家電製品レビュー

2眼カメラとAIで障害物を回避、ロボット掃除機「Roborock S6 MaxV」が賢い

ロボット掃除機「Roborock S6 MaxV」

あると便利だが……

筆者は決して綺麗好きではないのだが、単にガジェット好きなので「ルンバ」の類似品が多数出回り始めた頃から使っている。

当然iRobotのルンバよりは賢くないものも多いので、ロボット掃除機を動かす前にある程度床に散らばっているものは片付けたり、ロボット掃除機のゆく先々で先回りして片付けたりしていた。また段差が乗り越えられなかったり、土間に落ちたり、カーテンの裾にからまったり、充電ケーブルを巻き込んだりと、「ロボット掃除機あるある」は一通り経験している。

もうちょっと賢い掃除機を使ってみたいと思っていたところ、9月11日より発売が開始されたBeijing Roborock Technologyの最上位モデル「Roborock S6 MaxV」をお借りすることができた。発売元はSB C&Sで、ソフトバンクセレクションでは通常価格87,780円(税込)のところ、9月30日までのキャンペーンで82,780円となっている。

前方に2眼カメラを搭載し、障害物の位置や距離を三次元的に測定できるほか、その障害物が何であるかをAIによって見分け、適切な回避行動を取るという。その効果はどのようなものか、早速試してみよう。

スマートなボディ

本体はロボット掃除機によくある円盤型で、これまで筆者が使ってきたものより多少大きい。しかし本体の厚みがあまりないので、スマートな印象だ。天板に出っ張っているのはレーザーセンサー部である。

Roborock S6 MaxV。底面積は大きいが高さが抑えられたボデイ
上部の出っ張りはレーザーセンサー部

特徴的な正面の2眼カメラはカバーガラスに覆われており、ぶつかって破損する心配はない。天板に3つのボタンがあり、清掃開始、ホームへ戻る、スポット掃除といった機能が本体だけで利用できる。

正面には2眼カメラ
上部には3つのボタン

サイドブラシは右側のみで、同じく右側にウォールセンサーがある。吸込口は広くとってあり、メインブラシで掻き込むような構造になっている。タイヤは径が大きめで、多少の段差は乗り越えられる。

サイドブラシは右側のみ

天板を開けると、ダストボックスが見える。容積は約460ml。一度に掃除する面積にもよるだろうが、毎回掃除するたびに空にしたほうが良さそうだ。

細長いダストボックス

本機は拭き掃除もできるようになっている。後ろのアクリル部分を引っ張り出すと、水を入れるタンクが現れる。底部にモップクロスを取り付けることで、掃除機で吸引したあと水拭きするという動作になる。もちろん水拭き無しで吸引掃除だけでも使用可能だ。

後部には水拭き用のタンク
底部にモップクロスを装着すると水拭きも可能

充電ドックは非常にシンプルでコンパクト。ACアダプタではなくコンセント直刺しなのもありがたい。また水拭き用マットを装着したままで床がふやけないよう、防湿マットも付属している。

マットで床がふやけないよう、防湿マットが付属

優れたコントロール性能

本体のセッティングは、逐一音声ガイダンスで案内してくれるので、わからなくなることはないだろう。ダストボックスや水タンクの装着時にも、きちんとセットされたかを音声で知らせてくれる。

セットアップの手順は音声で確認できる

本機の売りは、スマホ連携による機能コントロールだ。まずは部屋のマップづくりからである。最初に使用する際に、先に部屋のマップを作成する必要がある。

ペットの有無で動作が変わる

作成を開始すると、充電ドックから離れ、周りを見渡す動作をすると、大まかに部屋の形を把握しているのがわかる。これは本体上部にあるセンサー部からレーザーを照射して、おおまかに壁の位置を把握するからである。

動作開始直後の様子。レーザーで大まかに部屋の構造を測っている

続いて実際に掃除しながら壁沿いに移動し、部屋のサイズを把握しているようだ。同時に障害物の有無を見分けて、マップ上に記録していく。部屋の状況を把握したあと、左右に走行して掃除してくれる。

壁沿いに移動しながら、部屋のマップを作っていく
マップを作りながら、掃除もしていく

動作音は、かなり小さいほうだ。また走行スピードもゆっくりで、障害物への当たりもソフトだ。ただ柔らかいもの、軽いものに対しては一応押してみて、押せるようならどんどん押す、というスタイルのようである。

またAIにより、障害物の種類を見分ける機能もある。ただ拙宅にある障害物で見分けられたものはテーブルタップと、玄関ポーチも靴ぐらいしかなかった。一応ペットのフンも見分けられるそうだが、フンを部屋に設置すると死ぬほど奥さんに怒られるので、テストできなかった。

動作で驚いたのは、車幅判断能力である。ダイニングテーブルには椅子が4脚あり、テーブルも含めると20本の足が密集しているわけだが、そこの間を自分が通れそうなところを見つけてどんどん掃除していく。当たり判定型のロボット掃除機を使っていたときには、こういうところに一度はまり込むとバッテリーが無くなるまでループしてしまうので掃除できなかったものだ。障害物の回避だけでなく、抜け出し方も非常に賢い。

椅子の足の間も、入れそうな幅のところを正確に抜けていく

本機はカメラがついているので、それを使ってスマホ上で状況確認ができる。留守中に動作させた場合も、掃除しながらペットの位置や散らかり具合を確認できる。また音声メッセージもスピーカーから流すことができるので、ペットに声がけしたりできる。ただし本体にマイクはないので、向こうからの声は聞こえない。

動作状況をカメラで確認
初回の掃除で、こんなにペットの毛が

部屋ごとに細かく設定可能

さてマップができたら、実際の部屋の状況と見比べながら、バーチャルウォールや水拭き禁止エリアを設定していく。メーカーによっては、物理的な器具としてバーチャルウォールを購入しなければならないタイプもあるが、本機はアプリだけで設定できる。

我が家はほとんどがフローリングとはいえ、ラグが敷いてある部分が多いので、その上は拭き掃除してもらっては困る。そこでカーペットの位置に水拭き禁止エリアに設定した。

バーチャルウォールもアプリ上で簡単設定
出来上がった我が家の設定

さっそく設定してみたのだが、動作としてはたしかに忠実に動く。だが水拭き禁止エリアのせいで、部屋の反対側へ行けなくなってしまった。そこでラグの位置を少し変えて隙間を作ってみたところ、無事反対側にも行けるようになった。

ラグを少しずらして抜け道を作った

室内マップは、最初にドックを置いた地点を基準に作られる。ドックの位置を変えると、最初に自分の位置を把握するために少し動き回ったのち、既存のマップを自動的にロードしてドックの位置を修正する。

とはいえ、水拭きモードのままだとラグの上は一生掃除してくれないので、基本は水拭きなしで使うことになるだろう。掃除の途中で水拭きありなしに切り替えられたらいいのだが、水拭き用マットは手動で着脱するしかない。いくらタンクからの水量をゼロに設定しても、ビショビショのマットがくっついていることには変わりないのである。1回部屋全体をクリーニングしたのち、改めてマットを取り付けてフローリング部分だけを水拭きモードで掃除するという段取りになりそうだ。

そのほか、掃除する部屋の順番を指定したり、特定の部屋だけを掃除させることもできる。部屋ごとに吸引力を変えたり、水拭きの水量を変更できる。今回自動で作られたマップでは、リビングとそれにつながる2部屋およびキッチン部分を一つの部屋とみなしていたが、あとで自分で部屋を区切ることもできる。

本機はワールドワイド製品だが、日本独自の機能として、音声ガイダンスの声が変えられるという変機能がついている。追加できる音声は、博多弁(男女)、関西弁(男女)、京都弁(女性)、津軽弁(男性)、アニメ声、男性執事の8種となっている。順次配信予定ということで、現在はまだ配信されていないようだが、今後のお楽しみである。

ロボット掃除機は、あれば掃除が楽になることはわかっていながら、何かと床が散らかっている我が家では無理と導入を諦めている方も多いと思う。しかしRoborock S6 MaxVは、かなり賢く物を避けてくれるロボット掃除機だ。カーペットの端がめくれたりということはあったが、何かを倒したり壊したりということもなく、コード類を巻き込んで立ち往生することもない。ずっと見てなくても安心していられる掃除機である。

ロボット掃除機は、消耗品さえ交換していれば耐用年数はかなり長い。初めて買う人も、買い替えを考えている人も、様々なメーカーの選択肢を検討してもいいのではないだろうか。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。