家電レビュー
家が発電ステーションに! エコフローのDELTA 2 Maxとソーラーパネルで電気を賢く使う
2023年12月18日 08:05
筆者は現在EcoFlow(エコフロー)の家庭用ポータブル電源「RIVER 2 Pro」とソーラーパネルを組み合わせ、仕事で使用する機器の電力はすべて自家発電で賄っている。そんなことを色々なところで記事にしていたら、EcoFlowが5月にリリースした新バッテリー、「DELTA 2 Max」をお借りできることとなった。
容量は2,048Whで、公式サイトでの価格は254,100円。EcoFlowのポータブル電源は、小規模なものはRIVERシリーズ、中型~大型のものはDELTAシリーズに分かれている。
ポータブルバッテリーのレビューとして、昨今はキャンプに持ち出して様々な電気製品を試すというのがトレンドとなっている。ただわざわざ遠くまで出かけて電気製品を使うことに関して違和感を持つキャンパーも多いのではないだろうか。
DELTA 2 Maxは重量が23kgもある大型電源なので、1泊程度のキャンプに持ち出すのは現実的ではない。また、20万円以上するバッテリーを、非常用電源してずっと遊ばせておくのももったいない。そこで今回は、一般家庭で日常的に利用する例をご紹介したい。
トレンドは自家消費
日本で太陽光発電がもてはやされたのは2012年、東日本大震災のあとのことだ。このとき、再生可能エネルギーで発電された電力を市場価格より高く買い取ることで普及を促進する「再エネ固定価格買い取り制度」(FIT)が実施され、多くのメガソーラーが立ちあがった。また個人宅でも屋根にソーラーパネルを設置するケースが増えた。
だが現在この買い取り価格は大幅に減額されており、系統電力への「売電」にメリットがなくなった。さらに天気のいい昼間にバンバン発電しても春秋は需要がないので、買い取りを抑える「出力制限」も実施されるようになっている。
屋根に多数のソーラーパネルを載せた家庭クラスの発電でも、もはや売電ではなく自家消費のほうが経済性が高いといわれ始めている。またコロナ禍以降キャンプや車中泊がブームだったこともあり、100W~200Wクラスのソーラーパネルがかなり安く手に入るようになった。
屋根にガッチリ固定するような本格的な設置でなくても、仮設程度で十分ソーラー発電の恩恵が得られるようになったというのが、昨今の傾向である。そこで必要になるのが、日中の発電を貯めて自宅で使えるようにする、大容量ポータブル電源が必要になるわけだ。
DELTA 2 Maxは、DELTA 2シリーズで最大容量を誇るバッテリーだ。容量は2,048Whで、出力は合計2,000W。電圧を下げることで擬似的に高出力動作をさせるX-Boostを使えば、一部の家電に限り2,400Wの製品が使える。出力は、ACが6つ、USB-Cが2つ、通常のUSB-Aが2つ、急速充電対応USB-Aが2つ、シガーソケット1つ、そのほかDC12Vや24V駆動でよく使われる同軸の「DC5521」端子が2つ。
バッテリーは長寿命で昨今トレンドとなっているリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用。約3,000回の充放電が可能で、毎日使っても10年使えるというのがウリだ。重量は約23kgで、底部にはキャスターのような機構はないため、設置や移動は2人がかりが望ましい。
入力はACが1,500W、ソーラー充電ポートは500Wが2つ。シガーソケットからソーラー充電ポートに接続するためのケーブルも同梱されている。
加えてDELTA 2 Maxには、専用の拡張バッテリーもある。底面積を同じにした専用品で、容量は同じく2,048Wh。公式サイト価格では、149,600円となっている(記事執筆時点)。DELTA 2 Maxはこれを2つ接続でき、最大6,144Whまで拡張できる。
バッテリーコントロール、RIVERシリーズとの違いは?
筆者はRIVER 2、RIVER 2 Proと2台続けてEcoFlow製品を購入している。その理由は、バッテリーコントロールが優れているからである。
一般的なポータブル電源は、入力にAC電源とソーラーパネルを同時に接続すると、AC電源優先で充電するか、両方から同時に充電する。AC電源からの入力が大きいので、1時間程度で満充電になってしまい、それ以降ソーラーパネルからの電力は受け付けなくなってしまう。
これは充電してすぐ持ち出すとか、停電前に充電してしまいたいといった用途を想定したものだ。つまり家庭内に常設し、ACとソーラーパネルの両方で効率的に運用することを想定していない。
だがEcoFlowの電源には、「バックアップ予約」という機能がある。これは設定した残量以上の時はソーラーパネルだけから充電し、設定値を下回ったときだけACから充電するという機能で、今年の9月頃のアップデートで新たに追加された新機能だ。これを使えば、日中はソーラーパネルから充電し、夜に電気を使って10%を下回ったときにACに切り替わる。使う側は特になにも設定しなくても、入力が勝手に切り替わるわけだ。
この機能がない時は、大変だった。昼間はバッテリーからACを物理的に抜いてソーラーパネルから充電し、夜にバッテリーが空になったらおもむろにケーブルを繋ぎ直すという手間がかかっていた。当然バッテリーが空になったら電源がバサッと切れるので、毎回ビックリする。この機能がない他社製バッテリーを使っている人は、今もこうやって毎回ビックリしながら使っているはずである。
今回DELTAシリーズを初めて使ってみたが、バッテリーコントロールはRIVERシリーズほぼ同じで、バックアップ予約機能も問題なく使用できた。唯一違うのは、本体側AC入力脇にある急速充電スイッチをOFFにしないと、ACからの充電ワット数が指定できないことだ。RIVERシリーズではアプリ上で充電ワット数が自由に調整できるが、DELTAシリーズは急速充電がONになっていると常に最大入力で充電となる。
【訂正】初出時、DELTAとRIVERの差異について「唯一違うのは、ACからの充電ワット数が設定できないこと」としていましたが、正しくは、上記の通りDELTAは本体スイッチで指定ができるため、記事を訂正しました(12月20日)
現在筆者宅のソーラーパネルは、2枚をベランダに仮設で置いているだけなのだが、朝夕を除けば晴れた日はだいたい180W前後発電できる。一方仕事に使用する電力は80W程度なので、100Wぐらい余剰電力がある。ポータブルバッテリーから電源を取りつつ、この余剰電力を充電していく。夕方以降発電しなくなってからは貯めた電気を消費して、だいたい1日でトントンになる格好だ。
DELTA 2 Maxのメリットは、ソーラー入力だけで合計1,000W対応できることだ。一方RIVERシリーズ最大のRIVER 2 Proでは200Wに留まる。筆者宅の発電量ではRIVER 2 Proぐらいでちょうどいいが、入力が大きいDELTAシリーズなら、400Wパネル2枚設置という選択肢も出てくる。
専用拡張バッテリーを接続すると、本体側ではそれぞれの残量表示となるが、アプリ上は一体のバッテリーとして表示される。どちらが先に充電される、消費されるというルールはなく、ユーザーがあまり細かいことを考えなくても一体として動くように、自動調整されるようだ。
電気が安い時間帯に充電して電力シフト
電気料金は電力会社によって様々なプランがあるが、深夜電力が安いプランは大抵用意されているはずだ。東京電力の「夜トク8」プランだと、午後11時から午前7時まで、1kWhあたり日中よりもおよそ11円安い。
筆者宅も対象地域である九州電力では、太陽光発電が余る秋口の天気のいい日に限り、電気のタイムセールともいえる「使ってお得・エコチャレンジ」を11月末まで実施していた。これは特定の時間帯に電気を使って電力シフトさせると、使用量に応じてPayPayのポイントで還元するという仕組みである。特にオール電化向けプラン利用者に対しては、対象時間の利用料金が実質無料になっていた。
こうした電気が安い時間帯に一気に充電してしまい、それ以外の時間帯に利用することで、電力シフトに貢献しつつ電気料金も安く上げるという使い方ができる。これに対応する機能として、EcoFlowのバッテリーには充電の自動化機能が実装されている。まだベータテスト中の機能であるが、設定した日時にのみ、ACからの充電をONにできる。
このエコチャレンジは今のところ各自が手動で応募して実践するしかないが、将来的に系統電力がスマートグリッド化した際には、自動的に各家庭にあるバッテリーで電力シフトさせるような仕組みも可能になるだろう。各家庭に大容量バッテリーがある世界というのは、そう遠くない未来の姿なのかもしれない。
2024年以降の電気料金に目を向けると、2024年1月から北海道電力、東京電力、中部電力、九州電力、沖縄電力の5社で値上げが発表されている。また2024年5月には政府による電気料金の補助政策「激変緩和措置」が終了することから、電力会社全社でさらなる値上げが行なわれる見通しだ。在宅勤務の広がりにより、自宅仕事で電気を使わざるを得ない方には、何らかの自衛策が必要だろう。
EcoFlow公式サイトでは、12月12日から27日まで、クリスマスキャンペーン2023としてセールが行なわれる。公式サイトやAmazon公式店、楽天市場公式店では、DELTA 2 Maxの単体やソーラーパネルセットが大幅な割引で販売されていた(記事執筆時点)。
この機会に、自家発電や電力シフトなど、なんらかの自衛策を検討してみてはいかがだろうか。