家電製品ミニレビュー

ロボット掃除機対決第2話 壁際の掃除力や運転音を検証

家具が多いLDKで最新機種の性能をチェック

 前編では、四角い部屋でなく、リビングダイニングとキッチンが、廊下でつながっている一般的な間取りでもロボット掃除機がキレイにできるかを調べた。

 実際生活しているLDKで各機種の動きと掃除力をチェックした前編は→コチラから

 実験した機種は、2014年に発売された次の3機種だ。

メーカー名ミーレ東芝ライフスタイルiRobot
製品名Scout RX1トルネオロボルンバ880
購入場所ビックカメラビックカメラビックカメラ
購入価格76,640円73,120円64,593円

・ミーレ:Scout RX1
 Scout RX1はドイツの一流家電メーカーで、Scout RX1は同社初のロボット掃除機。部屋をコの字型に最短距離で走行する精度の高さや、障害物の回避性能が素晴らしく、およそ15分で掃除を終えた。しかし取り残したゴミも多く、集塵率も他に比べて半分以下という結果に終わった。

ドイツ生まれのScout RX1は、部屋の形や現在位置を上部カメラで認識して、コの字型を描き合理的かつ最短ルートで部屋を掃除する
本体上部にあるカメラ。天井を撮影し、そのエッジから部屋の間取りを割り出したり、シーリングライトとの位置関係から、自分の場所を割り出していると思われる

・東芝:トルネオロボ(VC-RVD1)
 以前の東芝製のロボット掃除機は「スマーボ」というサムスンのOEMブランドだったが、設計を一新。ブランドも「トルネオ」に変え、その本気っぷりを見せてくれた。部屋を十字と×字に走行して清掃し、壁ぎわやイスの足回りなどは、速度を落としてギリギリまで掃除する姿が印象的だった。ただフィルターの目が荒く、小麦粉のようなパウダー状のゴミは、排気と一緒に部屋に飛散させてしまうのが弱点だ。

触覚のような2つの集塵ブラシが長く、飛び出している付け根の部分は引っ込むようになっていて、壁ぎわをピタリとトレースする
集塵ブラシの付け根が飛び出しているので、壁ぎわなどにブラシが届きやすい
バンパーセンサーは小さく軽くなったので、障害物に対する反応がいい

・iRobot:ルンバ880
 発売から12年。圧倒的シェアを誇るロボット掃除機の代名詞。メーカーのiRobotは米国のロボット専業メーカー。ルンバ880は、シリーズ最高峰のモデルで、髪の毛や糸ゴミが絡まない吸い込み機構や、従来型の5倍もある吸引力を誇示する実験結果となった。砂粒大の大きなコーヒーから、パウダー状のゴミまで、しっかり濾し取る高性能フィルター、そしてロボット専業メーカーのノウハウが詰まった走行パターンで一番床をキレイにできた。清掃後に裸足で歩いても、取り残しのゴミのツブツブ感じられないほどだ。

前編の清掃実験では、一番床をピカピカにできた。ゴミの多いところを集中して掃除したりと、状況を判断しているかのように細やかな動きをみせる
ダストボックスにある高性能フィルターは、パウダー状のゴミまで濾し取る。しかし、吸引力が衰えることはない
ルンバ880独特の2本のゴムローラーを加えた吸引機構。髪の毛や糸ゴミがまったく絡まない

 前回は、部屋全体の床掃除をしたときの性能を比較し、ルンバ880がその性能差を見せ付けた。今回は壁ぎわやコーナーの掃除力や、運転音など詳細について見てみよう。

ロボット掃除機が苦手なコーナーを一番キレイにできるのは東芝のトルネオロボ

 前編では、ロボット掃除機が苦手な「乗り越えられそうで乗り越えられない微妙な段差」を紹介したが、清掃面での苦手な部分がある。それが壁ぎわや部屋のコーナーだ。

 本体を壁に引っかけず、かつ壁ぎわギリギリを掃除するのは、技術的にも難しく、各社の特色がよく出る。まずは、前編で行なった清掃実験後の壁ぎわを見てもらおう。

青線枠内が掃除した部分。緑色の線は家具を示し、色が塗ってある家具は掃除機が潜り込めないもの。ピンクはテスト用のゴミを設置した箇所

 今回の清掃実験では、部屋に対して斜めのテレビ台の前と、廊下の壁ぎわの様子を見た。また部屋の角は、廊下一番奥の角と、リビングダイニングの家具でできた角の2カ所をテスト。計4カ所にコーヒーかすを撒き、どのぐらいキレイに掃除できるかを調べた。

・ミーレ:Scout RX1
 前編で紹介したとおり、Scout RX1は部屋の形を認識し、壁ぎわスレスレをまっすぐ直進する賢さを見せるが、かなりのゴミを取り残してしまった。

集塵ブラシの回転痕が残っており、壁ぎわまでブラシが達していたのが分かる。しかしゴミは取りきれていない
斜めのテレビ台ぎわも直進して賢さを見せるが、ゴミは取りきれていない
壁ぎわをまっすぐ走行するので、前方の集塵ブラシで中央に集められなかったゴミは、ブラシから本体側面の5cmほどの隙間(写真の矢印の箇所)に残るようだ

 吸引力が弱いという可能性もあるが、ゴミが残っている幅は、ちょうど本体側面からブラシまでの隙間と一致しており、集塵機能にも改良の余地がありそうだ。2カ所に設けた、部屋のコーナーも幅5cm程度の取り残しがあった。

ダイニングの家具と壁でできたコーナー。清掃の痕跡はあるが、取りきれていない
廊下の一番奥も同じように取り残している

・東芝:トルネオロボ(VC-RVD1)
 東芝のトルネオロボは、前編でパウダー状のゴミが取れないという弱点を呈してしまったが、壁ぎわではそれを払拭する高機能さを見せつけてくれた。

斜めのテレビ台の前もスッキリきれいに吸い取っている
廊下側。若干ゴミを弾き飛ばしてしまった感もあるが、キレイに清掃できている
2カ所のコーナーもキレイに掃除できている

・iRobot:ルンバ880
 部屋全体のキレイさはダントツで1位だったルンバ880だが、壁ぎわは少々取り残しがあった。

Scout RX1ほどではないが、取り残しのゴミが点々と残っている
こちらもScout RX1ほどではないが、取り残しがあった
コーナーもわずかだが取り残しがある

 前編のムービーを見ると、トルネオロボもルンバ880も同じような走行パターンで清掃していた。それにも関わらず、なぜこの差が出たのか不思議に思い少し観察してみた。基本的に両機種とも、壁ぎわは直線的に動くがその違いは、飛び出している集塵ブラシと、微妙に違う壁ぎわの走行パターンにあるようだ。

壁ぎわに沿って清掃するが、ルンバ880の動きは少し大きめ
トルネオロボは細かく動いて、出っ張った集塵ブラシが確実に壁ぎわを捉えている

 ほんのわずかな走行パターンの違いだが、結果には大きく影響するようだ。また、これまでになかった「可動式で出っ張た集塵ブラシ」という革新的なメカの働きも大きい。これにより壁ぎわの掃除では、東芝のトルネオロボが圧倒的なキレイさを誇っている。

逆光など障害物の多い窓ぎわの清掃

 透明なガラスのサッシ、アルミサッシの段差、半透明なレースのカーテン、そして強い逆光の日差し。窓ぎわには、ロボット掃除機を誤動作させる要因がたくさんある。そこで壁ぎわの次に清掃が難しい、窓ぎわの挙動も調べてみた。

窓ぎわの掃除は、サッシの段差に透明なガラス、レースのカーテンに逆光と、ロボット掃除機の誤動作を引き起こす要因がたくさんある
トルネオロボ。上部の黒い帯の部分には赤外線センサー、下の穴が開いている部分が超音波センサー。赤外線センサーの感度が鈍る透明や真っ黒の障害物でも、超音波で見分けられる
左はScout RX1の赤外線センサー。右はルンバ880だが、Scout RX1とほぼ同じ場所に赤外線センサーがあり、サングラスのような透明樹脂で隠されている

 結論から言うと、障害物の探知に超音波センサーも併用しているトルネオロボ、赤外線センサーのみのルンバ880とScout RX1という違いがあれども、段差に落ちたり逆光で誤動作したり、ガラスを見分けられないなどの問題は、3台ともなかった。

 違いが見られたのは、レースのカーテンだ。Scout RX1はレースのカーテンを障害物とみなして回避したが、他のロボット掃除機はカーテンの下にもぐりサッシまで清掃していた。

Scout RX1は、レースのカーテンを障害物とみなし回避していた。ただしカーテンの素材によっても違いが出ると思われる
ルンバ880とトルネオロボは、レースのカーテンを障害物らしきものとして減速し、サッシ際まで清掃していた

運転音はScout RX1がいちばん静か、トルネオロボとルンバ880は互角

 ロボット掃除機は、外出している昼間に自動で掃除させるため、運転音の静かさが問題になることはない。しかし休日では、どうしてもテレビを見ている間に掃除させたいなど、運転音が気になる場合もある。そこで3台の運転音の大きさを調べてみた。

 3台ともキャニスター式の掃除機よりも音は静かだったが、一番静かだったのはScout RX1。ゴトゴトと走る走行音(低い音)も小さく、吸引音(高い音)も静かなので、テレビの近くにいればボリュームを上げなくても内容が聞き取れる。

左側は低い音の成分の大きさ、右が高い音の成分の大きさ。山が高いほどその成分の音が大きい、Scout RX1は100Hz付近の床をゴトゴト走る走行音が小さい
Scout RX1のトレッドパターン(タイヤの溝)のみ他とは違うのが静かな要因だろう
ルンバ880とトルネオロボのトレッドパターンは同じ

 トルネオロボとルンバ880の運転音は、まったく同じと言ってもいいほど。テレビのボリュームは2~3段階ほど上げないと、内容が聞き取れない場合もある。

トルネオロボとルンバ880の運転音はほとんど同じ

髪や糸ゴミが絡まないルンバの秘密に迫る

こうなってしまうと、解くのが大変。ハサミやカッターで切るほかない

 3台のロボット掃除機だが、これまでに類を見ないルンバ880の特徴的な吸い込み口に興味を持たれた方も多いだろう。ロボット掃除機に限らず、キャニスタータイプの掃除機など回転ブラシを持つ掃除機は、ゴミがよく取れる反面、髪の毛や長い糸がブラシに絡まるためお手入れが大変だ。いったんブラシに絡まると、手でほぐすのは不可能で、カッターやハサミでブラシを傷つけないように髪の毛などを切るほかなかった。

 ルンバを開発しているiRobot社は、古くからこれを問題視していて、専用リッパーの「お手入れカッター」なるものを添付していたほどだ(筆者は同社以外でリッパーを同梱していたメーカーを知らない)。

 しかしルンバ880は、ゴムのような素材を使ったブラシを採用し、髪や糸の絡まりをなくしたのだ。そのため「お手入れカッター」が不要になった。しかも、これまでの実験から分かるとおり、吸引力や集塵力も上がっている。

ルンバ880で導入された新しいブラシ。ブラシの毛がないので、髪の毛や糸が絡まりにくい
左がScout RX1、右がトルネオロボのブラシ。ロボット掃除機に限らず、ブラシを備える掃除機は、みんなこのように絡まってしまってお手入れが面倒だ
2本の特殊素材のローラーが、ひし形状に外側から中央へゴミをかきよせるという

 iRobotの説明によれば、ローラーに付いた小さな突起の配置に秘密があるという。2つのローラーの突起は歯車のように、うまく噛み合うようになっていて、ブラシ自身がゴミをたたき、浮き上がらせながら引き込む力を持っている点だ。こうして砂などのゴミをより多く吸引できるようになったほか、糸の端を引っ掛けると、ローラーの引き込む力で、髪の毛や糸が絡まらずに吸引できるというワケだ。

誰にもでオススメできオールマイティなiRobotのルンバ880

 前後編でお届けした2014年発売のロボット掃除機、Scout RX1、トルネオロボ、ルンバ880だが、総合評価をして終わりたい。

 テストしてわかったのは、どの製品も充分掃除してくれるということ。ロボットが掃除するなんて……とまだ不安に感じる人もいただろうが、今回試した3機種はいずれも、人と同じ、いや人以上に丁寧に時間をかけて室内をキレイにしてくれた。ロボット掃除機の選択肢がこれだけ増えてきた今は、買い時だといえるだろう。

 ただし、価格や賢さや清掃力などには差があるので、ロボット掃除機に重要なポイントを間違えずに、適したものを選んでほしい。

進入禁止や複数の部屋を順次清掃させるお部屋ナビ(バーチャルウォール機能付き)も2個付属している

・高性能で誰にでもオススメできるルンバ880
 弱点は、壁ぎわとコーナーのゴミをわずかに取り残してしまう点だが、それを完全に帳消しできるほど、部屋全体の床をきれいにできる。ロボット専業メーカーの高度な技術で賢く動き、高性能フィルターと高い吸引力で、パウダー状のゴミもしっかり清掃。色んなゴミで床が汚れがちなファミリー層にはピッタリだ。またブラシに絡んだ髪の毛にウンザリ……というヒトにもぜひオススメしたい。

掃除を終えると充電台に戻り、充電台のダストボックスに自動的にゴミが回収される。そのため他より充電台が大きい

・一人暮らしでなるべくラクしたいならトルネオロボ
 そもそも学校や会社にいることが多く、自室を掃除しても綿ゴミが出る程度という場合は、トルネオロボがオススメだ。弱点はフィルターが荒くパウダー状のゴミが取れない点だが、一人暮らしなら小麦粉をぶち撒けたりしない限り、実用上問題ない。

 また、掃除を終えて充電台に戻ると、自動的に充電台のダストカップに本体のゴミが吸い込まれ、1カ月ゴミ捨て不要という点もポイントだ。男性の一人暮らし、単身赴任のお父さんにオススメしたい。

賢い走行パターンと早さが魅力のミーレ。進入禁止をマークするゴム磁石も添付されている

・静かにサッと掃除したいならScout RX1
 本格的な掃除は別にやるとして、事務所や教室の空き時間にサッと軽く掃除させるならミーレがいい。他が1時間以上かけてする床掃除でも、ミーレなら合理的で最短ルートを走行するので20分もかからない。しかも運転音が静かなので邪魔にならない点もいい。

 弱点は、吸引力が弱い点とゴミの取り残しが多い点だが、ちゃんとした掃除は別にやるという場合や、ターボモードで吸引力を強くすることで解決できるだろう。

藤山 哲人