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【和菓子歳時記16】ひな祭りの「飾り菓子」と、初節句内祝いの「式菓子」
2017年 2月 24日 07:30
まだまだ肌寒くても、暦の上では春。今回は、女子の健やかな成長を祝う、桃の節句「ひな祭り」の和菓子をご紹介します。この時期は、女の子のお祭りにふさわしく、華やかで愛らしい和菓子が店頭に並びます。ひな祭りのお菓子と言うと、ひな壇に飾る「ひなあられ」や「菱餅」が浮かぶと思いますが、そのほかにも初節句の内祝いに配る上生菓子の「式菓子」もあるんですよ。節句の名前にもなっている「桃」は、旧暦の3月上旬、現在の4月上旬ごろに、薄桃色の花を咲かせるので、3月3日ではなく旧暦に合わせた4月に「ひな祭り」を行なう地域もあるそうです。
ひな人形の起源、平安貴族の「ままごと遊び」と「流しびな」
「ひな祭り」は、平安貴族の子女が御所を模した小さな屋形と人形で、宮中の様子を真似たままごと遊び「ひいな遊び」が起源の1つと言われています。一方、中国から伝わった穢れ払いの行事「上巳の節句」には、形代と呼ばれる紙製の人形を川に流す、現代の「流しびな」の風習ありました。この2つが結び付き、女児の健やかな成長を祝う行事としてひな人形を飾る風習が武家社会に生れ、江戸時代には庶民にも広まったと言われています。そして「ひな祭り」で供される「甘酒」や「ハマグリのお吸い物」など行事食や、ひな壇に供える「ひなあられ」や「菱餅」といった飾り菓子や式菓子などが作られるようになります。
関西と関東で、味の異なる「ひなあられ」
関西圏で「ひなあられ」と言えば、もち米で作った丸いあられに醤油や塩をまぶしたものが主流。ひな祭りの供え餅である「菱餅」砕いてあられにしたのではないかという一説もあります。一方、関東圏の「ひなあられ」は、うるち米を加熱し圧力をかけて膨らませたポン菓子のようなものに糖蜜を掛けて乾燥させた甘いお菓子。緑や桃色など彩りがあり可愛らしく、安価で日持ちのするので行事食というより、ひな人形と一緒に飾る「飾り菓子」として親しまれています。
ひな祭りの供え餅「菱餅」、かつては内祝いで配ることも
現在では手軽な価格で売られている「菱餅」ですが、昭和時代には「ひな祭りの供え餅」として欠かせないもので、内祝として配られることもありました。緑、白、桃色の3色の餅を手作業で均等にのして張り合わせるのには技術が必要なうえ、張り合わせてから菱型に切り出す必要があるので、手間がかかる高価な餅でした。緑色の部分はヨモギが使われていて風味がよく、「ひな祭り」の時期の和菓子店では、菱型に整えられた「菱餅」の傍らで自宅用に「切り落とし」も販売されていました。
可愛いミニチュアのお菓子もあった、ひな祭りの「式菓子」
かつて特別な行事や祝事では、引き出物や内祝に「式菓子」という和菓子を配る習慣がありました。「式菓子」は上生菓子を通常より大きなサイズで作り、木箱や化粧箱に詰め合わせたもの。でも、ひな祭りの内祝いで配られる「式菓子」は、ままごとをイメージする、小さな果物や、ミニサイズのにぎり寿司の詰め合わせなど、ミニチュアサイズのものもあり大変可愛らしいものでした。最近は、残念ながらそういったままごとをイメージするものが減り、季節の上生菓子詰め合わせを用いることが多くなっています。
まとめ
ひな祭りのひな人形は、qufour世代が子どもの頃は、段飾りなど大型のものが主流でしたが、現在は二人雛やミニチュアなど小さいものが多くなっていますね。フェルトやちりめん細工の手作りのおひな様を飾る人も。時代によって形は変わっても「可愛いおひな様」を飾って女児の成長を祝う風習であることは引き継がれています。彩りある和菓子や行事食で「ひな祭」を楽しんで下さいね。
【和菓子歳時記15】豆で邪気を払い、新年を迎える「節分・立春」の和菓子
https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/lifestyle/1162171.html
【和菓子歳時記】記事一覧
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