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【和菓子歳時記7】小豆で作る彼岸のお菓子「おはぎ」と「ぼた餅」

残暑もようやく和らぎ、お彼岸も近づいて過ごしやすい季節になりました。春は「ぼた餅」、秋は「おはぎ」と、牡丹や萩と季節の花になぞらえて呼ばれることもあるお彼岸の和菓子「おはぎ」を、今回はご紹介します。家庭で手作りしてお供え物にしたり、出産後の女性に食べさせる風習もある、日本人の生活と関わりの深い和菓子です。

 

「半殺し」にしたお米が特徴の和菓子、変わりおはぎも

蒸したモチ米やうるち米を、形が残る程度に搗(つ)いた状態を「半殺し」、形が残らないところまで搗いた状態を「本殺し」「皆殺し」と呼びます。おはぎは「半殺し」の米を丸形や俵型にして、あんで包んだ和菓子です。ほかにぜんざいのようにあんこを上から掛けた形もありますが、蒸して「半殺し」にした米を使うことが共通しています。定番のつぶあん、こしあんの他に、あんを芯にして半殺しの米で包み、すりゴマ、きな粉、青海苔などをまぶした「変わりおはぎ」も美味しく彩りも楽しいのでおすすめです。

 

お彼岸におはぎを食べる習慣

お彼岸は、春夏それぞれ春分の日、秋分の日を中日とした前後の3日間の計7日間です。お彼岸の初日には「入り団子」、最終日には「明け団子」、中日におはぎを供えて食べる習慣がありました。特に中日は故人への思いが伝わりやすい特別な日と信じられ、さらに小豆には邪気を払う意味があり、また高価だった砂糖をふんだんに使ったおはぎは、特別なお供え物だったのでしょう。

 

ぼた餅は春でおはぎは秋のもの?

おはぎは、季節の花になぞらえて、春は「ぼた餅」、秋は「おはぎ」と、呼び名が変わると言われますが、実際には、季節で呼び名が変わることはほとんどなく、関西圏ではぼた餅、関東圏ではおはぎと、年中通して同じ名で呼ばれています。萩の花の別名の「ぼた」や「母多餅(ぼたもち)」、ごはんやお米を表すサンスクリット語の「ボッタ」に、あとから「牡丹」の字を当てたという説もあり、身近な和菓子である故に正解をひとつに決めることは難しくなっています。

 

出産後の女性に食べさせる「三つ目のぼた餅」

 茨城や千葉など関東の一部の地域に、出産後3日目の女性に、母乳の出が良くなるようにと「三つ目のぼた餅」として食べさせる風習があります。半殺しにしたモチ米を敷き詰め、その上へ小豆あんを重ねたお弁当のような形のものや、大き目に仕上げたおはぎを重箱に3つ詰めたものがあります。栄養価の高い小豆と、かつては高価で貴重品であった砂糖をふんだんに使った甘いものを食べさせて、出産で疲れた母体を労わる意味がありました。現在でも地域によって、楽しいお祝い行事として行われています。

 

まとめ

おはぎ、ぼた餅と呼び名が変わっても、広い地域で永く愛されている、素朴で美味しい和菓子です。栄養価の高い小豆を使った和菓子なので、季節の変わり目で疲れた身体と心を癒しすのに、役立ちそうです。かつては手作りしていたご家庭も多いのではないでしょうか。お彼岸には、ご先祖様を思い出しながらおはぎを食べてみて下さいね。

 

 

石原マサミ(和菓子職人)

創業昭和13年の和菓子屋・横浜磯子風月堂のムスメで、和菓子職人です。季節のお菓子や、和菓子にまつわる、歳時記などのご紹介を致します。楽しく、美味しい和菓子の魅力をお伝えできたら、嬉しいです。石原モナカの名前で、和菓子教室も開催中。ブログはこちら