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美味しい「お水」の理由を、富士山麓の“名水”工場で聞いてきた

 昨今では、水を買って飲むことが一般化している。さらに、自宅にウォーターサーバーを置き、定期的に水を買っている家も珍しくない。だが、一口に水と言っても、その種類は様々。宅配水を展開しているメーカーだけでもいくつもある。では、「お水」はどう選べば良いのか?

海抜約920mの場所にあるウォーターダイレクトの富士吉田工場

 そこで、「お水」の選び方を知るため、首都圏から数時間で行ける、名水の産地としてしられる富士山麓へ向かった。

 伺ったのは、天然水を家庭に届けるサービスを行なっているウォーターダイレクトの富士吉田工場。ウォーターダイレクトは、同社製ウォーターサーバーを設置した家庭に、富士吉田工場で採れる「クリティア 富士山のお水」をはじめ、中国山地の「クリティア 金城(かなぎ)のお水」、阿蘇山近くで採れる「クリティア 阿蘇のお水」を定期的に届けている。言わば、美味しいお水を知り尽くしている企業なのだ。

富士吉田工場 工場長の細谷直利氏
「クリティア 富士山のお水」は、富士山に降った雨や雪が長い歳月ををかけ、富士山の地層でろ過された天然水だ

 そんな“美味しい水”の説明をしてくれたのが、工場長の細谷直利氏。まずは、「クリティア 富士山のお水」が美味しい理由を次のように語った。

 「宅配水の中には、RO水を使うメーカーもありますが、当社では天然の水であることにこだわっています。富士山に降った雨は、数十年以上かけてゆっくりと富士山の地層を通って、ろ過されながら流れてきます。富士山自体が火山であることで、溶岩や砂などが天然のフィルターとして機能しているんです。だから自然と水がキレイになる一方で、ミネラルなどの成分が溶け込みます。そうした富士山のお水、ならではの味が美味しく感じさせるんです」。

 ちなみに多くのウォーターサーバーで採用されているRO水とは、逆浸透膜(RO膜)で処理された水のことを言う。雑菌などとともに、水本来に含まれていたミネラルなども取り除かれてしまう。人工的に改めてミネラルが添加され、採水地がどこでも手軽に同じものが製造できてしまう。

世界にも認められる美味しい水はどんな味?

 人が美味しいと感じる水には、多彩な成分が入っているという。それでは、一般的に“美味しい水とはどんな水なのか?”を、細谷氏に、さらに詳しく聞いた。

 「おいしい水研究会という厚生労働省の管轄の研究会は、美味しい水の水質要件を発表しています。そこでは水温をはじめ硬度やマンガン、カリウムなどの要件が示されており、クリティアの水も、もちろんこの要件を満たしています」。

 さらに同社では、「マグネシウムやカルシウム、ナトリウム、カリウムなどの天然のミネラル成分量のバランスが、水の味を決めていると考えています。富士山のお水は、カルシウムとマグネシウム比が3:1と理想的なバランスで、すっきりと甘みがあって、飲みやすい水なんです(細谷氏)」。

 つまり、富士山という自然が、ベストなブレンドをしてくれた水が「クリティア 富士のお水」なのだという。

工場内の壁には、モンドセレクションやiTQiから授与されたトロフィにバッジが並ぶ

 ウォーターダイレクトの「クリティア 富士山のお水」は、世界的な機関からも高い評価を受けている。例えば、食品や飲料などの製品を審査する「モンドセレクション」からは、毎年のように優秀品質賞の金賞を受賞している。

 さらに国際味覚審査機構iTQiからは、3つ星や2つ星の評価を得ると同時に、審査員からは「バランスがよく、爽快で柔らかい口当たりが口の中に広がる」、「軽くて滑らかで、すっきりとした清潔感のある味」などと評されている。

富士山が作り出した名水を“ほぼそのまま”届けられる理由

2つある井戸の1つ。地下約200mを流れる水脈から水を汲み上げている

 富士山が作り出す水が美味しいのは分かった。だが、水源で水を手ですくって飲んだ時の美味しさを、自宅で再現するのは難しく、様々な工夫が必要になるという。ここからは、実際に富士吉田工場で行なわれている工夫と努力を見ていこう。

 工場の敷地内には、地下約200mの水脈から水を汲み上げる、ポンプが2つある。汲み上げた水は、まず1μmのフィルターを通して、砂利や異物などが取り除かれる。その後、さらに目の細かい0.45μmと0.2μmのフィルターを通すことで、除菌処理される。

 細かいフィルターで除菌処理することで、加熱による殺菌をすることなく、商品化できるという。この「非加熱」で出荷することが、水の味にとってとても重要。

 「加熱処理は、水の美味しさの要素の1つである、酸素が失われてしまいやすいんです。一方で、非加熱処理による除菌は、品質管理に手間と技術が必要。でも当社では水の味を大切にするために、“非加熱処理”ということにこだわっています(細谷氏)」。

 つまり非加熱での除菌処理は、加熱処理された水よりも、より天然水に近い美味しい風味を残しているということ。簡単なようで実は難しい“そのまま”の状態で、各家庭に届けられているのだ。

汲み上げられた水は、直後に1μmのフィルターを通して砂利などの異物や菌を取り除き、さらに0.45μmと0.2μmのフィルターで除菌処理されていく
0.45μmと0.2μmのフィルターで、4回にも及ぶろ過/除菌処理がされている。これにより加熱することなく、天然水そのままの風味を残した水を、商品として出荷できるという
工場の入口脇にある検査室では細菌や、大腸菌群やカビなどがいないかをチェックしている
測定機だけに頼らず、検査員による試飲評価で日々、水の品質を管理する

人の姿をほとんど見かけない、自働化が徹底された工場内

 いよいよ、ボトルの製造からお水の充填、パッケージング化までが行なわれている、工場の核心部へと入っていく。

 「工場内で特に力を入れているのが、自働化です。これまで手作業だった工程を自働化することで、衛生面で必要だったケアが減り、高い品質が保ちやすくなります(細谷氏)」

 そう話しながら、工場の中に入る前に手を洗い、全身を専用の服や帽子で覆ってから中に入る。人の手作業に頼るということは、こうしたケアが必要になるということなのだ。

工場の核心部に入る前には、手洗いが必須
靴から服、マスク、帽子で全身を覆ってから入る。写真右が工場長で、左がゲスト用の装備を着用した筆者

 工場内の核心部に入って、真っ先に感じたのは、その清潔感。そして、まるで精密機械を作っているようなキレイなフロアには、人がほとんどいないこと。

 2階建ての富士吉田工場では、主に2階エリアで、水を入れるボトルの製造と保管を行なっている。ボトルの素材となる塊(プリフォーム)をボトルの成形機にセット。約130℃に温められた塊は、風船のように膨らませられ、成形機の中の金型にはめることで、ボトルを作っていく。

ボトルの素材(プリフォーム)をセットしていく。ボトルの製造工程で唯一、人の手が入っている場所
プリフォームは、約130度に温められながら成形機へと流れていく
金型がセットされた成形機の中に入ると、ボトルの形に出来上がる
成形機から、次々とボトルが出てきているところ
ボトルはベルトコンベアで自動的に運ばれていく
水を詰める1階エリアへとシューターで運ばれる

 これまでは、水を入れる容器を外部から購入していたという。だが別工場で作られたボトルを運び、管理するのは大変なこと。現在のように、工場内で生産することで、特に衛生管理面での労力とリスクを減らせるのだ。

万が一に、ボトルを成形する機械が止まってしまった場合に備え、約1万9,000本の空の容器が工場内にストックされている
保管用には、ホコリなどが付着しないよう、静電気防止処理が施された専用のラックが使われている

 成形されたボトルは、人の手に渡ることなく、水を注入する1階へと移動していく。まずは容器の底部に、これも機械で取っ手用のテープが貼り付けられる。そのまま容器は、エアーで膨らませた後に、電解水で容器内を洗浄。電解水を抜いた後に、今度は通常の水(「クリティア 富士山のお水」と同じ水)で一旦すすいでから、最終的な商品となる水が充填されていく。

2階から流れてきた容器には取っ手用のテープが貼り付けられたあと、続々と洗浄/充填ルームへと流れていく
容器内の電解水での洗浄、そしてすすぎの工程
水の充填が行なわれているところ
容器の流れとは別に、キャップがUVで殺菌されているところ
クリーンルーム内でキャップをされて出てきたところ

 水が入った容器はクリーンルームへと進み、UV殺菌されたキャップでフタをして完成する(もちろんここも自動だ)。驚くべきことに、見学したラインで人の手が入ったのは、容器の素材を成形機にセットしていくところだけ。ほぼ全自動で製品が作られていると言っていいだろう。

数少ない人が介する工程の1つが、完成品の検査。手で容器を触るとともに、目視によって水漏れなどがないかをチェックする。写真右側が、チェックで不可となり、ラインから外されたボトル
検査を通った製品が、ロボットによってダンボールの中へ収められていく
梱包される工程でも、全てが機械化されていた
金属探知機でのチェックをクリアすれば、全工程が終了する
製品は、発送される方面別に分けられていく。さらにロボットアームでパレットに載せられて、AGV(無人搬送車)で搬出口などへ運ばれる
搬出待ち製品のストックルーム。ここでも人の姿は皆無。自動で棚に収められ、取り出されていく

 水が充填された容器は、一度人の手と目によって検査されるものの、その後はまたロボットによってダンボールに梱包される。その後、水の箱2個を1セットにするためにバンドで巻き、ライン上で送り状が貼られパレットに積まれていく。パレットはスター・ウォーズのテーマ曲を奏でるAGV(無人搬送車)に乗って、搬出口やストックルームへと移動する。さすがにトラックへの積み込みは自動ではなかったが、ストックルームへの搬入出は自動で、という徹底ぶりだった。

美味しい水を飲むためには……

富士山周辺の100名水

 もちろん富士山周辺以外にも、名水と呼ばれる水は多い。それらの水源の近くに住む人であれば、自分で汲みに行って飲むことも可能だろう。だが、都市部に暮らしている人たちにとって、毎日水源に行くのは非現実的。

 ウォーターダイレクトは、そうした名水の水源から遠くに住んでいても、気軽に、かつ安心して、名水が飲めるようにしてくれるメーカーの1つと言える。

河原塚 英信