藤本健のソーラーリポート
太陽光発電システムユーザーはどの電力会社を選ぶべき? 比較サイトで徹底検証!
by 藤本 健(2016/3/25 07:00)
昨今、大きな話題になっている電力自由化。この4月から電力会社を自由に選べるようになる、ということで宣伝合戦も激しくなってきている。もちろん、それぞれの家庭によって、どの会社のどのメニューがマッチするかは変わってくるが、太陽光発電システムを屋根に設置しているユーザーにとってはどれが得なのだろうか? いろいろとシミュレーションしてみたので、今回はその内容について紹介する。
焦らずじっくり決めるのが吉!
「電力自由化はとっても気になるけれど、どこがいいのか分からない……」と迷ったり、焦ったりしている人も多いのではないだろうか? しかし焦る必要はなく、ゆっくり自分にマッチしたところを探せばいい。2016年4月から自由化とはなるが、4月までに"どこかを選ばなくてはならない"のではなく、4月から"選べるようになる"だけのこと。現在は、スタート前のいわば前哨戦なのだ。
確かに「3月中に申し込めば……」といったキャンペーンは各社行なっているが、4月以降はさらにお得なキャンペーンが出てくる可能性も高い。しかも、乗り換えたからといって大して値段も変わらないという人が大半だと思われる。
ただし、今より明らかに安くなる、得になる可能性があるのなら、ぜひ乗り換えたほうがいい。では乗り換えると、いったいいくらになるのか。最近は電力会社の比較サイトがあるので、これらのサイトがどれだけ使えるのかというチェックも含め、代表格である「価格.com」と「エネチェンジ」を試してみた。
いずれも、郵便番号から居住地を特定し、現在の電力会社=東京電力での契約プランを入力した上で、家族構成や昼多く電気を使うのか、平日と週末の電気の使い方がどうなのかなど、簡単な質問に答える。その上で、現在の電気代または電気使用量を入力するものだ。
太陽光発電ユーザーは乗り換えると損!?
筆者の場合、太陽光発電システムを載せていることから、「おトクなナイト10」という料金メニューを使い続けている。そこで、これを選択したのだが、この電気代または電気使用量の入力がちょっと面白い仕組みになっている。
本来であれば、1年分のデータをしっかり入力すべきだが、いずれのサイトも1カ月分だけ入力すれば、自動でシミュレーションしてくれる。試しに今年2月の使用量の検針票をもとに、553kWh、10,436円を入力してみたら、それぞれからお勧めのメニューが表示された。
まず、価格.comのほうを見ると、上から東京電力の「朝得プラン」「半日お得プラン」「夜得プラン」と並び、その次に今のメニューである「おトクなナイト10」、さらに「おトクなナイト8」「電化上手」「ピークシフトプラン」となっている。しかし、これら上位7位まではいずれも現行メニューであり、3月31日までしか申し込めないという。
8位にくるのが、四国電力の「オリーブプラン」なるものなのだが、これは価格.comのシミュレーションによれば1年間で29,894円割高となっており、こんなのを選んだら大損ということになる。第9位の「イーレックス・スパーク・マーケティング」の従量電灯Bは30,363円割高、10位の「ENEOSでんき」は30,966円割高と、いずれも話にもならない結果となっていた。
エネチェンジでチェックしても、どれも割高……
一方の、エネチェンジのほうを見ると、4月以降のメニューしか表示されなかったが、ランキングは少し違う結果となっていた。具体的には1位が昭和シェル石油の「ドライバーズプラン」で4,978円割高、2位が東京ガスで「ずっとも電気2」で6,650円割高、3位も東京ガスで「ずっとも電気1」で7,264円割高と、やはり現行の「おトクなナイト10」よりも割高となるのだ。
なお昭和シェルの場合、ガソリン割引の10,320円分が入っているものの、近所にシェルはないので対象外。また東京ガスは「トリプル割適用」となった結果であって、指定のインターネットプロバイダを選んだ結果であり、実際にはさらに割高になる。
一方、エネチェンジの場合、セット割を除いた「電気代節約額順」というランキングもあるので、こちらで見てみると、1位、2位が同じでmyでんきの従量電灯Cまたは従量電灯Bで12,309円割高、3位はH.T.Bエナジオーの「H.I.S従量電灯C」で13,490円割高と、やはりどれにしても割高になるのは間違いなさそうだ。
ただ、実際にもっと細かくシミュレーションすると、ここに出てきた数字よりさらに割高になるだろうと計算している。その細かなシミュレーションをするためには、過去1~2年分の電気の検針票が手元にある必要が出てくるわけだが、筆者の場合は過去11年分をすべて保管してあるし、東京電力の「でんき家計簿」に3年前から加入しているので、ネット上で過去24か月分のデータがすべて見られる。
でんき家計簿のデータをダウンロードした上で、ここから計算していくことも可能だ。この「でんき家計簿」は無料で使えるし、検針票をとっておく必要がないので、ぜひお勧めしたい。
太陽光発電ユーザーは、時間帯別メニューで決まり!
しかし、どうして、そんなに現行のメニューのほうがいいのか。それは太陽光発電システムのユーザー特有の事情があるのだ。まず当たり前の話として、屋根に載っている太陽電池が発電するのは日中であり、晴れた日であれば、ほとんどの場合、日中の電気は太陽光発電で賄えるため、東京電力から買う必要がない。しかも日中節電すれば、発電した電気の多くを東京電力に売電できるため、入ってくるお金はあっても出て行くのは僅かなのだ。
実際、日照時間が少ない2月の売電の検針票を見ても、9,120円の収入となっているので、エアコン使用時間が長い季節であるにも関わらず、使った電気代と相殺すれば1,316円で済んでいることが分かるだろう。
さらに細かく見ていくと、「おトクなナイト10」など、現行の時間帯別の料金メニューが太陽光発電にピッタリなことが見えてくる。多くの人が契約している従量電灯契約の場合、1カ月に使った電気のトータルに対して、1段階、2段階、3段階と値段が変わってくる。たとえば東京電力における従量電灯Bの場合、表1のようになっており、いっぱい使うほど単価が上がってくる仕組みになっている。
それに対し、「おトクなナイト10」でも表2のように3段階式であり、しかも従量電灯Bと比較すると、かなり割高ではあるのだが、この3段階式が適用されるのは日中(具体的には朝8時~夜10時)であり、深夜の電気使用量はそこに加算されないのだ。
つまり、太陽が出ている間はほとんど電気を使うことがなく、実際使うのは夕方~夜10時のみ。そのため、筆者の家の場合、昨年を見ると6月は第1段階の低料金ですんでしまったし、そのほかの月でも第3段階に入ったのは12月のみで、比較的安く済んでいる。
その一方で、「おトクなナイト10」における夜10時~朝8時までの深夜時間帯の単価は、12.16円と圧倒的に安い。しかも、原油安の今は、昼の時間帯も夜の時間帯も1kWhあたりの2.78円/kWh(2016年4月現在)安くなる。再エネ賦課金の+1.58円を入れても10.96円だから、どこの新電力会社の単価よりも圧倒的に安いのだ。
では、4月の電力自由化以降の時間帯別電力契約メニューはどうなっているのか? まず、新電力会社のほとんどにこうした料金メニューが用意されていない。関東エリアの場合、唯一、東京電力が「夜トク8」「夜トク12」というものを用意しているので、その料金表をご覧いただきたい。
【東京電力 夜トク8の料金】
電力量料金 | 単位 | 料金(税込) |
昼間時間 | 1kWh | 32円14銭 |
夜間時間 | 1kWh | 20円78銭 |
【東京電力 夜トク12の料金】
電力量料金 | 単位 | 料金(税込) |
昼間時間 | 1kWh | 33円76銭 |
夜間時間 | 1kWh | 22円55銭 |
これを見ると分かるとおり、従量電灯Bや「おトクなナイト10」では1~3段階となっていた段階方式が撤廃され、単に昼と夜の料金設定となっているので、計算は簡単になっている。ただしその単価を見ると、夜は「おトクなナイト10」の倍近くに跳ね上がっているから、どうみてもお得ではないのだ。
こうした状況を考えると、この電力自由化のタイミングで太陽光発電ユーザーが、「おトクなナイト10」などの時間帯別メニューから他社または東京電力の別メニューに乗り換える必要性は感じられない。逆に、もし太陽光発電システムを設置しているユーザーで、現在従量電灯Bなどにしているのであれば、急いで「おトクなナイト10」などに乗り換えるのが得策。
仮に従量電灯Bがよかったとしたら、4月以降再度、従量電灯Bに戻すか他社のプランに乗り換えればいいのだが、4月以降には「おトクなナイト8、10」「電化上手」「朝得プラン」「夜得プラン」「半日お得プラン」などはすべて消えてしまって加入できなくなるのだ。東京電力に聞いところ3月31日の夕方17時までに電話で申し込めば間に合うとのことなので、急いだほうがいいだろう。
ちなみに、これらの現行メニューは加入してしまえば移行期間ということで2020年までは維持されることが決まっている。それ以降、どうするかは世の中の情勢を見つつ、ゆっくりと考えていきたいと思っている。