家電製品ミニレビュー

パナソニック「ビューティ・トワレ DL-WE40」

~賃貸住宅でも自分で設置できる温水洗浄便座
by 瀬戸 学
パナソニック「ビューティ・トワレ DL-WE40」

 多くの外国人が日本を訪れて驚くのが、温水洗浄便座だという。映画「カーズ2」のジョン・ラセター監督も来日した際、温水洗浄便座に驚かされたと言っている。しかし一度使ってしまうと、すっかりやみつきになってしまう。それが温水洗浄便座だ。

 筆者も温水洗浄便座ファンの一人だが、あいにく以前のアパートでは、風呂トイレ一体式のユニットバスだったため、コンセントが確保できず、泣く泣くノーマル便座を使っていた。そしてまったくもっての私事だが、この度引っ越しをし、ついに洗浄便座が取り付けられるようになったのだ。

 エアコンさえもまだ付けていないが、なにはともあれ洗浄便座である。しかし一概に洗浄便座と言っても、その種類は豊富で、価格も実売で1万円台前半から10万円を越すものまであり、まさにピンキリである。

 最近の洗浄便座のもっとも基本的な機能は、暖房便座とおしり洗浄、ビデ洗浄だ。これに温風機能や便座のフタ(以下、便フタ)の自動開閉などがグレードによって追加される。また、価格帯を大きく分けるのが、洗浄の際に使う水を事前にタンク内に温めておく「貯湯式」と、使用時に瞬間的に暖める「瞬間式」の違いだ。後者の方が消費電力は少ないが、本体価格は高くなる。

 個人的には温風機能まではいらないが、消臭機能は欲しい。そして貯湯式か瞬間式かは悩ましいところだが、やはり今のご時世、節電は重要である。ということで瞬間式で消臭機能付きのものの中から、今回はパナソニックの「ビューティートワレ DL-WE40」を購入した。


メーカーパナソニック
製品名ビューティ・トワレ
DL-WE40
購入場所Amazon.co.jp
購入価格42,792円

 調べてみると、特に省エネ性能が高そうなのが、パナソニックのビューティ・トワレシリーズだった。このシリーズは洗浄用の温水を瞬間で温めるだけで なく、便座も瞬時に暖めるとのこと。確かに普段あまり家にいる時間も長くはないところで、便座を暖め続けているというのは無駄の極みだ。ちなみに現在は TOTOからも同様の機能を持った商品が登場したが、筆者が探している時点ではパナソニックしかなかった。

 さて、最初に考えたのは 「ビューティ・トワレ DL-UE20」だ。スイッチが一体式のため、リモコンを別に設置する必要がない。賃貸物件の住人にとってこれはメリットだ。しかし色々調べていくと、 5,000円程度価格は高くなるが、便フタの自動開閉機能と、便器の汚れを抑える「アクアコート」機能を搭載した「ビューティ・トワレ DL-WE40」が手に入ることが分かった。男性なら分かるだろうが、ついつい便座を上げたままにしていると、同居人の女性に便座を下げろとよく怒られ る。DL-WE40なら、勝手に便座や便フタを閉じてくれるのだから怒られることもなくなりそうだ。

 そして実は個人的にはアクアコートが気になった。人感センサーで入室を検知すると便器内に水を撒いて汚れの付着を抑えるというのだ。自分の付けた汚れとは言え、トイレの掃除はあまり好きになれない。これで掃除の回数が減らせるなら、5,000円くらい安いモノである。

 ということでちょっと奮発してDL-WE40を購入することにした。リモコンを壁に取り付ける必要があるが、賃貸住宅でも問題なく付けられる方法はあとで考えることにしよう。

洗浄便座をDIYで装着する

 いよいよ我が家に届いたDL-WE40である。ネットでいろいろ調べたが、装着に必要な工具は付属していて、素人でもDIYで装着できそうだったので、自分で取り付けに挑戦することにした。

 結論から言えば、取り付けは簡単だった。作業手順は以下の写真を参照して欲しいが、さすがに初めての作業ということで、マニュアルをしっかり読みこみ、写真も撮影しながらだったので、1.5時間くらいは掛かった。

 一番大変だったのは事前のトイレ掃除。後は、閉まるハズのバルブが閉まらなかったが、これは水道の元栓から閉めて対処。むしろ元栓から閉めた方がラクだしオススメだと思う。ちなみに事前にトイレ掃除をちゃんとしておかないと、クサい中で作業することになるので、きっちり掃除しておくことをオススメします。

 装着して分かったことだが、洋式便器というのは、標準サイズの「レギュラー」と大型サイズの「エロンゲート」というのがあり、ビューティ・トワレはどちらの便器にも対応する共用だったのだが、筆者宅の便器は標準サイズだったようで、装着してみると、若干便座のほうが大きいのが気になった。まぁどうしようもないのだが。

DL-WE40の本体とリモコン、そして人感センサーだしっかりECO NAVIのランプも付く。これだけでもなんとなく省エネな気がする脱臭機能のフィルター。簡単に外すことができるので手入れもラクそうだ
便座を裏返してみる便器と接続するベースマウント部はワンタッチで外れるようになっている。これがキモ写真真ん中が洗浄ノズルで、右に見えるのがアクアコート用のノズル
取扱説明書とトイレに常設できるご使用ガイドの他、設置工事説明書が付属。分かりやすい説明書なのでDIYでも安心できる接続用のパイプや工具など一式も付属。このほかにモンキーレンチが欲しい作業前に、止水栓からタンクまでを繋ぐパイプの長さを調べる。止水栓から温水洗浄用として水を分岐させるこの長さが150~330mm以外の場合、別売品の長いフレキシブルパイプなどを手配する必要がある
古い便座を止めているナットを手で外す。固着している場合もあるので、いろいろ作業を始める前に外れることを確認しておきたい便器を下からのぞいたところ。真ん中の白いナットが便座を固定しているナットだ左右のナットが外れたら、便座を上に持ち上げると外すことができる。が、後の作業を考えるとこの時点ではそのまま置いておくのがよいだろう
まずは止水栓を回して水を止め、止水栓とタンクを繋ぐパイプを外すパイプの中の水がこぼれるので、下にバケツやタオルを用意しておこう止水栓に分岐ホースを付ける。付属のパッキンは種類があるので間違わないようにしよう
手で仮止め。こんな感じになるモンキーレンチで分岐ホースが回らないようにしつつ、付属のレンチでボルトを締めこむ分岐ホースの分岐部に付属のフレキシブルパイプを繋ぐ。ここでもパッキンを間違えないように
フレキシブルパイプを手で曲げてタンクと繋がる形にする温水洗浄便座を固定するボルトを右のようにバラす温水洗浄便座を裏返し、ベース部にボルトをスライドさせる形で取り付ける。2本とも付けるとこうなる
新しい便座を取り付ける。裏から手でナットを締め込もう分岐ホースをホースが折れ曲がったりしないように取り回し、便座に差し込む付属のクイックファスナー
クイックファスナーを接続部にはさみ込み、ロックを倒し込んで固定する。ホースが抜けず、またクイックファスナーが軽く回ることを確認アース線を取り回し、装着。止水栓を開いて水を流し、パイプなどから漏れがないか目視で確認問題なく動くかテストするため、本体を入れていたビニール袋を便座と便器の間に挟む
電源プラグをコンセントに繋ぐ電源ランプが点くことを確認漏電テストスイッチを2秒以上押すと漏電ランプが点き、電源ランプが消える
電源プラグを抜き、4~5秒待って漏電ランプが消えたら再度電源プラグを繋ぐ便座暖めランプが点滅し点灯に変わる。便座が暖まっていればOK。また脱臭も始まるECO NAVIランプの横にある着座センサーを手で覆い、リモコンで温水洗浄を操作
温水が出ること、温水が温かいことを確認。そのほかビデなども動作を確認すればOK装着してみると、標準サイズとエロンゲート共用のDL-WE40だと、写真のように便器と便座が少しずれてしまう

 さて、賃貸住宅で壁にリモコンをどう取り付けるかという点だが、付属のねじはとても太い。とくに石膏ボードに装着する場合、ドリルで下穴を開けなければならない。とてもじゃないが賃貸でそんなことをやる勇気はない。そこでホームセンターで、ピンタイプの留め具を買ってきた。虫ピンサイズのピンを放射状に刺して、石膏ボードを固定するもので、よく壁掛けフックに使われている。このピンの部分だけを入手して、ネジの代わりに使うことにした。

 問題はネジの頭になる部分が大きいことだ。しかしすき間はそれなりにありそうなので、とりあえず試してみることに。結果、多少ぶつかってしまうものの、装着自体は問題なく行なえた。リモコンを外すと裏側にキズがついてしまっているが、壁に穴を開けるよりずっとマシだ。

リモコンはホルダーを壁にネジ止めして装着するのだが、石膏ボードの壁の場合、5.8mmの穴を開けて、付属の樹脂プラグを使う必要がある賃貸物件にそんな大穴は開けられないので、細いピン3本で石膏ボードにフックを固定する「マジッククロス」(不二貿易)のピンだけを買ってきて利用した
問題なく装着できた本体を装着。若干マジックロスの頭の部分がぶつかってしまうが、大きな問題はなさそうだ

 もう一つの人感センサーのリモコンに関しては、現状は床に置いてある。トイレに小物を入れる棚を買う予定なので、それが届いたら棚に取り付ける予定だが、ドアのすぐ脇に置いておくと、結構よい塩梅で反応してくれる。

瞬間式便座と瞬間式シャワーは本当にすぐ暖まるのか!?

 さて、気になるのはWの瞬間式、暖房便座と温水シャワーの暖まり具合だ。特にこの製品を買った1月は暖房便座が恋しい季節である。

 ということで暖房便座だが、カタログによると便座の内側は熱伝導効率の高いアルミ製で、その内側には高出力のマイクロチュービングヒーターを装備。ひとセンサーが人の入室を感知すると、わずか6秒で便座を暖めるのだと言う。ただし、室温が15℃以下の場合、15℃で便座を保温。これをキャンセルすることも可能で、その場合約10秒で便座を暖めるという。

 論より証拠、ということで、非接触式の温度センサーを使ってその温度の上昇具合を測定してみることにした。結果はというと、まさに瞬間式という言葉にふさわしい上昇っぷりだ。センサーの反応する以前の便座温度が20.5度。そこからセンサーが反応し、便座が暖まり始めると、わずか3秒で24.1度、5秒で26.4度、10秒で28.1度、15秒で29.1度。29度を超えた辺りから温度上昇がきわめて緩やかになるが、最終的には34.8度まで上昇した。

人感センサーが反応する前の便座の温度は20.5度センサーが反応し、わずか3秒で24.1度まで上昇5秒で26.4度
10秒で28.1度15秒で29.1度この辺りで温度上昇が少なくなり20秒で29.6度となった

 実際に使った印象としては、センサーはトイレのドアを開けた瞬間に反応するので、そこからスリッパを履き、ベルトを外し……とするとすぐに10秒くらいは経ってしまう。なので、冬場であっても冷たい思いをすることはほとんどない。ほとんどと書いたのは、寝巻きの場合だ。ベルトを外す手間がないので、便座に座るまでの時間が短く、いつものつもりで座るとヒヤっとすることがある。

 また、温水洗浄については、まったく冷たさを感じるようなことはない。寒冷地などでも同様かは確認していないが、神奈川県の筆者宅ではまったく非の打ち所がなかった。

自動開閉便フタは慣れると快適

 当初は自動開閉便フタまではいらないんじゃないかと思っていたが、これが使い始めるとすっかりクセになってしまう。人感センサーが入室を感知すると、自動で便フタが上がるというもの。さらにリモコンのボタンを押すと、便座も上げ下げできる。男子としては便フタだけでなく便座も自動で上がって欲しいところ。このあたり、設定で変更できればモアベターだろう。

 といってもリモコンの出来がよくて、便座の開閉ボタンはリモコン上部についている。これがボタンも大きく立った状態からは操作しやすいので、トイレに入ったらまず便座開閉ボタンを押すという動きが身に染みつく。自動開閉の一番のメリットは、終わった後に便座を降ろす必要がないことだ。女性の同居人がいる場合、便座を下げておかないと怒られるが、自動開閉付き便座ならば、退室後しばらくすると自動で便フタまで閉じてくれる。

 リモコンに関して言えば、温水洗浄などのスイッチもボタンが大きく使いやすい。立ってる時に使うボタンは上面に、便座に座った時に使うボタンは前面に配置されるので、ボタンの数の多さのわりにわかりにくさはない。洗浄の強さや前後位置なども5段階で調整でき、快適そのもの。ただ、あえて注文をつけるならば、プリセットメモリーができるとありがたい。筆者の場合、洗浄時にムーブとワイドを使用するのだが、毎度、洗浄ボタン、ムーブボタン、ワイドボタンと3回ボタンを押す必要がある。外出先のトイレならば諦めもするが、自宅のトイレくらいはボタン1つで好みの洗浄を選びたいものだ。

トイレに入ると自動で便フタが上がる。さらにリモコンの便座開閉ボタンを押すと便座が上がる。便座開閉ボタンは上面にあるので、立っている状態で操作しやすい便座に座った状態からだと、洗浄ボタンが見やすく押しやすいポジションになるリモコンのフタを開けると便座温度などの設定ができる。右のノズル除菌ボタンを押すと、約40度のお湯でノズル除菌を行う

アクアコートがスゴすぎる! 

 最後にアクアコート機能について。人感センサーが入室を感知すると、便器内に水を撒き、汚れを付着しにくくするというものだが、これがスゴイ!! とにかく汚れがつきにくく、こびりついた汚れも水を流せばすぐ落ちる。ごく希に汚れが残ってしまった場合も、もう一回水を流すとキレイに流れてしまう。さらに水アカなどの汚れもつきにくくなっているようで、装着後1カ月以上経って、同居人と互いにトイレ掃除をしたか確認しあったほどだ。

 つまりお互い1カ月以上掃除をしていなかった(フチの拭き掃除はしていた)のだが、あまりに汚れないので、誰かが掃除したのかと思ったわけだ。それぐらい汚れないのである。さすがに2カ月を過ぎる頃から、便器のフチ裏に水アカが出始めたので掃除とあいなった。

 掃除の際にはノズルの部分もステンレス製で洗いやすくなっているが、実際には普段から自動洗浄してくれているため、この程度では目立った汚れはない。便器と便座のすき間に汚れがたまりやすいが、ワンタッチで便座が外れる構造のため、こういったすき間も掃除できる。ただし、給水ホースなどは外れないため、取り回しは楽ではないが……。便座やフタ部など樹脂の部分は、掃除でキズがつくこともあるが、コーティングがされているらしく、今のところキズらしいキズはついていない。

アクアコートの作動状態。水が噴水のように便器内に撒かれ、汚れが付着しにくくなる温水洗浄ノズルの掃除もできるが、普段から自動で洗浄しているので、そうそう汚れもしなさそうだワンタッチで便座が外れ、便器と便座のすき間が拭きやすい。しかしホースやコードが繋がっているので、ガバッと取り外せるイメージとは異なる

 購入して3カ月程度使用しているが、洗浄のプリセットメモリー機能については、オプションのリモコンでもいいのでぜひ対応して頂きたいところ。それ以外はおおむね良好で、特にアクアコートには大満足している。購入を検討されているかたは、ぜひアクアコート付きタイプの温水洗浄便座をオススメしたい。






2012年5月17日 00:00