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[二十四節気22]冬眠していた虫が出てくる「啓蟄」と、お彼岸の習わし

1年間を24の季節に分けた「二十四節気」で、「雨水」の次は土の中から虫が這い出てくる時節、「啓蟄(けいちつ)」です。今回は、啓蟄の由来や「意外な虫」の話、彼岸の入りにまつわる習わしをご紹介します。春の彼岸と言うとイメージする和菓子は「ぼたもち」ですが、地域によっては別の和菓子をお供えするところもあるようですよ。

 

大地が温まり冬ごもりしていた虫が出てくる時季「啓蟄」

啓蟄という言葉の「啓」には戸を開く、「蟄」には虫が土の中へ隠れて閉じこもるという意味があり、1787年の暦便覧には「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出ればなり」と書かれています。春を迎えて暖かくなると、大地も温まるので、今まで冬ごもりをしていた虫たちが穴から出てきます。その時季が啓蟄です。2018年の啓蟄は3月6日から始まり、次の節気「春分」の前日、3月20日まで続きます。

 

啓蟄に地中から這い出る虫、動物も含まれる!?

啓蟄のころ、冬眠から目覚めて地中から這い出てくる「虫」には、アリやテントウ虫などに加えてカエルやヘビも含まれるのだそう。カエルやヘビが虫というのは意外な感じですが、古い中国語で「虫」は広く動物を意味し、文字の部首に虫へんのついた「蛇」という字が広まったのをきかっけにヘビも虫として扱われるようになりました。3世紀の晋の時代以降で虎を「大虫」と呼んだ例もあるようです。

 

3月18日から「彼岸の入り」、お彼岸は7日間続く

啓蟄の終盤に差し掛かると、雑節の1つ「彼岸(ひがん)」がやってきます。年に2回ある彼岸は、 春分の日をはさんだ前後3日と、秋分の日をはさんだ前後3日を指し、それぞれ合計7日間続きます。どちらも初日を「彼岸の入り」、最後日を「彼岸明け」と言いますが、地方によって彼岸明けを「はしりくち」と呼ぶところもあります。もともと彼岸は仏教用語で、悟りを開いて到達する「浄土」の世界を彼岸、私たちが住むこの世の煩悩の世界を此岸(しがん)と言います。浄土は西の方角にあるとされ、太陽が真西に沈む春分と秋分は彼岸と此岸がもっとも行き来しやすい日と考えられています。2018年の彼岸の入りは3月18日、彼岸明けは3月24日です。

 

◇もうすぐ「お彼岸」、知っておきたい正しい「お墓参りのマナー」
https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/lifestyle/1162809.html

◇【二十四節気11】日の名前であり、時季の名でもある「秋分」
https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/lifestyle/1162826.html

 

春の「彼岸の入り」に供えるのは団子?ぼたもち?

彼岸には、仏壇やお墓を清めて先祖を供養する習わしがありますが、春の彼岸には多くの家庭で「ぼたもち」を仏壇へお供えします。彼岸の間、ぼたもちを毎日お供えする必要はなく、彼岸の入りに供えたものを春分の日にあたる中日にいただきます。しかし、「彼岸の入り」に必ずお供えするものと決まっているわけではなく、「入り牡丹餅に明け団子、中の中日小豆飯(赤の飯)」や「入り団子 中日牡丹餅 明け団子」といった言葉が伝えられている通り、ぼたもち以外に「彼岸団子」や「入り団子」をお供えする地域もあります。

 

◇【和菓子歳時記7】小豆で作る彼岸のお菓子「おはぎ」と「ぼた餅」
https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/lifestyle/1161894.html

 

啓蟄の次は、ぽかぽか春の陽気を感じられる「春分」

「三寒四温」という言葉があるように、寒い日と暖かい日が交互にやってきて次第に春らしくなるころ、次の節気「春分(しゅんぶん)」に入ります。次回は、春分の由来や習わしや桜が見ごろになる前に知っておきたい「お花見」についてのトリビアをご紹介します。お楽しみに!

 

 

高橋尚美

愛知県の渥美半島生まれ。東京での会社員生活から結婚出産を経て、2009年に夫の実家がある岐阜市へ。几帳面な戌年の長女、自由奔放な子年の次女、愛嬌いっぱいの辰年の三女を育てる母ライフを満喫しつつ、qufourのリサーチ記事や地元で発行している食育冊子の記事を執筆しています。