藤本健のソーラーリポート

ついに実現! 太陽光発電所を富士山麓に設置(後編)

「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)
富士山麓の太陽光発電所

 茨城県、千葉県の2カ所で50kWの太陽光発電所の設置計画を進めているものの、なかなか進展せずにイライラと不安が交錯する中、3月頭に友人Aが持ってきた「すぐに太陽光発電をスタートできる物件が富士山麓にある」という話。

 前回の記事でも書いた通り、当初は友人Aからの相談話だったのに、勢い余って半分買うことにしてしまった。半分といっても金額的には1,100万円という莫大な金額の衝動買い。実際、そこからどうなっていったのか、その後の経緯を紹介していこう。

 今回の買い物、いま振り返っても、かなり無謀だったな……という思いはある。でも、4月には発電が開始できるという魅力と、茨城、千葉でそれぞれ約2,000万円ずつの契約をしているから、それに比較すれば小さいという妙な安心感から飛びついてしまったのだ。

 一応、自己弁護しておくと、「買う」と言い出すまでに誰からも営業されたことはなく、実際のところ、ディーラーである不動産屋と直接的なやりとりしたこともなかった。単に友人Aが買おうかと検討していた案件が、よさそうに思えたので、そこに相乗りしたわけなのだ。

購入したものの、残る疑問点

 とはいえ、実はその時点でもいろいろと不安はあった。たとえば、前回記事でも掲載した収支予測を見た瞬間、「何だこれ?」と思ったこと。本来「52kWモジュール」と書くべきところが「52KW/hモジュール」とあり、「まったく知識のない業者なのでは……」と思ったところからスタートした。

 また、見積書を見ると、パネルのメーカーとして「レネ・ソーラー社」とあるが、聞いたことのないメーカーだったので、これどこ? と思ってしまったのだ。

 中国メーカーでもカネディアンソーラーやインリーソーラー、トリナソーラー、JAソーラーなどは、取材したり、展示会などでもブースで話をしたことが何度もあったので、馴染みがあったが、大丈夫なのかと思い、Webで検索してみたところ、国内ではメジャーではないものの、レネソーラ・ジャパンという日本法人もあるようだ。

収支予測
届いた見積書
レネソーラ・ジャパン

 ただ、最近、単結晶シリコンのパネルが主流だが、多結晶を使っているというのも気になった点。また、パワコンにメーカー名も型番もないのも不安に感じたところだ(結局はオムロンのKP55Mという製品だった)。

メンテナンスが草刈りと雪下ろし……?

 しかし、もっとも気にかかったのがメンテナンス体制。購入条件として指定のメンテナンス業者と契約して、そこからのメンテナンスを受けるという形になっていたのだ。まあ、そのこと自体はまったく構わないし、むしろしっかりしたメンテナンス体制は万全であってほしいところ。でも、そのメンテナンス内容がどんなものなのかが、ハッキリしないのだ。

 そもそも今回の購入窓口が太陽光関連業者ではなく、不動産屋を通じてという、妙な形だったため、詳細についての問い合わせ先が不動産屋であり、なかなか話が見えてこない。その不動産屋の話によると、メンテナンス内容は「草刈りと雪下ろしで月額8,000円だ」とのこと。「なんだそりゃ?」と。

 確かに、草が生えてソーラーパネルに影ができるようなことになると大トラブルだし、雪が積もるとなると、大きい問題なので、雪下ろしはお願いしたいが、それは太陽光発電所のメンテナンスとはいわないだろう。まあ、実質的な作業としては、それがポイントだとは思うが、電気設備としてのメンテナンスができないとなったら、やはり話にもならない。

 ちなみに、なかなか稼働しない茨城の案件では、稼働後に月額1万円のメンテナンス契約を結ぶことになっているが、そちらに関しては契約書もあり、メンテナンス内容もしっかり記載されている。そしてもちろん中心は電気的設備のメンテナンスであり、しかもここには保険・保証もついているのだ。

 つまり、何かトラブルがあった場合は、すぐに駆け付けてくれて、直してくれるという内容。だからこそ、安心してメンテナンスをお願いできるわけだが、ただ草刈りだけなら、そんなところに頼めるはずもない。

 さらに、気がかりだったのが、モニタリング体制についてだ。以前、NTTスマイルエナジーの記者発表会に行った際、同社社長が「『メンテナンスフリーで設置後は、そのまま放置しておいて大丈夫』というイメージが強く、エコめがねのような監視装置を設置していないユーザーが8割程度だ」という話をされていたが、個人的には、モニタリングは必須だと考えている。

 自宅でもエコめがねを導入しているし、そもそも自宅屋根に設置した10年前から、毎日発電量をノートにつけてチェックしているほど。だからこそ、トラブルは即発見することができるし、実際にトラブルも経験してるからこそメンテナンスが重要だと考えているわけだ。

 ところが、不動産屋経由で問い合わせてみたが、エコめがねなどのモニタリングシステムをオプションで付けるという選択肢はなく、もし必要であれば自分で用意してくれとのこと。そんなところで大丈夫なのか……という不安はますます増してくる。

リサーチに次ぐリサーチの末……

 友人Aと1区画を半分ずつ購入するといったって、1,100万円もする買い物。普通は、ここでの慎重な判断としては「信頼できないので、やめておく」というものだと思うが、すべて承知の上で突き進んでいったのだ。まあ、無謀ではあったことは間違いないが、そこは友人Aのリサーチ力もあったのだ。

 不動産や契約関連について、詳しい知識を持っている友人Aは現地視察に行った際、土地の売主やメンテナンス業者などを調査するとともに、いろいろと訪問リサーチをし、信頼できそうだ、という確証を得たのだ。実は名義は違ったけれど売主=メンテナンス会社であることも判明するなど、細かな事情も見えてきたのだ。

 その辺の細かな話は割愛するが、粗悪品、不良品を売りつけられるということはないだろう、と判断したわけだ。メンテナンス体制や保険・保証、モニタリングシステムの問題が解決したわけではないが、とりあえず購入する方向で話を進めようということで、意見が一致し、3月末の支払いに向けて準備をすることになったのである。

 そこからは、超大忙し。ただでさえ年度末で事務仕事がいろいろあるのに、日本政策金融公庫とのやりとりで、家に抵当権の設置をしてお金を借りるのに、いろいろな役所を駆け回った。普通なら司法書士に頼むべきところだが、それだけで手数料に10万円近くかかるので、節約のため自分で行ない、無事完了。

 一方でNTTスマイルエナジーに、発電監視システムである「エコめがね」を入手するにはどうすればいいのかを問い合わせたり、これと同等のものを展開するLOOOPの「みえるーぷ」についてもLOOOP本社に出向いて詳細の説明を受けたりもした。

 さらに友人Aには太陽光発電の保険を調べてもらい、なんとか求める体制には近づいていったのだ。この金策について、メンテナンス体制について、保険についても、それぞれ面白い話がいっぱいあるので、ぜひそれは改めて紹介してみたいと思っているが、ここでは、飛ばして話を進めていこう。

 無事なんとかお金をかき集めて支払いが終わったら、もういつ稼働するのか、とワクワクしてくるわけだが、そこからが結構時間もかかり、気苦労も多かったのだ。

見通しのつかない稼働時期に翻弄される

 4月1日の時点ではまだ、発電スタートどころか、現地の工事は完了していない状況。もちろん、それはわかっていたことだが、いつ工事が完了するのか、とソワソワしてしまう。不動産屋からの情報によると4月6日に完工で、その後2週間程度で系統連系になるという。その4月6日にでも、工事を見守りに現地へ行こうかとも思ったのだが、筆者も友人Aも仕事が手一杯であったために、その日は見送ることにした。

 が、4月6日を過ぎても何も連絡がなく、問い合わせても返事がない。「実は騙されたのでは!?」なんて焦ったりもしたのだが、その後、不動産屋からは、「現地の土地の不動産移転登記を行なうので、司法書士から連絡が行く」というメールが届いた。友人Aは「そんなものは、我々で行ってしまおう。現地見学行く日に、富士吉田の法務局に行けば簡単にできるよ」というので、その手法に乗ることにした。

 実際、不動産屋に言われるがままに、指定の司法書士にお願いすると、筆者と友人Aそれぞれ、手数料として10万円以上支払うことになっていたが、自分たちで行なえば、30分程度の時間と、たった1,000円の収入印紙で事は済んでしまうからだ。

そして翌日になって、ようやく送られてきた完工写真がこれ。

富士山が遠目に見える

 青空ではないけれど、富士山もクッキリと映ったいい感じの写真で、写真を見る限りはしっかり工事はできているように見える。こうなると、いつ発電するかが気になって仕方ないところだが、不動産屋に電話をすると「2週間後くらいにと言ってますが、まだ詳細な日程はわかりません」との返事。

 1週間経過して、問い合わせても新しい情報はなく、予定の2週間後になって問い合わせると「まだ東京電力から返事が来てないので、日程がわかりませんが、間もなくだと思います」という曖昧な返事。

 もう4月下旬に入ったというのにハッキリしないので、「4月の系統連系だというから、今回契約をしたのに、どうなっているのか!」と文句をつけてしまったほど。

 ここまで来た状態で、塩漬けになってしまうことはあり得ないはずだが、どうしても頭をよぎってしまうのは九州でのことだ。何か月も待たされた結果、突如九州電力が、「系統連系に関する回答保留」を言い出して、九州での契約が立ち消えになってしまったので、友人Aと筆者で合わせて4,400万円も支払った案件が滞ってしまったらシャレにもならない。

 日々イライラしながら連絡を待っていたら、ゴールデンウィーク直前になり「天候の問題もあり遅れていましたが、5月21日の系統連系という話が東電から来ました。ただ、もっと早く連系できないか交渉しています」というメールが不動産屋から届いたのだ。

 筆者自身は、ようやくこれで具体的な日程が出たと思って一安心する一方で、友人Aのほうは「単に1カ月先延ばしした日程を言ってきただけじゃないのか? そもそも4月に連系という話だったので、クレームをつける」と疑心暗鬼。

 確かに連系が1カ月遅れれば、その分、売電収入も1カ月遅れるわけで、ローンの返済を考えると大きな問題ではある。とはいえ、しっかり連系してくれさえすれば、なんとかなる。きっと、前倒しなんて無理なんだろうと思いつつ、本当に21日に連系となるのか、雨天中止でその次の工事日程のメドが付かない、なんてことにならないのか、そもそも22日の何時に工事なのか……などなど気になることが次々と頭をよぎる。

 そのたびに、不動産屋に連絡をするけれど、その場で回答はでず、売主側への確認作業に時間がかかり、イライラは募る一方。商習慣上、不動産屋は火曜・水曜が休日で、売主側は土曜・日曜が休日であり、連絡に妙に時間がかかるのも困ったところだったが、結局5月15日になって「2日だけですが、前倒しにすることができ、19日の午後に連系工事になります。雨天でも決行です」という確約情報が届いたのだ。

いざ富士山麓へ

 工事には、売主=メンテナンス会社が立ち会うわけではなく、そこが依頼している電気設備会社の社長が来ることもわかった。急な予定変更ではあったものの、友人Aと調整した上で、当日、朝一番に自宅をクルマで出発し、現地に赴くことになったのだ。

 その際、予定通り、富士吉田の法務局で登記を行なってから現地に行ったのだが、その登記で判明したのは意外(?)な事実。もちろん、ある程度分かってはいたが、土地の実質的な価格自体はまさに二束三文だったのである。そう、今回、不動産屋に支払ったのは
  ・システム価格 1,700万円
  ・土地代 500万円
  ・不動産手数料 22万円

を友人Aと折半したわけで、552平方mの土地代が500万円。

 首都圏であれば5,000万円でも1億円でもおかしくない広さかもしれないが、地目が原野となっているこの土地の評価額はたったの13,000円だった。まさに暴利ぼったくりの原野商法といえなくもないが、これこそが新聞などが問題視している「設備認定を取得した土地の転売」ということなのかもしれない。

 ただ、個人的には納得して購入しているわけだし、自分で広大な土地を持っていなくては到底設備認定を取ることなどできないので、正当なビジネスだと思っている。

 もちろん500万円が適正な価格であるかどうかは微妙なところではあるが、今後の売電収入について考えれば、まあ妥当なところではないだろうか? また、国としての評価額が12,000円なら、固定資産税は年間で200円程度とタダみたいなもの。トータルで見れば悪くない話だと思っている。

 そんな話をしながら、富士吉田から富士山の麓をグルリと回ってようやく現地に到着。ちょうど東京電力の担当者も到着し、工事が始まったところだった。

 前回の記事でも書いたとおり、ここは31区画を設置する実質上のメガソーラーだが、それぞれが50kWシステムに区分された分譲発電所。そのうちの4区画分だけ先行工事が行なわれたので、トータル200kW(正確にいうとパネルは52kW×4=208kWだが、パワコンで見ると49,5kW×4=198kW)というものだが、近づいてみるとかなりな大規模だ。

近づくと規模の大きさが分かる

 友人Aが一番北側の第4区画で、筆者が友人Aと折半しているのが1つ南側の第3区画。見たところ、しっかり基礎もできているし、工事もかなりよくできているので一安心。

 土地をなるべく有効活用しようということで、それぞれの区画は長方形というわけではなく、パネルのブロックごとに区切られており、その境界線を示す杭もキチンと打たれている。

 また、整地された土地は、舗装こそされていないものの、砂利が敷き詰められており、草も生えにくい形になっているなど、見た感じ申し分のないいい状況だ。

折半している第3区画
基礎もしっかりしている
境界を示す杭

いよいよ稼働開始

 現場に立ち会ってくれた電気設備会社の社長と話をしたところ、売主である会社社長とは近所の仕事仲間であり、今回の案件でも設計と電気工事はすべて行なっているとのこと。そしてこの電気設備会社社長は、20年近く前に自宅に太陽光発電システムを搭載し、いまでも使っているというベテランであり、太陽光発電ユーザーとしても先輩であった。

 それだけに設備知識についても非常に豊富だったし、今後のメンテナンスにおいても実質的に面倒を見てくれるとのことで、非常に心強いところだ。また現場にはマニュアル一式と図面、終電箱のキーも持ってきてくれ、そのセットが手渡された。

 このキーをもらって、ようやく物件を引き渡しを受けたような気分にもなれた。最初から会って話しができていれば、何の心配もいらなかったように思えるが、不動産屋を通じてのコミュニケーションだったので、もどかしく思えたのは仕方がないことなのかもしれない。

 そんな話をしながら30分ほどで、東京電力担当者の作業も終了。工事といっても実際には、すでに連系工事自体は完了しており、パワコンのスイッチをオンにするとともに、電気メーター初期値をメモしていた程度のこと。曇りの天気ではあったが、しっかりとメーターも回っているので、無事動いているようだ。

マニュアル一式と図面、終電箱のキーのセット
メーターの回転を確認

 システム的に見ると、レネソーラーの250Wの多結晶パネルが3×4=12枚並んだものが16基と、2×4=8枚のパネルが並んだものが2つで、そこに9台のパワコンが接続され、東京電力の線へと接続されているというもの。

 パワコンのモニターを見ると3~4kW程度の出力を出しているので、曇っていてもかなりの出力があり、いい感じだ。30分ほどの作業の間に18kWhの発電が確認できたので、単純計算すると18×36=648円(税抜)。

 売電収入も2人で折半するわけだから、時給650円程度でアルバイトしているような感じだろうか。曇っていて、富士山をバックにした写真が撮れなかったかったのが残念ではあったが、こうしてとにかくスタートしてくれたわけである。

レネソーラーの250Wの多結晶パネル
12枚並んだものが16基
パワコンのモニター
曇りでも3~4kWの出力

 もっとも、モニタリングシステムの設置はまだこれからで、日々どのくらい発電しているのかをすぐに確認することができないので、不安はあるが、きっと元気に発電してくれていると信じている。1カ月もすると検針があり、その結果が送られてくるので、どのくらいの発電ができるのか、本当に楽しみなところだ。

 まあ、メンテナンス会社との正式な契約はこれからだし、保険の契約もこれからなので、まだまだすることはいっぱいありそうだが、これでなんとか発電所所長として、発電事業を開始できたことで一息つけそうだ。また、進展があれば、ぜひレポートしてみたいと思っている。

藤本 健