家電製品ミニレビュー

パナソニック「ラムダッシュ ES-ST23」

~ウェットシェービングできる、実売7千円の防水シェーバー
by 正藤 慶一
パナソニック「ラムダッシュ ES-ST23」

 家電量販店のシェーバー売り場には、数多くのメーカーの製品が並んでいる。しかし国内大手メーカーに限れば、もっとも広い売り場面積を占めているのはパナソニックだろう。何しろ、2011年の量販店における販売数シェア(GfK調べ)は42%でトップ。2位ブラウンは24.1%、3位日立は9.9%だから、圧倒的な数値だ。

 そのパナソニックのシェーバーといえば、高級モデル「ラムダッシュ」シリーズが代表。実売で4万円もする専用洗浄機が付いた5枚刃モデルから、1万円クラスで買える3枚刃モデルまで、商品ラインナップは続々増えている。

 今回はその中から、今年5月に発売された3枚刃モデルの「ES-ST23」を紹介しよう。 


メーカーパナソニック
製品名ラムダッシュ ES-ST23
希望小売価格オープンプライス
購入場所Amazon.co.jp
購入価格7,268円

コンセプトはT字カミソリのような感覚で剃れる“カミソリシェーバー”。そのため、写真のような「ペングリップ」の持ち方もできる

 ES-ST23の特徴は、T字カミソリのような感覚でヒゲを剃る“カミソリシェーバー”をコンセプトとしている点。浴室でも使えるよう防水設計で、またヘッドの角度を従来モデルの15度から30度に変更することで、本体をT字カミソリのように握る“ペングリップスタイル”に対応している。

 ラムダッシュとしてはエントリーモデルのシェーバーのため、量販店やネット通販では、7千円台と割と手軽な価格で売られている。しかし剃り味は、ラムダッシュシリーズらしい確かなものだった。


購入しやすい価格だけど「Made in 彦根」

パッケージの「3」は、3枚刃であることを表している

 到着したパッケージ内からは、ES-ST23本体、充電スタンドとACアダプター、シェーバーホルダー、専用オイルと掃除用ブラシが出てきた。シェーバー自体は特に大きくもなく小さくもない印象だが、横から見ると外刃に30度ほどの角度が付けられている。電気シェーバーでここまで曲がった製品は、昔は三洋電機の“PULL剃りシェーバー”というものがあったが、最近はあまり見られない。ちなみに重さは約145gで、とても軽い。

 本体カラーはホワイト、ブラック、レッドの3色が用意されるが、今回はシェーバーの広告や商品ページでよく使われていたレッドを選んだ。本体の素材はツルンとした樹脂製で、高級感はさほど感じられないが、パナソニックの彦根工場で生産されたMade in Japan製品だ。

 シェービング機能では、毎分13,000ストロークのリニアモーターによる高速駆動、内刃の角度が30度と鋭い「30°鋭角ナノエッジ内刃」、丸みを帯びた外刃で肌に密着しやすい「マルチフィットアーク刃」を備える。エントリーモデルなので、最高級モデルで搭載されている5枚刃や、肌の曲面に合わせてヘッドが自由に動く「全方位フロートヘッド」、洗浄充電器などは省かれている。

パッケージ内容は、本体とACアダプター、充電スタンド、ホルダー、オイル。写真に写っていないが、掃除用ブラシも付属するラムダッシュシリーズを製造するのは、滋賀県彦根市のパナソニック彦根工場。「Made in Japan」の文字も確認できる本体を横から見たところ。本体のボディ部に対して、ヘッド部分が大きく傾いている
外刃は3枚刃でステンレス製内刃は2枚。先端はラムダッシュシリーズの特徴である鋭角3枚刃
外刃の中央部に適度な膨らみをもたせた「マルチフィットアーク刃」も採用。肌の柔らかい部分にも密着しやすいというきわ剃り刃も搭載する

充電はスタンド専用。交流式は使用できない構造に

充電スタンドに本体を設置しているところ。写真は後述のホルダーを装着した状態

 さっそく剃り味を試してみたいが、まずは内蔵バッテリーを充電しよう。バッテリーは容量600mAhのリチウムイオン電池で、約1時間で充電が完了する。フル充電なら約14日間使えるという。

 面白いのが充電方法だ。これまでのシェーバーは、シェーバー本体の“お尻”の部分にACアダプターを指して充電する製品が多かったが、本製品ではお尻に差し込み口がない。ではどうやって充電するかというと、付属の充電スタンドだ。充電スタンドにACアダプターを差し込み、シェーバー本体をスタンドに差し込むと、本体側面の端子とスタンドの端子が接触し、充電が自動的にスタートする。

 そのため、ACアダプターを本体に繋ぎながら使用する“交流式”は、構造的に不可能となる。これは浴室で使う製品であるため、コンセントの付け替えなどで感電してしまうのを防ぐための配慮だろう。

ホルダーに立たせることで、本体側面の端子とスタンドの端子が接触し、充電がスタートする本体にはACアダプターの差込口がない

 もう1つの付属品「シェーバーホルダー」も面白い。本体にはめることで、外刃を保護しながあら、縦置き・横置きに対応する。ホルダーを装着したまま充電スタンドに立たせることも可能。また、本体中央の電源ボタンも保護するため、バッグに入れても誤作動が防げる。旅行や出張時には重宝しそうだ。

外刃と電源ボタンを保護するシェーバーホルダー縦にも置ける。スペースの狭い洗面台にはピッタリだろう

パワフルなシェービング能力。お風呂剃りならさらに剃りやすい

 充電も完了し、いよいよシェービングを開始する。まずは、シェービング剤や石鹸などを使わない、いわゆる「ドライシェービング」でスタートした。

ドライシェービングで頬のヒゲを剃ったところ。しっかりと剃れている

 夏休み中でヒゲが伸び放題だったので、エントリーモデルではそう簡単には剃れないだろうと思っていたが、意外とパワフル。頬・鼻下・顎と、ジョリジョリと剃ってくれる。それもそのはず、ES-ST23のリニアモーターによる毎分13,000ストロークは、最高級モデルの毎分14,000ストロークよりも毎分1,000ストローク少ないだけ。毎分7,000~8,000ストロークの回転モーターとは根本的なパワーが違う。また、ステンレス製の外刃や鋭角30度の内刃なども、最高級モデルで採用しているものと同じ。エントリーモデルではあるが、れっきとしたラムダッシュシリーズのひとつなのだ。

 ただ、顎下部分はちょっと剃りにくかった。ヘッドが固定で、顎の曲面にスムーズにフィットしないせいか、何度も往復することになった。結果的に剃り負けすることなく良く剃れたものの、ちょっと物足りない印象だった。

 今度はお風呂でのウェットシェービング、いわゆる“お風呂剃り”に挑戦。顔に石鹸をつけ、そのままシェービングをスタートする。こちらも休み中にヒゲが伸び放題だったが、石鹸でヌルヌルと滑るため、顎下もスムーズにシェービングできる。本体の持ち方を「ペングリップ」にすればさらに剃りやすくなった。

防水仕様のため、お風呂でのウェットシェービングも可能こちらは顎下のヒゲも剃ってみたところ。石鹸の滑りでスムーズに剃れた

 お風呂剃りで良いのが、シェービング後の手入れがしやすい点。本製品では、外刃の下にある「洗浄切替シャッター」を開けて水を流すことで、わざわざ外刃のカバーを取り外さなくても、カバーの中のヒゲが洗い流せる。たったそれだけのことだが、これは本当にラク。手入れを面倒くさいと感じてしまう私にとっては、「待ってました!」といった機能だ。

 最終的には、ドライシェービングもお風呂剃りも同様にキレイに剃れた。スムーズな剃り味とシェービング後の爽快感が味わえて、しかも手入れもしやすいので、お風呂剃り専用機として使いたくなった。

シェービング後の外刃のケース内。ヒゲの剃りカスが溜まっているでも本製品なら、ケースを取らずに掃除できる。まずは、外刃の下にあるシャッターを下げる
あとは写真のように水で流すだけ結果はご覧のとおり。ものすごく簡単に手入れできた

ちょうど良い価格と確かなシェービング能力

 単体としては十分なシェービング能力を備えた製品だが、さすがに最高級のラムダッシュ5枚刃モデルと比べると分が悪い。何しろ5枚刃モデルは、肌に当たる面積が広いため、もっと速くカットできるし、顔の曲線にフィットするヘッド「全方位フロートヘッド」により、顎下もスムーズに剃れる。シェービング後も、5枚刃モデルの方がザラザラ感は少ない。価格は2万円以上するものが多いが、能力だけで選ぶのであれば、素直にラムダッシュ5枚刃モデルを選ぶべきだ。

 しかし本製品は、7,000円台という購入しやすい価格ながらも、ラムダッシュシリーズならではのパワフルなシェービングができる、バランスの良さが特徴だ。そういう点では、予算を節約したいけど、シェービング能力は落としたくない方、旅行用の2台目が欲しい方、電動シェーバーの初心者には、ちょうど良い価格とシェービング能力に満足していただけることだろう。






2012年8月29日 00:00