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男40にしてアイロン掛けを習う<ワイシャツ編>

 新年度に入り、自分の服は自分でアイロンを掛けるよう、妻から言い渡された。ということで40年間、アイロン掛けをしたことなど数えるほどしかなかった筆者もアイロンを使えるようになる必要に迫られた。

 そこで、40からの手習いではないけれど、これを機に正しいアイロンの掛け方を習っておこうと、アイロンのプロに教えを請うことにした。教えてくれたのは、パナソニックでアイロン事業を担当する巽 敦子氏。アイロンの基本から、シャツの正しいアイロン掛けの仕方を教えてもらった。

これさえ頭に入れておけばなんとかなる! アイロン掛けの「基本」

 まずは、アイロンを掛ける際は常に気をつけておくべき基本を、教えてもらった。

基本1 アイロン掛けの前に“手アイロン”
 アイロン掛けする前に、形を整えながらシワを伸ばしていく。しっかりと生地を手で触ることで、表面だけでなく裏側にシワができていないかを確認する。

基本2 アイロンに手を添えるくらいにして、力を入れすぎない(握らない)
 自重のあるアイロンは、上から下に押すような力を加える必要はない。手を添えて前方に動かすだけのために力を加える。また、力が入りやすくなるので、ギュッと握らない。

基本3 アイロンの先端を先にして、前方に滑らせる
 アイロンのとんがっている方を前にして、前方にのみ滑らせる。ゴシゴシという感じで、前後に動かすと不要なシワができやすい。

基本4 手でやさしく引っ張りながらアイロンを掛ける
 アイロンの進行方向にある縫い目を、少し引っ張るように手でつまむ。そのつまんだところを目指すようにアイロンを進めていく。

基本5 ゆっくりとアイロンをかけていく
 筆者の場合は、服の同じ場所をいつまでもアイロンを当てていると、服を焦がしてしまうんじゃないかと思い、サッサッサッとアイロンを動かしてしまう。だが、まず服が焦げることはないので、同じ場所を何度も往復するのではなく、ゆっくりとアイロンを動かして、ジワリとプレスしていくよう気を付ける。

 筆者は、この基本を聞いてから2週間が経つが、これだけでも頭に叩き込んでおけば、かなりピシっとアイロンが掛けられる。以上の5つを踏まえつつ、ビジネスマンの制服である「ワイシャツ」を例に、正しいアイロン掛けを指南してもらった。

ワイシャツの正しいアイロン掛けの仕方

 アイロン掛けの順番はいろいろとあるようだが、巽さんに教えてもらったのは「袖からカフス」→「肩ヨーク」→「身ごろ」→「襟」という順番。袖であれば、右手が先で左手が後。ヨークや身ごろも右から左への順でアイロンを掛けていく。

アイロン掛けの順番

 パーツ別の細かい注意ポイントは次の通りだ。

ステップ01 袖からカフス
 脇から伸びる縫い目を基準に、袖の形を整えてアイロン台に敷く。まずは、手でシワを伸ばしてあげる。シワやたるみがある程度なくなったら、まずは肩ヨークと袖の方に縫い目に沿って、アイロンの先端を動かしていく。その際、アイロンの進行方向の縫い目をつまんで、少し引っ張るようにしながらアイロン掛けすると、アイロンジワが出来にくくなる。

 この時に注意したいのが、欲張って肩ヨークまでアイロンを掛けようとしないこと。きちんと手アイロンで整えていないところまで欲張ると、シワになりやすいからだ。あくまでここでは、袖部分だけにアイロンを掛ける。また、最初は右の袖を、次に左をという順番でアイロンを当てる。

縫い目を基準に、袖を整えてアイロン台に敷いたら、手でしっかりとシワを伸ばす
縫い目に沿ってアイロンの先端を動かしていく
アイロンの進行方向をつまんで、シワを伸ばしながらアイロンを掛けていく

 袖が終わったら、次はカフス部分に移る。袖口を開いて、アイロンの先端を袖口に突っ込むように入れる。その後、袖口の合わせ目を手でつまみ、アイロンを左右に動かし袖口の内側をプレスする。最後に、袖口を合わせて軽くアイロンを当てる。

袖口を開いて、アイロンの先端を袖口に突っ込むように入れる
袖口の合わせ目を手でつまみ、アイロンを左右に動かして袖口の内側をプレスする
袖口を合わせて軽くアイロンを当てる

ステップ02 肩ヨーク
 肩ヨークが開くようにワイシャツの肩部分を、アイロン台の端っこに突っ込むように入れる。たいていのアイロン台は、左右どちらかが細くなっているので、そのエリアを利用するとよい。

 手で肩ヨーク部分のシワを伸ばす。特に首周りを伸ばすためには、襟を立ててあげると、伸ばしやすい。あとは、アイロンをヨークの袖寄りの方から、襟元に向かって掛けていく。この時も、右ヨークの次に左ヨークの順で行ない、全体のシワを中央に寄せていく感じでアイロン掛けするとよい。

肩ヨークをアイロン台に差し込むようにセッティングしたら、手でシワを伸ばす
肩ヨークの袖側(外側)から襟元(中央)に向かってアイロンを掛けていく

ステップ03 身ごろ
 一番ダイナミックにアイロン掛けできそうな身ごろ。ここもまずは手アイロンでシワをしっかりと伸ばす。この際、特に肩ヨークとの接続部分を伸ばしておくのがポイント。この立体縫製になっている部分は、ワイシャツの肩をすぼめるような雰囲気にして、身ごろ部分を平らにしていく。

 あとはアイロン。最初に難所である肩ヨークとの接続部分を掛けていく。他と同様に、進行方向にある縫い目をつまみながらプレスしていく。このエリアが終わったら、ボタンの並んでいるエリアを、ボタンを避けながらアイロンを動かしていく。

袖や肩ヨークとの接続部分を、特に気をつけながら手で平らにする
袖や肩ヨークとの縫い目に沿って、アイロンを掛けていく
ボタンを避けながら、身ごろの全体をプレスしていく
右の前身ごろ→後身ごろ→左身ごろの順でアイロンを進める。特に最後の左身ごろのボタンを止めるラインは丹念にアイロンを掛ける

 ワイシャツのポケットは、無造作にアイロンを掛けるとシワができてしまう。まずはポケットの右端から真ん中をプレスし、次に左端から真ん中をプレス。シワをポケットの真ん中に集めるようなイメージでアイロンを掛ける。

 また、左前身ごろのボタンを留めるラインが、ワイシャツで一番目立つエリア。ピシッとしているかどうかが、ワイシャツ全体のイメージを左右する。そこで、この部分を特に念を入れつつ、ゆっくりジワジワとアイロン掛けしていく。

4.ステップ04 襟
 襟は、服を着た時に、外側になる方を表にして、手アイロンを掛ける。ここも前述のポケットと同じように、一方の端から中央に向かった後に、もう一方の端から中央へとアイロンを掛けていく。

服を着た時に、外側になる方を表にして、手でシワを伸ばす
襟の右端から中央に向かってアイロンを掛ける
今度は左端から中央に向かってプレスしていく

 上で書いたこととは別に、頑固なシワを取るためには霧吹きで服を湿らせると、よりスムーズにシワが消えることも教わった。アイロンにスチーム機能が搭載されていれば、シワの目立つところにスチームを吹きかけるのもいい。

ハンガーに掛けるか、折り畳んで完成。折り畳んで収納する場合は、ビニール袋に入れておくと、よりキレイに保管できる

 また生地は熱いとシワになりやすいという。そのため、アイロン掛けが終わったらバサッと置いておくのではなく、襟の形をしっかり整えて第一ボタンを留め、パタパタとよく振ってあげると良いという。パタパタと振ることで、こもった熱が早く冷めて、変なシワが出来にくくなるという。

今回、使ったアイロンは前後に動かしてもシワができにくい

 今回のアイロン講習で使ったアイロンは、パナソニックの「Wヘッドアイロン カルル NI-WL703」。同社の多くのアイロンがそうであるように、アイロンの前後がとんがっている。そのため、どちらの方向に動かしてもシワができにくいのが特徴だ。特に前後に動かしてしまいがちな初心者でも使いやすい。

Wヘッドアイロン カルル NI-WL703
アイロン面には32の穴が空いている

 また、スチーム機能が充実している点もポイント。本体の裏面を見ると、スチームの吹き出し口が、本体裏側の全面にまんべんなく32の穴が空いている。この穴が多いほどアイロン面の全体からスチームが出て、むらなくキレイに吹きかけられるという。マイクロスプレーが搭載され、特に頑固なシワが付いてしまっている部分には集中的にかけられる。

あとは基本を守って、アイロンをかけまくって経験値を積むのみ

 あとは、教えてもらったことを守りながら、アイロン掛けの経験値を積んでいくのみ! 何も考えずに自己流でやっていた時よりも、格段に仕上がりがキレイになる。

 また、そうした目に見える効果により、アイロン掛けが苦痛ではなく、楽しくなってきた。なんでも上達していくっていうのは、楽しいものだ。

河原塚 英信