藤本健のソーラーリポート
第2号の太陽光発電所が設置完了! その2
by 藤本 健(2016/2/3 07:00)
2014年12月に、千葉県千葉市内の畑が広がる地域に300坪の土地を300万円で購入するとともに、エコスタイルという太陽光発電の設置業者と、全額ローンの1,434万1,600円で契約を結んだというのが前回の話。
この後は多少は時間がかかるかもしれないが、ただ待っていれば経産省から認定が下り、東京電力から連絡が来て、工事も完了して発電が始められるもの……と想定していたのだが、そう単純な話ではなかった。
今回は、そこからの経過状況についてレポートしていこう。
発電システムの設備が無事に認定された
12月初旬に経産省に出した太陽光発電システムの設備認定の申請、年末ぎりぎりの12月26日、無事認定が下りた。この事実はとっても大切なもので、いつ認定が下りたのかによって、太陽光発電の売電金額が変わってくるのだ。
これは2014年度であったので、1kWhあたり32円+税という単価だが、2015年4月を過ぎると29円に、さらに2015年7月からは27円にと急速に下がっていくことが分かっていたので、ギリギリのチャンス。この金額が20年続くのだから、発電事業ということを考えるとここが生命線といってもいいところだったので、問題ないとは聞かされてはいたものの、まず安堵したところだった。
それを受けて、年明けすぐに東京電力に発電所設置のための申請を行なった。ただ、お隣にも2つ別の発電所が設置されるという予定であるため、経産省側でこれが同一人物のものでないのか、意図的な分割案件ではないかのチェックが入るとのこと。
そう、設置予定なのは55.08kWのパネルと49.5kWのパワコンというシステムで、そのどちらか大きいほうが50kW未満という条件を満たしているため、低圧での連系となるが、50kWを超えると高圧という扱いになって、変電所設備などを自前で用意する必要が生じ、大規模なものになる。
そのため、個人でやるなら50kW未満に抑えるのがポイントとなる。
そこで、本当は高圧にすべきところを、インチキな申請をしていないかをチェックするというわけなのだ。もちろん、お隣の方とは会ったこともない他人なので、ここで引っかかる心配はないけれど、東電の担当が言うには、経産省の目安が3カ月程度、東電の設計の目安が4か月ほどかかるとのことで、連系は早くて7月。最近、工事も混んでいるので、もう少しかかるかもしれないとのことだったので、気長に待つことにした。
お隣さんとのトラブルが勃発
それから半年、ほとんど何の動きもなかったのだが、6月6日、まったく知らない会社から、突然妙なメールが届いたのだ。
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突然のメールで失礼致します。
弊社で千葉市●●●●●番地と●●番地で太陽光設備2システムを施工する運びとなり、近隣の方々へのご挨拶をかねて、連系時の建柱位置についてご相談させて頂けないかと思い連絡致しました。
柱の建て方次第で御社の土地に影を落とすことも予想されますので、ご連絡いただければ幸いです。
誠に勝手なお願いではございますが、よろしくお願いいたします。
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どうやら、お隣方が設置する発電所の設置工事会社のようだが、そこの電柱のせいで、ウチの発電所に影ができるとしたら、たまったもんじゃない。シリコン系太陽電池の特性をご存じの方ならわかると思うが、パネルの中のセルが直列に配線されている関係上、電柱1本、電線1本のちょっとした影ができるだけで、発電量が激減するという現象を引き起こすので、それだけはなんとか阻止しなくてはならない。
ここで、メールの差出人の会社を見てみると、なんと家から自転車で5分のところにある会社からだった。この土地を買った不動産屋からは「隣の2つの土地は地元の旧知のお客さんに売ることになった」と聞いていたので、その方は千葉県在住のはずなのだが、設置業者は横浜にあるウチの近所の会社だったのである。
とりあえず、メールでのやりとりでは大変そうなので、すぐに電話をして、翌日伺って、話をすることにした。
さっそく自転車で行ってみると、対応も丁寧だし、しっかりとした知識や経験もありそうな会社だ。既に電柱による影のシミュレーションも作っており提示された。そのシミュレーションを確認したうえで「影ができると困るので、ウチの土地の北側をタダで貸すので、そこに電柱を立ててもらえないでしょうか?」とお願いしたのだ。それに対し、その業者は「施主さん側に話をしてみます」という回答だったので、これですべて簡単に解決する……と思ったのだが、甘かった。
数日後、「そこから電線を地中または地上を這わせて配線すると電線代、工事代などが上乗せされて高くなるから、嫌だと言っている。またすでに東電から今予定している場所に電柱を立てるという設計書が来ており、これを変更するとなると、さらに何カ月も時間がかかる可能性があるから、それは避けたいので、無理だ」というのだ。
「ふざけるな!」という思いだが、できるだけ感情を表に出さずに、何度かその会社に交渉に行ったが、話は進まない。そうした中、出てきたは、もともと3列で組もうとしていたものを4列にして、影にかからないように配置をズラす、という提案。「なるほど」なんて思いつつも、こちらばかり詰め込んだレイアウトになってるな……と感じる。帰宅後、エコスタイルに図面を送るとともに、状況をメールで連絡した。
するとすぐに担当者からは「内容を確認致しましたが正直論外ですね……。やれるのはできだけ東寄りと北寄りに設置するぐらいです。先方のレイアウトでは藤本様の敷地だけ設置角度を10度で設置するレイアウトになっております。効率は20度の方が良いので、もしこのようなレイアウトにするのであれば、先方のレイアウトも10度にしてもらい、北側を空けてもらう必要があります。そうしないと割に合わないと思います」と憤りのメールが届き、強い味方がいるように感じて嬉しくなったほどだ。
ただ、その担当者も直接先方へ交渉してくれるというわけではなく、こちらで交渉するしかない。そうした中、近所の業者が提案してきたのは、一部の土地を交換する形で設置間隔に余裕を持たそうというアイディア。
ただし、「そのためには、持ち主同士で話し合いをする必要があり、ここでは決められない」というのだ。そこで、お隣の持ち主であるSさんの連絡先を教えてもらい、メールをしてみたところ、案外話は早く進みだした。
メール内容は割愛するが、いかに無駄な投資をせずに、効率よく発電所を運営するか、という目的はお互い合致しており、「まさにお隣さん同士で協力していきましょう」という具合いでのメールでの文通が始まったのだ。
Sさんとは、雑草処理をどうするか、発電状況のモニタリングをどうするかなど、今でもときどきメールで情報交換しており、私にとって、非常に心強い知人となっている。「ぜひ近いうちにお会いしましょう」とは話しているのの、まだ実現できていないのが残念なところだ。
さて、このやり取りからも分かるとおり、東電側での設計も進んでおり、その話し合いをしている中、6月15日に東電から連絡があり、系統連系負担金に関する2枚の請求書がやってきた。この請求書が来たということが最終的なゴーサインであり、負担金を支払えば、工事日程も確定することになる。
前回の記事でも書いた通り、最終的にかかる金額の不確定要素として残っていたのが、この負担金だったのだが、請求書を見ると、負担金と工事費それぞれ合わせて52万6,696円。下手すると200万円近い可能性も……と言われていたので、ここはホッとしたところ。これを振り込むと、物事が動き出すということだったので、即日振込処理をおこなった。
これによって10月上旬の連系が確定。エコスタイルからは9月2日工事スタートという連絡が入った。それに伴い「できれば8月上旬までに雑草処理を行なっていただき、その後打ち合わせという形をとれればと思います。あまりに早く雑草処理を行ないますと工事までに、また雑草が伸びてしまう可能性がありますので……」という連絡が入った。その時点では、もともと、砕石を敷いて整地もしてある土地だから、とくに何もしなくても大丈夫だろう……なんて思っていたのだが、これもそう甘いものではなかったのだ。
お隣との問題は解決したものの、雑草や樹木など新たな問題が……
土地を購入した12月以来、現地へはまったく行っていなかったのだが、工事の打ち合わせをするということで8月6日の夕方に行って打ち合わせをすることにした。もちろん、言われていた雑草処理など、まったくしていなかったわけだが、ちょうどその直前にお隣のSさんからのメールで「藤本さんの土地、もともと一部にあった低木を不動産屋が伐採・抜根していたはずですが、そこにかなり雑草が生えて、2mくらいの高さになってますよ」という連絡をもらい、大丈夫だろうか……と不安を抱えつつ、現地に行ってみたところ、冬の引き渡し時からは想像できないほど、ジャングルのようになっていた。
下見と地質調査もかねて、来てくれたエコスタイルの工事担当者も、「さすがに、これでは工事に入れないので、雑草を抜いて整地しないと無理ですね」とのこと。その場で少し抜こうとしてみたが、1人で処理できるようなものでは到底ない。
「安くやってくれると思われる業者を紹介しましょうか?」といってくれたので、お願いしたのだが、紆余曲折あって、その業者を含め、いくつかがダメに……。結局、エコスタイルの工事担当者が特例という形で雑草などの処理と整地を格安の6万円でやってくれることになった。
さらにこの雑草処理とともに、もう一つ大きな問題が発覚した。それは北側のお隣との問題だった。もともと3つある土地のうち、北側をとれば、南も太陽光発電所だから大きな影ができる心配はないということで、そう選んだのだったが、北側には大きな桜の木があり、それが思い切りこちらの土地に侵入していたのだ。
Sさんとのやり取りで、南北ギリギリまで広げて設置することに決めていたけれど、その北側が完全に桜の木の下に入ってしまい、電柱問題とは比較にならないほど、大きな問題になりそうなのだ。
工事担当者は「侵入しているところに対しては、本来は隣の人に切ってもらわないといけないが、交渉はなかなか難しいものです。勝手に切るわけにはいかないので、こちらで切ることにして、許可だけをもらいましょう」といわれ、農家と思われるお隣へさっそく行ってみたのだが留守だった。仕方ないので不動産屋に連絡をして、何度か現地を見に行ってもらったのだが、何度いっても留守ということで埒があかないまま2週間ほどが経過。住所と名前は分かっていたので、こちらから手紙は送ってみたものの、返事はないまま、9月2日の工事当日を迎えてしまったのだ。
朝、一番に現地に到着し、工事の人たちに挨拶してすぐに向かったのは隣の家。クルマもあったので、これは在宅されていると確信し、呼び鈴を鳴らしてみた。すると中から、お爺さんが出てきたので、手土産を渡し、事情を少し説明したら「ああ、手紙をくれたのは、あんたかね。お若いのに太陽光発電所を作るなんて、すごいもんだねぇ。ああ、桜の木は好きに切ってくれて構わんよ」とおっしゃる。まったくどんな人かも分からなかったので、さまざまな心配をしてしまったが、結果的にはすべてOK。翌週のパネル設置工事のときに、エコスタイルの工事の人にお願いして、侵入している桜の木を切ってもらった。もちろん、またしばらくすると、伸びてくるとは思うけれど、そのときはまたお願いに行こう、と。
ついに、千葉の太陽光発電所が完成!
なお、この工事の直前に実は、ひとつ大きな変更の決定をしていた。それがパネル設置の配置をSさんのところと取り決めた4列ではなく、元の3列に戻そうというものだ。実測してみると、やはり列と列の間をそれほど広げることができず、20度の角度で設置すると、明らかに影ができてしまうというのだ。かといって10度に設置すると、年間の発電量が5%近く落ちるといい、それが20年間続けば何百万円もの損失になる、というのだ。
度重なる変更で、Sさんに申し訳なく、すぐに言い出せなかったが、Sさん側の電柱の影をできる限り避けるように、極力北東に設置する形で工事を進めていったのである。
結局工事は、架台設置が9月2日~9月4日、パネル設置および電気配線工事が9月9日~11日の2週間、計6日とのことだったので、前半、後半それぞれ1日ずつ現場に行って工事見学をしてきた。そして、工事自体は滞りなく、無事行なわれた。
1点気になったのは、架台の見た目と強度。富士山麓の発電所は雪対策ということもあり、四角い形の立派な鋼鉄を使った架台になっているが、千葉のこちらのは、単管パイプを組み合わせただけの質素な感じのもの。ただ、エコスタイルに確認してみたところ、パイプは1.2m打ち込んであり、風速38mにまで耐えられるようにしてあるとのこと。昨今の異常気象が続くなか、38mで大丈夫なものなのか不安は残るものの、きっと大丈夫なはずだ……と信じているところだ。
出来上がった発電所を建売住宅のように買うのではなく、半分注文住宅を建てるように太陽光発電所を作ると、さまざまな問題に遭遇するということを身をもって体験した。確かに安く作れはするけれど、その分、パワーがかかるというわけだ。このようにして約1年がかりで完成した千葉の太陽光発電所。次回は実際に発電開始すると、どうだったのかについて見ていくことにしよう。