ぷーこの家電日記

第512回

凝り性ハマり性の私がまた一つの沼にハマる

最近私の仕事の邪魔をするのがブームの猫。iPadで原稿を書いている時も、私の目の前に割り込んできて、小さなキーボードの上で寝る。そんな時は書くのを諦め、目の前の猫を思いきり吸い込み、猫養分を補充する。満足した猫が移動した後には、猫が書いた謎長文が残されていてカワイイ。

今日は長文ではなく、ひたすらにDeleteキーを押し続けていたのか、画面のアンドゥボタンを押し続けていたのか、まっさらな画面に戻っていて、私の頭が真っ白になりそうになった(笑)。こまめな保存と猫が乗ってきたら画面をOFFにすること。今日得た学びである。

さて、去年の春から通い始めた陶芸教室。週に一度程度、平日仕事が終わった後に通っている。できたら週に二度は行きたいのだけれど、中々時間が作れず週に一度程度。

それでもずっとやりたかった陶芸を始めることができて、ものすごく楽しいし嬉しい。家庭菜園に陶芸と、どうやら私は土を触るのが好きなようだ(笑)。

毎日せかせかした日々を送っている中、ゆっくり時間をかけて一つのものを作っていく感覚がとても穏やかで贅沢なのである。土を捏ねて形を作り、そこから一度素焼きをして、絵を描いたり釉薬を塗ったりしてさらに本焼きをする。週に一度、数時間の作業では中々仕上がらないし、焼くために共同で窯に入れるので、そのスケジュールに合わなければ、作り始めて出来上がるのに数カ月かかったりする。それがまた良い。

土は本当に不思議なものだ。そもそも固いのか柔らかいのか分からない。うまく力を加えるとスーッと形を変えてくれるけれど、手を離しても流れてしまうこともないし、力を入れる方向や加減がまだ分かっていない私には、中々思うように動いてさえくれない。この土の性質を可塑性と言うらしいのだけれど、触る度に「土って本当に面白い素材だなぁ」と、しみじみ思いながらどんどん虜になってくる。

元々手先はそこそこ器用な方なので、結構簡単に色々できるようになるんじゃないかと、習い始めは目論んでいた。ところがだ。手先は元より脳みその方が全く追いつかない。先生に技法を教えてもらいながら作品を作り上げた後、復習を兼ねて同じ技法でもう一つ器を作ろうとすると、全く分からなくて最初の段階で手が止まる。自分で作っておきながら、自分の中には何も残っていないような不思議な感覚。

「怖い! 私は一体何をやっていたのだろうか」と脳みその老化に驚きながら、再度教えてもらいながら、きちんとメモを取り、忘れてしまっても見返せば何とか一人でも形にできるようになったけれど、中々自分の中に定着しない。技術も知識も若い頃の何倍も努力しなければ全く身につかないことを思い知らされる。ただ、年をとっても衰えない、むしろ年をとるにつれ強くなって来たのではないかと思う感覚が一つある。それが「好奇心」である。

好奇心の中でもとりわけ「知的好奇心」。あれもこれも作りたい欲は、作るスピードも技術も全く追いつかない程止めどなく溢れてくるし、先生や他の生徒の方の作品を見ては感動してもっと上達したくなるし、日本各地の陶器や世界の陶器にも目が行くし、土の違いなどから、各地の地理や環境、そして歴史にも興味が湧いてくる。食べ物然り、陶芸然り、興味を持つと芋蔓式にいろいろなことが知りたくなる。知的好奇心を駆り立てられる。そして、見た目云々は別として、知的好奇心は私の脳のアンチエイジングに凄く役立っていると思う。

「今までの経験から知っている」という前提でこれから生きていくのと「まだまだ知らないことが多すぎる」と言う前提でこれから生きていくのとでは、見える景色も入ってくる情報も何もかも変わってくるだろう。いつでも新人、いつでも素人の気持ちを忘れず、色んなことを体験したい。

そんな感じで、技術よりも好奇心の成長の方が大きい私の陶芸教室通いだけれど、先日通常の陶芸とは別枠で釉薬を学ぶ特別講座に参加した。

釉薬は「うわぐすり」とも呼ばれ、陶器の表面を覆うガラス質のコーティングのことである。水漏れを防ぎ、強度を向上させるだけでなく、色や質感を出す器の装飾としての役割も持つ。普段は器を作りながら、釉薬をかけてから焼くという一工程として使っているだけのもの。それをこの講座では、そもそも釉薬とはなんぞやという話から、軽く歴史の話、成分や構成の化学的な話などの座学に、自分で調合しての釉薬作りの実習もする。もう楽しすぎて面白すぎて、ドンピシャ私の好奇心ドストライクな講座で、もっと知りたいもっと作りたい! と欲が止まらなくなった。

この講座は完全なる沼地の入り口だったのだ。ワックワクが止まらない私に、先生は材料が買えるサイトも教えてくれ、にこやかに私の背中を押して沼に突き落としてくれる(笑)。

陶芸の基礎の基礎すら習得していない私に、「まずは先にやることがあるだろう」ともう一人の私が嗜めてくるのだけれど、残念ながら衝動は止まりそうにない。そして原料が売っているサイトをひたすらに眺めながらニヤニヤしている。

教室に置いてあった見ているだけで楽しくてワクワクした「釉薬づくり入門」という本を、自分でも早速買って何の原料を調達するか検討開始。可愛い作品を作れるように、土の扱いももっと上手になりたいところ。だんだん趣味が取っ散らかってきて、いつも時間に追われている感じになっているけれど、やりたいことがたくさんあるのはとってもありがたいなって思って日々精進していきたいのであります。

徳王 美智子

1978年生まれ。アナログ過ぎる環境で育った幼少期の反動で、家電含めデジタル機器にロマンスと憧れを感じて止まないアラフォー世代。知見は無いが好きで仕方が無い。家電量販店はテーマパーク。ハードに携わる全ての方に尊敬を抱きつつ、本人はソフト寄りの業務をこなす日々。