家電製品ミニレビュー

無印良品「駅の時計・電波ウォールクロック」

~置き時計にもなるシンプルな壁掛け時計
by 伊達 浩二

ちょっと大きめの時計がほしい

無印良品「駅の時計・電波ウォールクロック」

 我が家には壁掛け時計というものがない。

 壁にネジを打ち込めない賃貸住宅住まいが長かったので、置き時計中心で大きな壁掛け時計は持っていなかったのだ。いまはTVの横に、ちょっと大きめのデジタル型置き時計を置いてあり、これが我が家の主時計となっている。

 しかし、最近はもともとの近視に老眼も加わり、一般生活用のメガネと、度数の弱い読書用のメガネを切り替えて使うようになってしまった。読書用のメガネをかけていると、このデジタルクロックの数字が読めないのだ。

 というわけで、ちょっと大きめの置き時計または、壁掛け時計を探してみることにした。方針としては、シンプルなデザインで低価格という、我が家の家風に沿った製品であること。もう1つはアナログ式表示であることだ。読書用メガネをかけていて、ぼんやり見えるときには、数字よりも針の方がよく時間がわかるのだ。

 そして見つけたのが、今回紹介する、無印良品「駅の時計・電波ウォールクロック」というわけだ。正直、また無印かよ、と思わないでもないが、シンプルで低価格という方針だと、このブランドから探すのが近道なのだ。



メーカー無印良品
製品名駅の時計・電波ウォールクロック
販売価格7,900円
購入場所無印良品ネットストア


パブリックなデザインを手元に

 さて、「駅の時計」は、ちょっと歴史のある製品なので、簡単にそのあたりを紹介したい。

 この製品の源泉は、SEIKOの「SEIKO パワーデザインプロジェクト」という企画から生まれたようだ。これは、プロダクツデザイナーの深澤直人氏の監修のもとに、「SEIKOのデザイナーが新しい時計のスタイルを提案するプロジェクト」であり、2002年から始まっている。

 その最初の年に生まれた作品の1つに「EKI 駅」という腕時計があった。デザインの特徴は四角い長方形に、白い背景に黒い字の文字盤と黒い針を組み合わせており、シンプルに仕上げている。このデザインの意図は、次のように解説されている。

 「日常でもっとも目にするものに時計があります。自分の腕時計もですが、駅で時間を探すときに何気なく目をやる方向に駅の時計はあります。自分がもっとも、目をやるパーソナルなものとパブリックなものが同じかたちだったら可笑しいかもしれません。ありえないこと。共通の認識に存在する魅力かもしれません」

 つまり、腕に駅の時計がついていたら面白いじゃないか、というのが狙いだ。

 これが無印良品の「駅の時計」シリーズにそのままなったわけではないが、基本的なテイストは色濃く引き継がれている。最終的には、腕時計と目覚まし時計と壁掛け時計が用意され、シリーズとなっていた。もちろん、製造元はセイコーだ。

 そして去年(2010年)の9月こと、壁掛け時計はモデルチェンジし、電波時計に進化した。

 電波時計になる以前のモデルを見ていないので、値下げに伴って、外観などが変わったのかどうかは確認できなかった。仕様からわかるのは、奥行きが40mmから42mmへと少し厚くなったことと、ボディカラーが黒とアイボリーの2色からアイボリー1色になったこと、電波時計化に伴って、単三乾電池が1本から2本に増えたことぐらいだ。無印良品の再発売時の説明では「電波式に仕様を改良しました」とだけ書かれている。

 ちなみに、壁掛け時計の価格は、最初は15,750円だったようで、その後12,600円に値下げされていたらしい。今回の電波時計は、最初から7,900円と買いやすい値段になっている。

 もともとのデザイン意図からすれば、パブリックなものからパーソナルになったものを、もう一度、壁掛け時計というパブリックな形に戻るような形になる。ちょっと半端な気持ちもしないではないが、パブリックな時計をパーソナルな自室に持ち込んだということだけでも、面白味は感じられるだろう。

大きさに不足無し、なんと置き時計にも

 通販で製品を買うと、写真で見たときと実物の大きさの違いに驚くことがあるが、この製品は典型だろう。

 もともとシンプルで大きさがつかみにくいデザインだが、なんと315×42×225mm(幅×奥行き×高さ)もある。つまり、横幅は30cm定規と同じぐらいあるのだ。40代以上の人には、LPレコードやレーザーディスクの大きい方より幅があると言えば、大きさの感覚がわかるだろう。とりあえず、大きさに不足はなくオフィスで使っても良いぐらいだ。

パッケージにも時計の絵が描かれている本体の幅はちょうど30cm定規ほど底面も水平なので、スタンドなしでも自立する
奥行きは約4cm左に置いた一般的な目覚まし時計の数倍の大きさがある手前のCDと大きさを比較
背面の中央に機構部分がある操作ボタンは3つだけしかない。乾電池2本が入る本体の側面は金属製でアイボリーで塗装されている

 写真では、素材感がわかりにくいのだが、本体のフチの部分は金属製で白く塗装されている。これが駅の時計らしい雰囲気を出している。文字盤などは樹脂製のようだ。

 壁面への取り付け金具は木ねじが1本ついてくるだけなので、各自工夫が必要だ。時計本体のほうも、ネジ頭がひっかかるようになっているだけだ。たとえば、時計の左右に吊り金具(ヒモを通す三角形の金具など)がついていると、額をかけるようにフックに掛けられて便利だと思う。

 使い方は簡単で、2本の電池を入れて、リセットボタンを押し、標準電波で送られている正確な時刻に同期するのを待てば良い。問題はビル内では標準電波が届きにくいことぐらいだ。

 受信できなくてもプラスマイナス20秒のクオーツ時計ではあるので、ときどき数分の調整をすればいいと割り切れば良いのだが、最初の1回だけはベランダにでも置いて受信したおいた方が良い。

 なぜかというと、この時計は手動による時刻合わせちょっと手間がかかるのだ。手動で時刻合わせをする場合は、モードボタンを8秒押して、時刻合わせモードにし、受信モニターボタンを押すと分針が進む。場合によっては、かなり長い時間受信モニターボタンを押し続けなければならない羽目になる。

 ついでに言うと、取扱説明書には、3つのボタンの名前が、「受信モニターボタン」「モードボタン」「リセットボタン」と書かれているが、時計本体に貼られているシールにはボタンの名前が「Aボタン」「Bボタン」「リセットボタン」と書かれており、統一されていないのでわかりにくいものになっている。

本体背面シールに書かれたボタンの名称取扱説明書に書かれたボタンの名称は異なっているこれまで使っていたデジタル時計との大きさ比較。デジタル時計も大型のものなのだが…

 なお、電池寿命は1年とされている。今時の時計としては短めな方だが、それはあまり問題ではないだろう。

 むしろ、私が感じた一番の問題は、デザイン的に設置場所を選ぶことだ。なんせ、シンプルなデザインなので、ごちゃついた壁面などに置くと、埋もれてしまってシンプルさが生きない。

 とりあえず、ハンガー用のフックを利用して壁面にぶら下げてみた。仮の場所ではあるが、何もない壁にポツンと、この時計だけがあると、本来の姿という気がする。写真を見てもらえばわかるように、周囲に余白があると無印っぽい雰囲気が出てくる。

  無印良品の製品全般に言えることだが、シンプルなデザインを生かすためには、シンプルな背景が必要となる。この時計もデザインを生かすためには、まず部屋と壁をすっきりと片付けることから始めるべきなのだろう。

まだ壁にネジを打ち込む勇気が出ないので、フックを利用して壁に下げてみたこういう風に周囲に余白が多いと、この時計に似合うし、無印っぽい感じが出てくる

 なお、この時計には太めの針金のようなスタンドが付属しているので、置き時計としても使える。ただし、スタンドは一定の角度に固定されており、角度が変えられない。

付属のスタンドを使った状態。割と寝た角度になるスタンドを付けた状態。電池は付属のものではないHDDレコーダーの上を占領するほどの大きさがある

 この時計はもともと壁掛け時計なので、通常の置き時計の2倍以上、ほとんど3倍近い大きさがある。家庭用の掛け時計としては異色の大きさだが、それだけに存在感があり、面白い存在だ。HDDレコーダーの上などに置いても似合うので、直線的なデザインを活かす1つの方法としておすすめしたい。




2011年2月3日 00:00