家電製品ミニレビュー

サンコー、USB充電式の乾電池を徹底調査!! 低負荷・高付加時の電圧・電流を調べてみたぞ

 創業15周年ということで、新製品の快進撃が止まらない「サンコーレアモノショップ」。今度は充電式の乾電池が発売された。でもタダの充電式の電池じゃない! なんと電池自身にスマホと同じUSBのメスコネクタがあり、USBケーブルを差し込むだけで、ACアダプタや、モバイルバッテリから充電できるというのだ。

サンコーから発売されているUSB充電式電池。専用充電器なしで、USBケーブルを差し込むだけで充電できる
メーカー名サンコー
製品名充電器不要! USB充電できる乾電池
実売価格1,280円~1,780円(税込)

 USB充電式電池(以下、USB電池)は種類も豊富で、大きな懐中電灯で使う単一形、一般的な単三形、リモコンやデジタルガジェットでよく使われる単四形が用意されている。なぜかプラレールや小さい懐中電灯で使う単二形がないが、単三形を単二形に変換できるアダプタを使えば、なんとかなる。さらに素晴らしいのは、トランシーバーや各種の測定器で使われてる9V形・006P電池と、リチウムイオン電池のスタンダード18650形まで用意されている。

 006P電池とは、角型電池と呼ばれ、プラスとマイナスの端子がスナップボタンのような形状になっているアレ。9Vの電池だ。1.5Vの小さな電池が6個入って1本の電池になっているので「006P」と呼ばれている。18650形は、ほとんどの人が使わない電池(笑い)。直径18mm、長さ65mmのリチウムイオン電池なのだが、通常はモバイルバッテリーやパソコンのバッテリーの中に使われているもの。18650形を電池ボックスに入れて使う機器は、超レア電子機器だ(窓拭きロボぐらいしか見たことない)。

006Pや角型電池と呼ばれる9V電池。これもUSB電池が用意されていてうれしい!
自作の測定器で特徴を詳しくチェックしていこう

中身はリチウムイオン電池なので軽くて便利だけどクセあり

 充電式の電池と言えば「エネループ」に代表されるニッケル水素電池が有名。また一般的な電池の形をしていないものの、バッテリバックとして有名なのが、リチウムイオン電池だ。カメラやスマホ、モバイルバッテリや電気自動車など色々な機器に使われている。

 サンコーから発売された電池は、一般的な電池の形の中に収めたリチウムイオン電池だ。例えるなら、1.5V出力の単三形の乾電池型のモバイルバッテリ。ちょっと小さめのリチウムイオン電池と充電回路、電圧調整回路が入った、電池型モバイルバッテリというわけだ。

 だから充電するには、USB ACアダプタやモバイルバッテリを、電池本体についているUSBコネクタに接続する。この電池をニッケル水素電池などの充電器にセットするのは、絶対に禁止! また電気エネルギーの量は乾電池よりやや少なめ。以下は、筆者が独自に測定した、おおまかな容量だ。

ニッケル水素電池として有名な「エネループ」
今回の実験で乾電池の代表としたのは「EVOLTA NEOシリーズ」のアルカリ電池
電池にあるコネクタにUSBケーブルを差し込むだけで充電開始。充電中は赤いランプが点灯する

 なお「実測容量」は、後述する高負荷と低負荷で利用したときの実験結果の平均値を取っている。乾電池には表示容量が記されていないため実測容量だけとなっているが、ニッケル水素電池とUSB電池は表示されている容量と実測容量の2つを記載した。多少の誤差はあるものの、いずれも表示容量に「偽りなし」という結果だ。

 次の左のグラフは、実績容量をグラフにまとめたもの。006P形のUSB電池は無理に1.5Vの電池を四角い電池の中に納めているので、容量に無理がある感じだ。しかしほかの乾電池は、軒並み容量が多いのが分かる。

 さらにリチウムイオン電池の特徴は軽さ。重さを量ったところ、右のグラフのようになった。

各種電池の容量を実際に計測してみた
各種電池の重量を実際に計測したのがこちら

 携帯する電子機器用の電池として、軽いUSB電池は非常に有利。とくに単三形電池4本を入れるストロボは、乾電池を入れると約100gなのに対して、USB電池だと約71g。その差およそ30gもある。ストロボ自体の重さもあり、カメラの上に載せて重心が高くなることを考えれば、30gの差は機動力を左右するだろう。

単一形USB電池の特徴とベストな使い方【非常用のラジオ向け】

 ここからは、USB電池を形ごとに見ていこう。まずは単一形だ。次のような装置を使って、乾電池とサンコーのUSB電池を電池の特徴を調べてみた。

まずは単一形USB電池の外観
重さは、乾電池に比べるとめちゃくちゃ軽くて、だいたい1/3
装置では、右上の金色の部品の組み合わせを変えて、電流をコントロールしている
右上の金色の部品を取り替えて、低負荷と高負荷の状態を作っている

 実験は2種類行なっており、「低負荷」とあるものはおよそ300mAの電流を流して調べたもの。あまり電池を消費しないラジオやデジタルガジェットに使った場合を想定している。もう1つはおよそ1Aを流したときで、モーターや強力懐中電灯などで使った場合を想定している。

 まずは低負荷時のUSB電池の特徴を見てみると、乾電池に比べて電圧が一定であることが分かる。乾電池の寿命は0.9Vを切ったときなので、そこまで使うと74時間(3日間)の利用ができた。しかしUSB電池は容量が少なために15時間程度で電圧が0Vになってしまった。電流についても調べたところ、徐々に下がる乾電池に比べUSB電池は始終安定しているのが特徴だ。

単一形USB電池の、低負荷時の電圧変化
単一形USB電池の、低負荷時の電流変化

 このことから見て、USB電池は電圧も電流も安定しているので、最後の最後まで音が小さくなったり、電球が暗くなったり、速度が遅くなったりすることなく、機器が安定して動くことが特徴と言える。

 対して高負荷の場合は、電圧は一定のままだが、電流にばらつきがあり、乾電池より不安定のようだ。強力ライトなどで使うと、電球の明るさが変わってチラつくだろう。

単一形USB電池の、高負荷時の電圧変化
単一形USB電池の、高負荷時の電流変化

 USBの単一形電池が向いているのは、非常用のラジオなど。ただし充電の持ちを考えると乾電池もあわせて持っておきたいところ。逆にUSB電池が不向きなのは、強力懐中電灯や(力のかかる)モーターの駆動だ。これらは乾電池の利用をオススメする。

単三形USB電池の特徴と便利な使い方【ストロボ向け】

 次は、単三形USB電池。実験内容は単一形と同じだ。デジタルガジェットなどの低負荷と、ストロボやオモチャなどの大電流を想定した高負荷の2タイプを実験している。

単三形USB電池の外観、側面のプラス側に充電用コネクタがある
一番用途があるので、作りも一番しっかりしているという印象
「AA Sise」というのはアメリカ表記のサイズ。単Xは日本ローカルな表記

 まずは、低負荷の実験。USB電池は、電圧・電流の安定性が抜群で始終同じを示すが、突然電池切れを起こす。乾電池は徐々に電圧と電流を下げていくので、使っていて「電池がなくなってきた?」と感じるはず。寿命を比べると、乾電池がおよそ14時間なのに対して、USB電池は5時間。単一形の場合は、乾電池の1/5の容量だったが、単三形の場合は1/3程度になっているようだ。

単三形USB電池の、低負荷時の電圧変化
単三形USB電池の、低負荷時の電流変化

 USB電池は、高負荷でも電圧・電流ともに安定している。とくに電流は寿命近くになると、乾電池と倍近くの差があり、大電流の機器でも最後まで安定して動作できる。また低負荷に比べ乾電池との寿命の差が短くなり、1/2程度になっている。

単三形USB電池の、高負荷時の電圧変化
単三形USB電池の、高負荷時の電流変化

 これらの特徴から、カメラのストロボ用として最適と言えるだろう。重量も軽く、チャージ時間が長くなることもない。連写でストロボを使う場合など、乾電池より有利なはずだ。USB電池の弱点は、突然まったくストロボをチャージできなくなる点。乾電池なら、チャージ時間が長くなるなどで、電池がなくなってきたかな? と判断できるが、USB電池は電池があるかないかの二者択一だ。

 電池残量計がある機器なら大丈夫かというと、実は残量計はまったく役に立たない。直前まで100%だった残量が、突如0%になるのだ。もちろん低負荷での利用も有用だが、ずっと電池を入れっぱなしにしていると、あるとき突然使えなくなるので注意。電池が切れるとマズいものなら、必ず予備を持ち歩くようにしたい。

単四形USB電池の特徴と使いどころは?【ボイスレコーダー向け】

 同様にして単四形USB電池の特徴を調べてみよう。ただし単四形になると、リモコンなど、実験の低負荷以上に低負荷な利用が多いので、どこまで参考になるか分からない点もあるが、目安としてはICボイスレコーダーあたりを想定。高負荷は、温めたミルクを泡立てるミルクフォーマーあたりかと思う。

単四形USB電池の外観、単3のUSB電池に比べると急に容量が少なくなる
おもに低負荷、少電流の機器に向いてる
「AAA」はアメリカ表記で単四形のこと

 さてUSB電池の低負荷時の特徴を見てみると、初期電圧が乾電池に比べるとやや低めだが誤差レベル。電流は乾電池より高い値で安定している。また寿命は乾電池のおよそ1/3なので、単三形USB電池と変わらない使い勝手だろう。ただ単三形に比べるとパッケージが細いので、容量も少なめなのだ。

単四形USB電池の、低負荷時の電圧変化
単四形USB電池の、低負荷時の電流変化

 いっぽう高負荷の場合は、乾電池より高い電圧を維持し、電流も途中不安定になるも寿命まで高い値を示している。さらに寿命は、ほぼ1/2と長く使える。

単四形USB電池の、高負荷時の電圧変化
単四形USB電池の、高負荷時の電流変化

 単三形USB電池と同様、突然電池切れを起すので、機器についている電池残量計は役立たない。しかしICボイスレコーダーやデジタルガジェットにも十分使える印象だ。また小型のLED懐中電灯などに使えば、乾電池を使うより明るさが安定。さらに電動歯ブラシなどでも、力が弱くなったかな? と感じる前に電池切れになるので、乾電池より使い勝手がいいハズ。ただし防水性はないので、歯ブラシ側がしっかり防水できるかを確認する必要がある。

006P形USB電池の特徴と使い道【測定器/小型アンプ向け】

 そもそも充電式の006形電池というのは少ないので、この電池が役に立つシーンはたくさんある。ただ006P形電池を使う機器は少ないので、喜ぶのはエンジニアの皆さんのみだ(笑い)。

 今回の電池実験のように、なぜか006P形電池が多いテスターなどの測定器を長期間使う場合が低負荷、簡易無線機(トランシーバ)が高負荷として、見てもらえばいいだろう。なにしろ乾電池の006P形電池はバカっ高っかいので、充電式にするとランニングコストが安くあがるのだ!

9Vの006P形USB電池の外観、テスターや温度計など測定器でよく使われる
乾電池が高く、100円ショップのはちょっと避けたい、となると充電式は助かる

 さて低負荷の特性は、ご覧の通り。電圧、電流ともにピタリと安定。寿命も乾電池にかなり近く、75%程度と長持ち。こりゃ凄い!

006P形USB電池の、低負荷時の電圧変化
006P形USB電池の、低負荷時の電流変化

 さて高負荷の場合は、ちょっと微妙……。USB電池の電圧が、乾電池の寿命となる終止電圧の5.6Vをバンバン下回る瞬間があるので、機器にあまりよろしくないだろう。無線機などに使うと、電波が強くなったり弱くなったりするので、音声が不明瞭になる恐れもある。またラジコン関係で使うと、電圧が低くなったときにアンコントローラブルになる可能性もあるので、使わない方がいいだろう。乾電池より寿命が長いというメリットは、電圧・電流が不安定というデメリットに打ち消された感じだ。

006P形USB電池の、高負荷時の電圧変化
006P形USB電池の、高負荷時の電流変化

 オーディオ好きなら、この006P形のUSB電池をヘッドホンアンプに使いたい! と思う方も多いだろう。そこで一応ノイズのデータも取ってみた。300mA程度の電流なら、DC/DCコンバータで電圧調整をしているものの、9.3~9.4V程度のキレイな直流が出てくる。
※フツーに使う場合は、以下のノイズの記述は無視できるレベルです。オーディオ好きの方以外は、読み飛ばしてかまいません。

乾電池よりはノイジーだが、ヘッドホンアンプに使ってもハムノイズは乗らないと思われる

 しかし負荷大きくして1A近くを流すと、「あちゃー!」という感じに。電力不足なのか、0.2秒に1回の周期でパルス状のノイズが出る(先のオシロスコープの波形とは時間軸のスケールが違うことに注意!)。

負荷をかけるとノイズが乗ってくるので、あまりハイパワーなアンプには向かない。というか触れ幅5V近くあるので、電源としてダメ(笑い)

 006P形USB電池同様に、1.5V系の電池でも、負荷によりノイズに差があるかを調べたのが、次のオシロスコープの波形。どちらも時間軸のスケールは同じにしている。

300mA程度ならキレイな直流、出力はほぼ1.5V
1A流すと触れ幅0.3V程度のサイン波のノイズが発生。DC/DCコンバータから出るノイズのようだ

 さて006P形USB電池の使い道は、やはり測定器で長期のデータログを取る場合などがベストだろう。あとは省電力の無線機用としてギリギリ使えるという感じだ。大電流が流れる高負荷の機器には、あまり適していない。

18650形の使い道はない?【自作向け】

 18650形USB電池は、そもそも18650形が乾電池じゃないので、使い道が微妙。なのでグラフは、高負荷と低負荷をまとめたものとしている。

18650形USB電池の外観
あまり使い道はないけれど、自作で便利に使えるかもしれない

 これまでの乾電池タイプと違い、DC/DCコンバータを内蔵していない生のリチウムイオン電池の出力になっている。そのため電圧が乾電池のように徐々に下がっていくのが特徴だ。また寿命になると供給を遮断する保護回路もはいっていないようなので、自分で電圧を見て終止電圧(3.2V程度)になったら使用をやめるなどの回路を組んでやる必要がありそうだ。

18650形USB電池の、低・高負荷時の電圧変化
18650形USB電池の、低・高負荷時の電流変化

 自作で3V(もしくはその倍数)前後の機器を動かすための、大容量バッテリとして使うのがメインになるだろう。なお18650形は、充電器とセットで秋葉原で売っている。保護回路も有無も選べるので、興味ある方は部品屋などで探してみるといい。

ニッケル水素電池とUSB電池の使い分けは?

 単三形電池としてエネループなどのニッケル水素電池を使っている方も多いはず。そこで、その違いにも軽く触れておこう。次のグラフはこれまで同様の低負荷、高負荷のグラフにニッケル水素電池のグラフを加えたものだ。

実験に使ったのは、パナソニックのエネループ
標準タイプは容量1,900mAh

 まず低負荷を見てみると、電圧の減り方がやはり特徴的。バッテリ残量計つきの機器では、乾電池(アルカリ)を使うと徐々に電池がなくなっていくのが見える。しかしニッケル水素電池は、フル充電してもすぐに残量半分を示し、乾電池より長いこと残量半分を示していると思うと、急速に残量0になるという挙動をする。USB電池はさらに極端で、始終残量100%で、突然残量0になる点に注意だ。バッテリの寿命は、乾電池→ニッケル水素電池(1900mAh)→USB電池の順に短くなる。

乾電池(アルカリ)、ニッケル水素、USB電池の、低負荷時の電圧変化
乾電池(アルカリ)、ニッケル水素、USB電池の、低負荷時の電流変化

 高負荷の場合は少し異なり、ニッケル水素電池が粘り強く、乾電池より高い電圧で長持ちする。ただニッケル水素電池は電流が低いので、乾電池駆動したときより、モーターの速度が遅く感じられる。電池式のシェーバーなどでは、顕著だろう。USB電池をシェーバーに使うと、いつも振るパワーで髭を剃れるが、突然電池切れする「ツンデレ」シェーバーになる。

乾電池(アルカリ)、ニッケル水素、USB電池の、高負荷時の電圧変化
乾電池(アルカリ)、ニッケル水素、USB電池の、高負荷時の電流変化

 高負荷のカメラのストロボなどで、それぞれの電池を使うと、つぎのような特徴が出るだろう。

乾電池(アルカリ)、ニッケル水素、USB電池の、ストロボ利用時の特徴

 ストロボに使うとすると、通常の利用は乾電池。長時間ロケで場所を移動しながら、だらだら撮影するならニッケル水素電池という選び方がいいかもしれない。短期集中で結婚式のケーキ入刀やら、指輪交換の瞬間などを連写する場合などは、チャージが早いUSB電池が効果的だ。さらに電池が軽いので機動力も増す。

旅行用なら断然USB乾電池が軽くてオススメ!

 なお繰り返し充電回数は、USB電池には表記されていなかったがリチウムイオン電池ということを考えるとおよそ500回ぐらい。かたやニッケル水素電池はおよそ2,000回。価格もあわせ、全体のコストパフォーマンスを考えると、次のようになる。

ニッケル水素とUSB電池のコスパ比較

 ここまで考え始めると、筆者でもどちらが得かどうかはもう分からない。ただひとつ言えるのは、旅行に持って行くなら軽くて充電器のいらないUSB電池。ニッケル水素電池の4本パックはずっしり重いからだ。加えて充電器も持ち歩くとなると荷物もかさばる。

ニッケル水素は、電池自体も重い上に充電器も持ち歩かなければならない
USB電池ならUSBケーブルさえあれば、普段持ち歩いているモバイルバッテリからも充電OK。1本充電するのに必要な電流は、0.3~0.5A程度

 ただし、USB電池をまとめて充電するとなると、USBケーブル数本と何口かあるUSB-ACアダプタなどが必要になる。なお充電時の電流を調べたところ、およそ300~500mA(0.3~0.5A)程度だった。1本ずつ充電するなら、昔のガラケー用の充電器でも十分だ。まとめて4本充電する場合は、最大2A必要になるので1.2Aや2.4Aの出力を2分配や4分配にするUSBケーブルを別途購入すればいい。2.4A出力できるモバイルバッテリもたくさんあるので、コンセントがないところでも充電できるのが便利だ。

藤山 哲人