」と答えた。





(阿部 夏子)

2010年12月1日 16:53