老師オグチの家電カンフー

10年前のiPhone付属イヤホンを飛行機の機内エンタメで活用する

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
機内で配られる無料イヤホン。「ご自由にお持ち帰りください」とありますが、自宅などで使っている人はどのぐらいいるのでしょうか?

今年は飛行機に乗る機会が多いです。主に羽田と大阪(伊丹)の往復なんですが、映画を見るには短すぎ、ただぼーっとするには長すぎる距離です。いわゆる、帯に短したすきに長し。機内Wi-Fiにつないでスマホを見るのがちょうどよい時間の過ごし方なんですが、たまに国際線用の機材に変更されると、Wi-Fiも使えなくなるんですよね。そんな時は、モニターで30分程度のテレビ番組などを見ることが多いです(CMが入らないんで、放送で見るよりも快適だったりします)。

ただ、機内でもらうイヤホンには若干の不満があります。まずは音質がよろしくない。まぁ無料だし、贅沢を言うつもりはありませんが、映画などでは迫力も軽減する気がします。そして形状のせいか材質のせいか分かりませんが、耳が痛くなりがちです。さらには、使い捨てなので、なんだか環境に悪そうな気もします。航空会社はリサイクルしているでしょうが、コンビニのレジ袋ごときが有料化される時代なので、罪悪感がゼロになるわけではありません。

ケーブルの結び方が独特ですよね。音質は推して知るべし

プレミアムクラスやビジネスクラスには、立派なヘッドホンが備え付けられていますが、普通席、エコノミー席で対処すべき方法としては、自前のイヤホンやヘッドホンを持ち込むことになります。しかし、今どき有線のイヤホンを持ってる人って、少数派じゃないですか? iPhoneもけっこう前にオーディオジャックを廃止していますし。そこで思い出したのが、引き出しにしまい込んだiPhone付属のイヤホンの存在です。あれが使えるんじゃねと。

調べてみると、オーディオジャックが搭載された最後のiPhoneは、2015年発売の「iPhone 6s」。2016年発売の「iPhone 7」以降はオーディオジャックが全廃されています。「iPhone 6s」は購入していないので、手元にあるのは、おそらく「iPhone 6」(2014年9月発売)の付属品だと思われます。つまり、10年ほど前のブツです。これを機内に持ち込んでみました。

おそらくiPhone 6に付属していたイヤホン(未使用)。この時代は、立派なプラスチックのケースに収められています(後の時代になると、紙パッケージに変更され、2020年発売のiPhone 12からはイヤホン自体付属されなくなった)
マイク機能付きと分かるオーディオ端子。ケーブルの長さ(端子からイヤホンまで)は1m10cmほど

結論、音質が断然アップグレードしました。ナレーションの聞き取りやすさも向上しましたし、音楽も楽しめるレベルに。聞き取りにくさから発生していた無意識下のストレスも軽減される気がします。ノイズキャンセリング機能はないですが、近年は機内の騒音もかなり少なくなってきているので、とくに不満は感じません。

ケーブル長は約1mと、モニターと席の間ではちょうど良い長さです。基本的に席から動かないので、有線で問題なし。むしろ、完全分離タイプのワイヤレスイヤホンのように、落っことして紛失する心配がありません。ワイヤレスイヤホンをオーディオジャックで使用可能にするBluetoothのトランスミッターも存在しますが、接続の切り替えや充電の手間を考えると、有線でいいんじゃないかなぁ。

無料イヤホンとの音質の違いに驚く。イヤホンだけプレミアムクラスにアップグレードされた気分

いやこれ、もっと早く気づくべきでした。もちろん、すでに自前のイヤホンを持ち込んでいる人も多いのでしょうが、iPhoneの付属品活用なので、実質無料みたいなもんです。使っていなかったイヤホンの再利用ですし、無料イヤホンを使い捨てることもなく、環境にも良いじゃないですか。グレタさんに褒めてもらいたいレベルです。いや、飛行機に乗っている時点でグレタさんからは「恥を知れ」と怒られるか。恥という字は、なぜ耳に心なんでしょうかね。耳に心地よいイヤホンの話でした。

有線なので落っことす心配不要。一時停止時は、モニター横の衣類用フックに掛けておくとよろし
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>