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【和菓子歳時記17】春の季語の1つ「草餅」で、季節の変わり目の厄払い
2017年 3月 4日 07:30
春のきざしが訪れるころ、和菓子店には蓬(ヨモギ)を練り込んだ餅菓子「草餅」が並び始めます。今回は、春の季語にもなっている和菓子「草餅」についてご紹介します。「草餅」は、現在でも多くの和菓子店で販売され、手作りする家庭もある身近で素朴なお菓子ですが、古代中国では強い香りの草は邪気を払うと信じられていて「上巳(ジョウシ)」の日に「草餅」を食べて厄祓いをしていた歴史があります。
穢れを祓い無病息災を願う「上巳の節句」が「ひな祭り」に
元々「上巳」とは上旬の巳の日という意味で、季節の変わり目に当たるので、邪気が入って来やすいと考えられていました。そのため古代中国では、水辺で穢れを払う習慣がありました。その後、この習慣が3月3日に行なわれるようになり、これが日本に伝わり「上巳の節句」として宮中行事になりました。当時は、季節の変わり目に春を喜び穢れを払い、無病息災を願うための行事でしたが、宮中の女子のままごと遊びと結びつき、江戸時代には女子の健やかな成長を願う「ひな祭り」へと変化し、庶民にまで広がって行きます。
草の香りで邪気払い、「上巳の節句」の行事食だった「草餅」
古代中国では香りの強い草には邪気を払う力があると信じられていて、上巳の日には春の七草の1つで「五行(ゴキョウ)」や「御形(オギョウ)」と呼ばれる「母子草(ハハコグサ)」を練り込んだ草餅を食べて厄払いをしていました。ハハコグサは、咳止めなどの効果がある薬用植物です。この習慣も日本に伝わり、「上巳の節句」そして「ひな祭り」に草餅が食べられるようになります。江戸時代に「ひな祭り」は「桃の節句」のほかに「草餅の節句」と呼ばれることもあったそうです。
「草餅」の材料は、ハハコグサからヨモギへ変化
古くは春の七草の「ハハコグサ」が用いて作られていた草餅ですが、平安時代から次第に「ヨモギ」を練り込んだものが多くなっています。一説には、「母子(ハハコ)を臼と杵で搗くことは縁起が悪い」と避けられたという話もありますが、今でも秋田や京都北部などハハコグサを使った草餅が作られる地方もあり、ヨモギに変わった経緯は正確には分かっていません。
まとめ
ヨモギは食用のほか、生薬やお灸に使う艾(モグサ)の材料になったりと多様に使われている身近なハーブです。ヨモギの新芽を使った草餅の爽やかな芳香とほのかな苦みは、春の到来を感じさせます。現在では乾燥させたものや、蒸してから冷凍した「ヨモギ」も流通しているので草餅は年間を通して食べられるお菓子になっていますが、春に食べると特別に美味しく感じます。みなさんも春の和菓子を楽しんで下さいね。