家電レビュー

小さめポタ電のエコフローRIVER 3、新ソーラーパネルと合わせてどう役立つ?

今回使ったセット。左が「RIVER 3」、右が「RIVER 2」、下が「160W両面ソーラーパネルGen2」

8月8日に宮崎県沖の日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、同日南海トラフ地震臨時情報が発令された。それだけでも大変なのに、翌日には神奈川県南部を震源とするM5.3の地震が発生し、不安の上積みともいえる状態になった。

それ以降、関東地方は線状降水帯による豪雨で交通機関がマヒし、埼玉県の一部では落雷で停電も発生。さらには筆者の住む宮崎市では、8月28日から台風10号の接近/上陸とともに、竜巻による甚大な被害が発生した。いたずらに不安を煽るつもりはないが、日本全体に自然災害不安が高まってきているのは事実だろう。

何に対してどこまで備えるのかは難しいが、まずこれまで手薄だった「電源の確保」はそろそろ各家庭でも検討していいタイミングかもしれない。そんな折、ポータブル電源の大手EcoFlow(エコフロー)から、小型なRIVERシリーズの新モデルが9月1日より発売された。

新モデル「RIVER 3」は、既存モデルで最小だった「RIVER 2」の後継機で、約30%小型化された。現時点で2種類のバリエーションがあり、実店舗販売用のRIVER 3は容量245Whで32,890円、ネット販売用のRIVER 3(230)は容量230Whで30,900円となっている。今回は実店舗販売モデルをお借りすることができた。

そしてもう一つ、こちらは既発売だが今年の新製品となる「160W両面ソーラーパネルGen2」もお借りした。この2つの組み合わせで、どういったときに役立ちそうかを試してみたい。

デザイン一新、さらに置きやすくなったRIVER 3

筆者は2022年にRIVER 2と110Wソーラーパネルを買って、日々運用中だ。

他にもう少し大型の「RIVER 2 Pro」も所有しているが、避難の必要があって電源を持ち出すとなれば、重量が約8kgあるRIVER 2 Proは非現実的だと考えている。他にも避難荷物があるのに、プラス8kgもあるのでは、片手が塞がってしまう。多少非力でもRIVER 2の3.5kgなら、荷物の上に載せるなどして背負って逃げられる。

今回発売されたRIVER 3は、重量は変わらないものの、デザインが一新され、高さがかなり抑えられた。

RIVER 2(左)とくらべてかなり高さが抑えられたRIVER 3

背面にハンドルがある点は変わらないが、前作がハンドルの下に電源入力部があり、ハンドルの出っ張りで放熱口とコネクタをガードするという設計だった。一方RIVER 3では、ボディがハンドル部まで出っ張り、ハンドル自体はいわゆる「穴」になっている。また電源入力部は右側に変更された。エアフローも左側吸気・右側排気となっているため、背面をぴったり壁などにくっつけられるようになった。

背面の作りもだいぶ違う
入力ポートの配置に大きな違いが

ただ、こうした設計変更だけではここまで小型化できない。小型化の秘密は、インバーター部に窒化ガリウム(GaN)を採用したことにある。ご存じのように昨今のUSB出力可能なACアダプターが、大容量ながらかなり小型化されてきているが、これはGaNを採用しているからである。RIVER 3もその恩恵に預かっているというわけだ。

RIVER 2と3のスペックを比較してみる。

            RIVER 2    RIVER 3

容量            256Wh       245Wh
重量            約3.5kg       約3.5kg
サイズ        24.5×21.5×14.5cm    25.5×21.2×11.3cm
AC入力            100-120V 50Hz/60Hz 8A
DC入力      11-30V 110W、最大8A   12V/24V 100W、最大8A
USB-C入出力 5/9/12/15/20V 3A 60W   5/9/12/15/20V 5A 100W
DC 出力      12.6V 8A、最大100W   12.6V 10A、最大126W
USB-A出力        5V 2.4A各ポート最大12W
AC出力          純正弦波、合計300W(サージ600W)
X-Boost                450W
電池素材           リン酸鉄リチウムイオン
寿命             3,000回以上(80%+)
簡易UPS            30ms      20ms
充電温度範囲            0℃~45℃
放電温度範囲            -10℃~45℃

USB-CとDC(シガーソケット)の入出力が多少強化されている一方で、容量は少し下がっている。だがGaN採用インバーターは従来よりもロスが少ないことから、10W出力時で1.5倍、50W以上の出力で1.1倍長持ちするという。RIVER 2と比較した容量減は、一般販売用モデルで約95%、ネット販売専用モデルで約90%なので、容量は減っても出力結果はほぼ同等と考えていいだろう。

多少の性能アップと高さが抑えられただけ、という結果のように見えるが、実は高さが重要である。筆者が所有している車はドノーマルのスバル インプレッサだが、RIVER 3の高さなら運転席の下のスペースにすっぽり収まった。これまで運転席の下などゴミが溜まるだけのデッドスペースに過ぎなかったが、RIVER 3がすっぽり収まることで、ここが電源スペースとして活用できる。

RIVER 3の高さなら運転席の下のスペースにピッタリ収まった

RIVER 2ではここには入らない。車で遠方に避難ということを考えれば、電源の置き場所をわざわざ確保する必要がないのは、小さい車ほどメリットが大きい。

災害対応を考えれば、頑丈さや安全性も考慮すべきだろう。RIVER 3は1.5mの耐落下性能を備えている。1.5mの高さから落としても破損しないということは、地震でその高さから落下しても使えることになる。

また安全性については、内部のバッテリーパックにIP54の防水性能を持たせている。本体は電源端子等がむき出しなので、浸水してしまったら保護機能が働いて使えなくなってしまうが、バッテリーパックの水没による発火や爆発といった事故が起きないようになっている。

両面パネルは効果があるのか?

もう一つ、ずっと試してみたかったのが、今年2月に発売された「160W両面ソーラーパネルGen2」だ。ポイントは、表面だけでなく、裏面にもソーラーパネルを配しており、反射光を拾って発電できることだ。

左が「160W両面ソーラーパネルGen2」、右は筆者私物の「110Wソーラーパネル」。1枚当たりのサイズがだいぶ違う

表面のみのパネルに比べて、約25%発電量が増すというのがウリだが、まず素朴な疑問として、裏面があるだけでそんなに効果があるのかな、というところがあった。さらにいえば当然片面だけのパネルより価格的には割高になるわけで、それはコストに合うのか、というところも気になるところだ。

そこで今回は、裏面からの発電の有り無しでどれぐらい違うのか、実験してみた。充電先は、RIVER 3である。

60W両面ソーラーパネルGen2には、パネル面に角度調整用のガイドが付けられている。黒い点の影が下の○のところに収まっていれば、太陽に対して垂直に向けられている状態だ。

太陽と垂直に設置できるよう、ガイドが付けられている

まず太陽に向けてばっちり角度を決めて、以下の3パターンで試してみた。

【1】通常設置
【2】裏面を黒布でマスク
【3】下にアルミシートを敷く

結果は【1】【2】【3】とも110Wで、なんと裏面があってもなくても変わらないという数値になった。

通常設置状態と発電量
背面を暗幕で覆った発電量
底面にアルミシートを敷いた発電量

どういうことなのかEcoFlowに問い合わせてみたところ、裏面パネルは太陽光の真裏だと反射が拾えないので、発電しないとのことだった。むしろ、太陽光の角度から大きくズレた場合に効力を発揮するのだという。

そこで別の日に、太陽光の角度から30度ほどずらした状態で再度同じ実験をしてみた。すると【1】通常発電で100Wのところ、【2】裏面をマスクした状態では91Wに下がった。また【3】アルミシートを敷いた場合では、110Wに増加した。裏面がない状態では91Wしか発電できない角度で設置しているわけだが、裏面があることでだいたい10%増で発電できる結果になった。

通常設置状態と発電量
背面を暗幕で覆った発電量
底面にアルミシートを敷いた発電量

通常のソーラーパネルは、設置位置や角度を固定した場合、午前中で太陽の位置が低い時はあまり発電せず、正午に向かって山型に発電量が増え、夕方になるにしたがってまた落ちていくという特性になる。一方両面パネルでは、太陽の角度に余り関係なく、おおむね均等に出力が得られるという強みがある。いちいちパネルの角度を調整していられないキャンプ時や避難時には、ありがたい特性だ。

価格面で検討してみると、160Wの片面のみのパネル、「160W片面ソーラーパネルGen2」が直販価格42,900円、一方こちらの両面パネルは47,300円なので、その差は1.1倍。価格が高くなるぶん発電量が増えて、まさにパフォーマンスどおりの価格設定なのがわかる。さらにいえば、100円ショップで買えるアルミシートを敷くだけでさらに10%アップするので、これはやらない手はない。

折り畳み式パネルとしては若干大型だが、ほっといても発電量が落ちないというのは、なにかとやることが多いキャンプや避難といった際には助かる特性だ。

ポータブル電源入門機として

筆者も昨年自家発電デビューした組み合わせが、RIVER 2と110Wソーラーパネルだった。マンション住まいでは無理かと諦めていたところを、この組み合わせで様々な知見を積み、今では仕事で使用する機材すべて自家発電で賄っている。

新発売のRIVER 3は、コンセントがないところでAC機器を使うという日常使いにちょうどいい。筆者は畑に持っていって、AC電源しか使えない電動草刈り機などを動かしている。ソーラーパネルだけでフル充電にできる程度の容量だし、非常用電源にもなる。

ただRIVER 3と組み合わせるなら、60W両面ソーラーパネルGen2は若干オーバースペックだ。すぐ満充電になってしまうので、日照時間がもったいないことになる。両面パネルと組み合わせるならもうワンランク上のバッテリーを選ぶべきだし、RVER 3で運用するなら110Wぐらいのパネルとの組み合わせが妥当だろう。

また折り畳み型はあくまでも一時的に設置するためのもので、常設を考えるなら据え置き型パネルのほうがコスパはいい。そのあたりは、日常的にどのような運用を考えていくかで変わっている。

EcoFlowはセールやキャンペーンを頻繁に行なっているので、その機会を狙って少しずつ買い足していけるのがメリットだ。まずはとりあえずポータブル電源とはどういうものか、使いながらどう役立つかを知っていくきっかけとして、RIVER 3ぐらいがちょうどいいだろう。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。