家電製品ミニレビュー
日常使いに特化したスティック式のスチームクリーナー
by 戸井田 園子(2015/2/2 07:00)
今回紹介するのは、ケルヒャーのスティックスチームクリーナー「SC1」です。ケルヒャーのスチームクリーナーはこれまで大きめのキャニスター型のみでしたが、新たにスティック型を展開。すでにほかのメーカーからは、本体を手で持ちながら使う「ハンディ型」、立ったまま床掃除がしやすい「モップ型」、モップ&ハンディが一台にまとまった「2in1」など、様々な形が存在しています。しかし、SC1のように手元に本体があるスティック型は、業界で初めての画期的な製品です。はたしてその使い勝手はどうなのでしょう、自宅で試してみました。
メーカー名 | ケルヒャー |
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製品名 | スティックスチームクリーナー「SC1」 |
希望小売価格 | オープンプライス |
購入場所 | ジャパネットタカタ |
購入価格 | 21,384円(送料別) |
コンパクトながら「ボイラー式」を採用し高温スチームを実現
スチームクリーナーには大きく分けて、タンクの水をボイラーで沸かしてスチームを噴出する「ボイラー式」と、ヒーター部分に水を通すことで瞬時にスチームをつくる「パネル式」の2つの方式があります。ハンディ型やモップ型などコンパクトなスチームクリーナーの場合、タンクやボイラーが必要ない「パネル式」が多いのですが、ケルヒャーはコンパクトなスティック型でも本格的な「ボイラー式」を採用しているのが特徴です。
ボイラー式の長所は、タンク内の水が気体になることで体積が増すため圧力があがって勢いよくスチームを噴射すること。また、タンク内部の圧力が上がることで100℃以上(この機種の場合約143℃)の高温になり、ノズルから噴出した時にも約100℃の高温スチームが安定して供給されることです。噴射口のスチーム温度は、汚れの落ち具合に直結しますので、重要なポイントとなります。
逆に弱点は、タンク内の水が沸騰し蒸気が充満してからスチームが噴射するため、スイッチONからスチームが噴射できるまでの時間=「ヒートアップタイム」が長くなること。パネル式の場合30秒程度ですが、従来のボイラー式の場合4〜6分程度の時間を必要とします。しかし、このモデルはタンクがコンパクトなため約3分間で使用開始できるようになりました。パネル式と比べたらまだまだですが、長いと感じるほどの時間ではなくなったのは評価できます。
本体サイズは、127×186×321mm(幅×奥行き×高さ)と、スチームクリーナーにしては、かなりコンパクト。ボイラータンク容量は0.25L、連続噴射は約6分と短め。しかもボイラー式は、タンク内の圧力が下がるまで給水タンクの栓(安全バルブ)が開かない仕様になっているので、タンクの水がなくなったからと言って、すぐに給水をして再び使い出すことはできません。
取扱説明書には、本体を1~4時間程度冷ましてから開栓するようにと書かれていますので、1回の使用時間はトータルで6分までとなります。そもそも、コンパクトなスティック型にしているのは、サブクリーナーとして日々気軽に使ってもらうことを想定しているということでしょう。
アタッチメント差し替えで、いろいろなスタイルに対応可能
同梱されているのは、本体・延長パイプ(2本)・延長スチームホース・フロアノズル・ハンドブラシ・ノズルヘッド・ブラシ(3つ)・スポットノズル・フロアノズル用クロス(2枚)・ハンドブラシ用カバー(2枚)と、結構なボリュームです。それぞれを組み合わせることで、いろいろなスタイルで使うことができます。
本体+パイプ+フロアノズル
まず試したのは、延長パイプとフロアノズルを組み合わせたスタイル。dysonスティッククリーナーのようなスタイルで、床の拭き掃除に向きます。本体を持つ手でスチームボタンを押しながら動かすことができるので、片手で床の拭き掃除が楽にできます。
しかし、フロアノズルの首の角度が固定されているため、延長パイプを2本つないだ場合ノズル全面が床に着くように保つためには、持ち手の位置が床から80cmくらいの高さとなるため、身長158cmの筆者には高く感じました。パイプ1本では腰を少しかがめなくてはなりません。ホースを3分割にするかフロアノズルの首が自由に動くようにするなど、改良を期待します!
本体+パイプ+ハンドノズル
続いて試したのは、壁紙やエアコンなど、少し高い位置の汚れ落としにちょうど良いハンドノズルを装着したスタイル。このスタイルは、手元でスチームのON/OFFができるので、使い勝手も悪くありません。ただ、1.5kgの本体とパイプ類の重さ全てが片手にかかる上、先端を上方に持ち上げているので重みは感じますが、ノズルの先が壁についていれば重さは分散されるので、連続6分なら許容範囲でしょう。
本体+ハンドブラシのみ
カウンターや家具など腰周りの高さで使うなら、本体とハンドブラシを組み合わせたハンディクリーナースタイルがおすすめ。腕にかかる負担も最小限ですし、先端を持ち上げることなく下向きで使うので苦になりません。また、本体からすぐスチームが噴射するのでパワフルな印象がします。ソファにスチームをかけて除菌をしたい時などに最適です。
本体+延長スチームホース+スポットノズルorブラシ/本体+延長スチームホース+パイプ+スポットノズルorブラシorハンディノズルなど
付属の延長ホースを使うと先端の自由度が上がるので、キッチンコンロや水栓の周囲など、細かな部分を掃除するのに便利です。また、延長ホースの先に長いパイプをつければ高いところでも自由に動かせるようになります。そのときは、本体を持ったままだと重いので、カウンターの上などに置いて使うのが便利です。パイプを2本にすればかなり高いところまで届くので、キッチンのレンジフードなどにはこの組み合わせが最適でした。
しかし、本体側にスチーム発生ボタンがあるため、利き手で先端を動かし、もう一方の手でスチームのON/OFFを操作しなくてはなりません。両手がふさがってしまうのが難点です。ちなみに、ケルヒャーのキャニスター型は、延長ホースの手元でスチーム噴射のON-OFFができるスタイルなので片手が空きます。このモデルも同じ仕様だといいのになぁ……と感じました。
操作は簡単、シンプル! ちょっと気になる点も
使い方は至って簡単。まずタンクの栓(安全バルブ)を取り外して給水口からお水を入れます。給水は最大0.25Lまで。水を入れすぎるとスチームの温度が上がり切らずお湯になると取扱説明書にあります。実際0.3Lくらい入れて試してみたところ、最初はビショビショになってしまいましたので、水の分量は守ることをおすすめします。
給水したら、安全バルブをしっかりしめて、スイッチをONにするだけ。3分後にはスチームが出る状態になります。気になるのは、スタンバイ状態になったかどうかがわからないところ。スイッチを押すとスイッチ自体が点灯しますが、スチームが出る状態になっても変化しないので、スタンバイできたのかが分かりません。スイッチボタンが点滅から点灯に変わるなど、目視できるサインがあると便利だと思います。
なお、スチームボタンはロックがかかるようになっていますので、ロック解除をしてスチームボタンを押すのが原則。ボタンを押し続けていない限りスチームは噴射しませんが、高温のスチームが噴出しますので、アタッチメントの交換時などはキチンとロックをかけるよう、心がけましょう。
クロスはピン! と張るのがコツ
床の拭き掃除にはフロアノズルにクロスを装着して使用します。クロスの幅とノズルの幅は異なりますので、ノズルの幅に合うように畳んで取り付けます。両端を押すとクリップが上がりますので、クロスの両端を押し込んでクリップを下げて挟み込む……となかなかアナログです。
しかも、掃除中にクロスがたるんでしまうと汚れが取れにくくなりますので、クロスをピンと張らないとなりません。クリップの裏にはかなり尖った突起があり、指でクロスを押し込む時に当たると痛いため、もう少し楽な装着方法にしてもらえると嬉しいです。それでもクロスが一枚の平たい布なので、手持ちの雑巾や使い古しのタオルでも代用できるという意味では便利だと感じます。これに対し、ハンドブラシはカバー式なので、装着はワンタッチで楽ですが、専用タイプを買わなくてはならないので、ランニングコストは必要になります。どちらも一長一短というところでしょうか。
高温スチームだけで、日常の汚れがスッキリ落ちる!
スチームクリーナーの大きなメリットは、高温のスチームで汚れを浮かすことができるため、洗剤を使わなくても汚れが落とせることや、高温で除菌効果が得られること。台所や洗面所のように口に入れるモノがあるところには、非常に安心して使えます。また、ペットが居る家庭も、床を洗剤で掃除しなくても清潔にできるので安心です。それでは実際に掃除をした成果をご確認ください。
床拭き
LD約15畳のうち、置き敷きのカーペットや家具の下などを除けば、実際にフローリングが出ているのはせいぜい8畳くらい。連続使用6分間ですが、十分まかなえる時間でした。モップを掛ける程度の力で軽く掃除をしてみたところ、装着したクロスにはしっかりと汚れが付着していました。自分で床の水拭きをするのに比べたら、かなり楽だといえるでしょう。また、高温のスチームなので、拭いていく側から水分がさっと蒸発し、足触りがサラサラとして気持ち良い仕上がりなのもうれしい点です。
キッチン・レンジフード
ハンドブラシでレンジフードを軽くこすってみました。フードの側面についた油汚れがするっと取れて、あっという間にカバーが茶色くなってしまいました。年末の掃除をサボったせいもありますが、スチームクリーナーはやはり油汚れには強いと感じます。
レンジフードの汚れ具合によりますが、6分間ではレンジフード全面の汚れは落としきれず、スチームクリーナーで拭いた跡が残った状態でタイムアウト! 先にも書きましたが、タンクの蓋である「安全バルブ」は、タンク内の温度が下がらない限り給水はできません。レンジフードやキッチンの壁全面をしっかり磨きあげるというよりは、日々の汚れを簡単に落とすのに使うのがおすすめです。
ちなみに、安全バルブはタンク内の温度が下がり給水可能にならない限り、いくら回転させても取り外せません。高温のスチームが圧力により発生するものなので、このあたりの安全性はしっかりと作られています。安全バルブが開かない時は、くれぐれも無理にこじあけないようにしてください。
日々のお手入れは水タンクのすすぎのみ
ゴミやホコリを集める掃除機と違い、使用後はタンク内部水を捨てておく程度で、日常的なゴミ捨てやクリーナーの手入れはほとんど必要ありません。ボイラーの内部にスケール(湯あか)が付着すると温度が上がりにくくなりますので、それを防ぐために使用10回ごとを目安に、ボイラーのすすぎを行ないます。内部に水を入れて捨てることを3回繰り返すだけなので、これもそんなに手間ではありません。ただし、50回使用を目安にボイラーの洗浄をすることが推奨されています。こちらは、別売りのボイラー洗浄剤を購入し、定期的に行なう必要があるので、それなりの手間が必要と心得ておきましょう。
本腰をいれる掃除向きではないが、毎日使いたい人には最適
キャニスター型のしかも連続給水可能の大型スチームクリーナーを使用している筆者にとっては、最初は、使用時間は短いし、延長ホースだと手元でスチームがコントロールできないし、なんだかもの足りないかも……と感じたのが本音でした。
しかし、毎日出しておいてチョコチョコ使うには手頃なサイズですし、ヒートアップタイム3分というのもとても苦にならない長さです。連続使用時間が6分と限られているので、確かに大掃除には不向きですが、食事の後片付けの時に、コンロ前の壁を拭いたり、シンクを除菌したり、ダイニングテーブルを拭くなど今まで手でしていたことを、このスチームクリーナーに置き換えるというイメージなら、かなり便利に使えると印象が変わりました。
スチームクリーナーというと、大掃除のような本腰を入れて取り組む時の必須アイテムというイメージでしたが、この機種は日常使いに特化したモデルと割り切れれば、ぐんと活用度が高まるはずです! もちろん、大掃除でしっかり使いたいならキャニスタータイプがおすすめですが、スチームクリーナーのメリットは知ってはいるけれど、出し入れが面倒だからたまにしか使っていないという人は、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。