年末特別企画
【年末特別座談会】家電のプロ5名が本音で語る2018年の家電製品~炊飯器編
2018年12月28日 06:00
2018年も残すところあと4日。今年もさまざまなニュースがあり、目新しい家電製品が多く発売された。その締めくくりとして、日々家電製品を取材し、弊誌にも寄稿いただいている石井 和美氏、小口 覺氏、神原 サリー氏、戸井田 園子氏、藤山 哲人氏の5名にお集まり頂き、座談会を開催した。
座談会では、炊飯器、掃除機、洗濯機、エアコン、冷蔵庫の5ジャンルと、2019年の家電展望についてお話いただいた。司会は家電 Watch編集部の西村が担当。第1回では、炊飯器に焦点を当ててお送りする。
――2018年、炊飯器のニュースで印象的だったものはありますか?
戸井田 象印が出した「炎舞炊き」が、技術的に一番新しくなったと感じました。
藤山 「南部鉄器 極め羽釜」を捨てたというインパクトは強かったですね。
――象印といえば南部鉄器というイメージはありますよね。業界初の3つのIHヒーターにも驚きましたが、炎舞炊きを実際に使ってみると内釜がだいぶ軽くなったことに驚きました。南部鉄器の内釜が約2kgだったのに対し、炎舞炊きの豪炎かまど釜は約1.2kgを実現しています。
神原 扱いやすいですよね今回の内釜は。とても軽くなったと思います。
戸井田 あの3つのIHヒーターができたから、内釜も鉄にアルミとステンレスを組み合わせた軽いものになりました。3つのIHヒーターが独立して動かすローテーション構造は難しい制御なので、技術の進化も感じます。実際に炊飯器を買おうと店頭で見るときには、正直ピンとこない技術かもしれないけど、業界的には3つのIHヒーターの評価はとても高いです。
藤山 どんなに高い技術でも、結局ごはんは美味しくなるの? というところが大事ですよね。
石井 炎舞炊きで炊いたごはん、とても美味しくて私は南部鉄器よりも好きでした。
戸井田 もちもち系の食感は南部鉄器のときからですが、さらに甘みが出ましたよね。
小口 象印はフラグシップだけでなく下のモデルも、もちもちとした甘さのある味ですよね。うちが象印を使っているからかもしれないですが、象印っぽい味というのがあります。釜の素材もメーカーごとに違いますが、メーカーが考える美味しいお米というものも違いがわかりやすいです。
神原 甘みがあってもちもちとした食感は、象印のどのモデルでも特徴といえそうです。これまでは期間限定だった象印食堂も、大阪に常設店ができて力を入れているのがわかりますよね。炎舞炊きに合わせたブレンド米も店頭で販売していました。今後も、家電とそれに最適化した食材というのは、たくさん出てくるんじゃないかなと思います。
石井 タイガーの「とらひめ」もありますね。タピオカやこんにゃくなどを原料にした米粒状加工食品「とらひめ」、正直美味しいかと聞かれるとなんとも言えないですが、ヘルシーなごはんが炊ける炊飯器はインパクトがありました。
――私も食べましたが、ピラフやチャーハンにすると美味しかったです。あとはおにぎりも、冷めてもプチプチした食感が良かったです。白米の代替として食べるというよりは、チャーハンやカレーなど混ぜもので食べるのがオススメですね。
藤山 ダイエット系でいうとサンコーの「糖質カット炊飯器」がありますね。タンクがあって、炊飯中に糖質成分を含んだ煮汁を排出して糖質をカットするという。
戸井田 サンコー、炊けたごはん自体はあまり美味しくなかったのですが、残ったお湯の部分が美味しいですよ。ちょっと塩入れると重湯みたいで。
石井 赤ちゃんにもいいね。カロリーあるから離乳食に良さそう(笑)。
ごはんの食感、もちもちorしゃっきり? 好みによって変わる炊飯器選び
――少し前だと内釜の素材もトレンドでしたよね。南部鉄器だけでなく、備長炭を使った内釜や、本物の土鍋を採用した内釜など色々でした。
小口 釜素材競争というのは今後なくなっていくのかなとも思いました。
藤山 一段落した感じはあるよね。
小口 土鍋が最終的に美味しいみたいな風潮はありますからね。ただもうシロカが「かまどさん電気」を出したことで、土鍋が炊飯器になっちゃいましたけど(笑)
神原 シロカは先ほど挙がった象印のもちもち系とは真逆ですよね。ほろほろと口の中でほぐれるというか、しゃっきり炊きあがります。
小口 土鍋ごはんが好きな人は、かためのごはんが好きな人ですよね。
戸井田 メーカーさんから聞いた話ですが、生まれたときから成長期に食べたお米の味が一番美味しいと思うらしいですよ。だから実家の炊飯器が何を使っていたかで、美味しいと思うごはんが変わるらしいです。
一同 あ~~~。
――やわらかいごはんが好きな人と、かたいごはんが好きな人、好みが本当に分かれますもんね。
石井 私は三菱の「本炭釜 KAMADO」で炊いたごはんで作るチャーハンが好きなんですけど、もうこれじゃなきゃだめで(笑)。炊いたごはんはすぐに使わずに一度冷やすと、パラパラのチャーハンに仕上がってめちゃめちゃ美味しいんです。
藤山 三菱は唯一圧力を掛けていないメーカーだから、炊き方が全然違いますよね。うちもかためのごはんが好きなので、やっぱり三菱をよく使います。
――今年は各社、食感炊き分け機能を訴求していたイメージがあります。もちもちごはんも、固めのごはんも炊けますよという触れ込みが多かったと思いますが変化はありましたか?
石井 食感を変えられると言ってるけど、結局特徴はメーカーごとに寄っていると思います(笑)。
戸井田 元々かために炊ける三菱の炊飯器だと、やわらかめで炊いても象印のようなやわらかい食感にはならないですからね。
神原 私はなんだかんだで蒸気レスの本炭釜を使い続けています。今三菱が発売している炊飯器で蒸気レス機能があるのは別のモデルの「炭炊釜」なので、壊れないことを祈りながら本炭釜を使っています。
小口 僕は象印で炊くごはんが好きで、もうずっと象印ですね。
戸井田 うちは象印と三菱を、おかずに合わせて使い分けています。
――象印と三菱が人気ですね。私もしゃっきり系が好きなのですが、三菱はちょっとかたく感じちゃうので、しゃっきり炊けつつふんわり感や甘みとのバランスが良い、パナソニックの「Wおどり炊き」が好きです。
玄米やもち麦、古米が美味しく炊ける炊飯器
小口 最近は玄米食にしているのですが、象印は玄米も美味しく炊けるので気に入っています。炊飯前にしっかり吸水させる「熟成炊き」モードは炊飯時間が1時間半~2時間と掛かりますが、美味しく炊けますね。モチモチ、プチプチっとした食感になります。
戸井田 三菱も玄米美味しく炊けますよ。おにぎりにしても美味しいです。
神原 三菱は圧力をかけないのに美味しく炊けますね。熱の入れ方が特別というか制御が上手で、最初に玄米の表皮を弾けさせるようにしていて、冷めても美味しいです。あとはバルミューダで玄米を炊くのも美味しいです。さっぱりした食感だけど芯はなく、玄米派という訳じゃない息子がとても気に入っていました。
石井 玄米モードで炊くと炊飯器によっては白米のような食感にしようとして、べちゃっとやわらかいのに芯はあったり、逆にパサパサしたままだったり難しいですよね。
神原 バルミューダは白米に近づけようとせず、やわらかくなくさっぱりとしていますね。食感にムラがなく美味しく食べられます。
――小口さんは玄米食にしている理由はなにかあるんですか。
小口 夜に暴飲暴食しても良いように(笑)。整腸作用もありますし、腹持ちも良いので、お昼に玄米を食べておくと調子が良いですね。
藤山 もち麦もオススメですよ。腹持ちがいいです。
戸井田 もち麦は専用モードがあるタイガーが美味しく炊けますね。あとは唯一真空機能を搭載している東芝かな。真空状態で水を吸わせるので、早炊きや古米も美味しくなります。
――東芝は新モデルでさらに真空機能を強化していましたね。
戸井田 今年は各社、まっとうな進化をしたという感じですね。こうやって話していると、炊飯器はどこが良いというより、好みだなと改めて思いました。
――食感だけでなく、どういう使い方をするかによっても選ぶモデルが変わってきますね。ありがとうございました。
座談会では家電のプロに2018年の家電製品について振り返ってもらったが、読者投票で今年の1台を決める「家電大賞 2018」も開催中。まだお済みでない方はぜひご投票を!
→「家電大賞 2018」投票ページ
投票締め切り:2019年1月7日(月)23時59分