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【ダウン症児と私29】イヤなことに起こる嘔吐反応、ゆっくり克服する日々

療育中、苦手なことがあると泣きながら教室の隅へ逃げるようになってしまったユキトくん。今回は、急に苦手な色や物に「オエッ」としてしまう嘔吐反応が出てきたときの話を聞きました。先生に「イヤなことが出てくるのも、成長過程」と言われても、泣いてしまったり、体が拒否してしまうユキトくんを見て焦るナナさん。少しずつ様子を見ながら、苦手な色や物に慣れさせる日々が続きます。

 

嘔吐反応の前は、イヤなことがあると泣いて逃げてしまう日々

Q.療育で苦手なことがあると、教室の隅に逃げてしまうということですが、全てのプログラムが苦手だったのでしょうか。 

A.全てではありません。滑り台やトランポリンはニコニコしながら遊んでいましたが、ブルーシートやボールプール、舞っている紙吹雪を見ると逃げてしまっていました。先生の言う通り、苦手なものにだけ反応しているようでしたが、それでも療育に参加できない時間が多くなってしまうのが心配で、私はなんとか、ユキトのご機嫌を取ろうと焦っていました。

 

最初の嘔吐反応は、運動会の練習の玉入れの「赤玉」

Q.泣いて逃げる以外にも、何か別の反応はありましたか

A.はい。運動会が近づいた時期に、玉入れの練習がありました。ユキトに赤い玉を渡すと、手にした赤玉を見ながら「オエッ」と吐くような声を出して、玉をすぐに投げてしまいました。担任の先生は「ユキトくんは、この赤い玉が嫌いなんじゃないかな?」と言いましたが、私はそんなことはないと思い、何度もユキトに玉を渡してみました。でも、何度渡してもユキトは「オエッ」として赤玉を投げてしまい、ついにはその場から逃げてしまいました。それまで赤い色を見てイヤだという反応をしたことがなかったので、私は不思議でよく分からなくなってしまいました。担任の先生によると、これはユキトがこの赤い玉をイヤだという体の反応で、「嘔吐反応」ということでした。

 

Q.嘔吐反応のあと、玉入れの練習はどうされたのですか?

A.私は、ユキトと赤い球の距離を開け、慣れて来たら少しずつ近づけるようにしてみました。20分ある練習の時間のうち、始めの5分くらいは「オエッ」としていましたが、そこから距離をとり10分くらいかけて段々と近づけていき、最後の5分ぐらいは慣れて遊べるようになりました。この日、最後の5分間はしっかりと遊べたので、運動会当日は、赤い球を見て逃げるようなことも嘔吐反応もなく、玉入れを楽しむことができました。

 

嘔吐反応は、安心させてゆっくり慣れさせる

Q.ほかにも、嘔吐反応をすることはありましたか?

A.幼稚園では、粘土の代わりに小麦粉、食紅、水を混ぜた「小麦粘土」を作って遊ぶのですが、混ぜる途中で全体が鮮やかな赤色が変わったのを見たときも、ビックリして「オエッ」としていました。また、洗濯用の糊へ青い食紅を入れた「手作りスライム」にも嘔吐反応が出てしまいました。これらも同じように、遠くから段々と近づけて慣らしていくと、10分くらい経ってから遊べるようになりました。

 

Q.赤い色に反応していたわけではないのですね

A.最初は赤い色がイヤなのかと思ったのですが、青いスライムにも反応しましたし、黄色の絵の具を出したら、オエッとしたこともありました。そのときも、絵の具をユキトから離して距離を取り、違う色の絵の具で遊んで、絵の具遊びに慣れてきてから少しずつ黄色の絵の具を出してみたら、遊べるようになりました。

 

Q.「オエッ」とするのは声と反応だけで、実際に吐いてしまうことはないのですか?

A.実は先日、青いスライムを手に持って口に近づけ、唇に触れるか触れないかというところまでいったら、実際に嘔吐してしまいました。これまで嘔吐反応は全部で5回ありましたが、そのうち実際に吐いてしまったのは始めてでした。体が拒否反応を起こしているから嘔吐反応が出ると言われましたが、ユキトは青いスライムに手を伸ばしたので、興味はあったのだと思います。子どもは誰でもそうだと思いますが、はじめての物にビックリしたり、怖がって泣いたりします。ですので、嘔吐反応があったときは、まずは抱っこなどで安心をさせて距離を取って、段々と慣らしていくようにしています。

 

ダウン症の基礎知識29:心因性の嘔吐反応は、成長で治まる

ユキトくんの嘔吐反応は、起きている場面からも分かる通り、身体的な異常はがなく、不安や緊張などの心理的なストレスから起きていることが分かります。嘔吐は、脳にある嘔吐中枢への刺激で発生しますが、子どもは中枢神経が未発達なため、大人よりもさまざまな刺激に反応しやすく、嘔吐反応が出やすいそう。また例えば「バス酔い」で1度辛い経験をしてしまった子どもは、バスを見ただけで嘔吐反応してしまうというように、特定の条件で繰り返してしまうこともよく知られています。ただ、成長過程で神経が発達してくれば、自然と治まることが多いもの。ナナさんのように子どもを安心させてあげて、様子を見ながら、本人が「大丈夫」と思えるように、慣れさせてあげられるといいですね。

 

 

ナナ

5歳のダウン症の息子「ユキト」と、3歳半の弟「マサト」のママの「ナナ」と申します。ダウン症の子どもを育てている様子や、母親の気持ちなどを率直にお話ししたいと思います。