e-bike試乗レビュー
コスパ抜群!! スコットのハードテイルe-MTB「SCALE eRIDE」はお買い得かも
2021年3月19日 07:30
e-bikeのメリットを最も味わうことができるのは、なんといっても山を上り下りするe-MTB。悪路での走破性や下りでの快適性を重視するのであれば、前後にサスペンションを装備した“フルサス”タイプがオススメなのは間違いありません。とはいえ、フルサスe-MTBは性能が良いぶんだけ高価で、導入のハードルが高いのも事実。そして、すべての人がフルサスを必要としているかといえば、そうとは言い切れません。誰もが激しい山道をガンガン上ったり下ったりするわけではないですからね。
オンロードメインで使って、たまにオフロードも走りたいとか、初めてMTBに乗るような人にとってはフルサスe-MTBはオーバースペック。山を走っているうちに、楽しくなってどんどん激しいところにチャレンジしたくなるものですが、それを見越して50万円オーバーのフルサスe-MTBを購入できる人は限られるでしょう。舗装路で乗るには、ストロークの大きなサスペンションは動き過ぎてしまうという問題もあります。
前置きが長くなりましたが、そんな「これからe-MTBでオフロードデビューしてみたい」「普段は通勤や買い物にも使いたい」という人にオススメできるのが、フロントのみにサスペンションを装備した“ハードテイル”と呼ばれるタイプのe-MTBです。その中から、今回はスコット「SCALE eRIDE(スケールeライド)」に乗ってみました。
初めてのe-bikeにピッタリなハイコスパモデル
スコットといえば、フルサスの「GENIUS eRIDE」の登坂能力の高さが印象に残っていますが、638,000円と気軽に買える価格ではありません。「SCALE eRIDE」は、その影に隠れて目立たない存在ですが、360,800円とかなり買いやすい価格のハードテイルモデルです。
フレームはアルミ製で、フロントのみにサスペンションを装備。ドライブユニットはボッシュ製「Active Line Plus」を搭載しています。「GENIUS eRIDE」は前後サスペンションを装備し、最上位グレードの「Performance Line CX」を採用していますが、このあたりが価格差の理由のひとつです。
セレクトされているパーツを見ると、このモデルが想定する使用シーンが伝わってきます。フロントに変速機構を持たないのは昨今のMTBで共通のトレンドですが、リアの変速は9段で、最大ギアは36Tとあまり大きくありません。山の中の激坂を上るよりは、フラットな林道だったり舗装路での走りやすさを重視しているのでしょう。手のひらを受け止めるようなエルゴノミック形状のグリップが付いているのも、操作性よりも快適性を優先していることの現れ。でも、普段は街乗りに使って、週末だけオフロードに足を伸ばすような使い方には都合が良さそう。
個人的には外観のデザインが結構好みでした。直線基調のアルミフレームは、快適性を重視したジオメトリーで欧州での人気も高いもの。グレーにイエローを組み合わせたシンプルなカラーは、山にも街中にも似合う絶妙な配色です。
オフロードライドの楽しさを十分に味わえる走行性能
フォレストアドベンチャー・フジの周辺にある山道で試乗を行ないました。ガイドツアーも開催されるコースだけあって見晴らしは最高。天気も良かったので、常に富士山を見ながら走ることができました。
舗装路では想像以上の軽快な走り心地でした。ノブが低いタイヤを履いているのに加えて、ホイール径が29インチと大きめ(ロードバイクなどの700Cと同じ大きさ)なので、速度の維持がしやすく、アシストも強力なのでクロスバイクのような感覚で走れます。フルサスe-MTBだと、なかなかここまで軽快な感じにはなりません。
そして、オフロードに入っても軽快な乗り心地は同様。この日走ったルートは、ジープロードとかダブルトラックと呼ばれるような、林業従事者のクルマも入ってくるような道なのでハードテイルでもまったく問題なく走れました。ドライブユニットがe-MTB向けの「Performance Line CX」ではなく、「Active Line Plus」だったので上り坂などはどうかな? と思っていたのですが、まったく問題なく上ることができました。むしろ踏み出しのトルクの出方がスムーズなので、オフロード初心者にはこっちのほうが乗りやすいかもと思えるほどです。
帰り道は上ってきたルートを下ります。スピードも乗ってかなり爽快に下って行けるルート。この下りの爽快さは、MTBライド最大の魅力だという人も多いほど気持ちいいもの。楽しすぎて、ほとんどノンストップで麓まで走り切ってしまいました。
ただ、荒れた路面に大きめの石がゴロゴロしているような箇所を下った際には、フロントサスペンションの動きがもう少しスムーズなら……と感じることもありました。ハイスピードな下りでは、やはりコイルスプリングのサスペンションより、エア圧でショックを吸収するモデルのほうがスムーズに動いてくれます。そのあたりは購入してから走る場所に合わせてグレードアップというかカスタマイズすると良さそうです。
実際に舗装路と山道をしっかり走ってみて感じたのは、「SCALE eRIDE」のカバーする範囲の広さ。舗装路はクロスバイクに近い感覚で走れますし、オフロードも想像以上に高いレベルで走破できました。冒頭で述べたように、普段は通勤や街乗りに使い、たまにオフロードも走りたい人には最良の選択肢のひとつになるでしょう。
また、初めてe-bikeに乗るという人も、クロスバイクやミニベロではなくこういうハードテイルのe-MTBを選んでおくと、楽しめるシーンが大きく広がります。近年、クルマの世界ではオフロードもしっかり走れるSUVが人気ですが、そんなイメージでこのモデルを選ぶのもありだと思います。