老師オグチの家電カンフー

現代の妖怪アイテム「ハンコ」をゲゲゲ化してみた

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです
「ゲゲゲの鬼太郎」のデザインのハンコを作りました

世の中が徐々にDX化していますが、皆さんついていけてますでしょうか?

リモートワークにおけるハンコ出社のように、効率化を阻害する象徴となってしまっているハンコ。実際、デジタルの画像技術が進んだ現在、印鑑はどこまで認証としての機能があるんでしょうか。

DXの邪魔だと槍玉にあげられつつも、ハンコはビジネスの現場で生きながらえています。社内文書で捺印する時は、上司に対してお辞儀をするように傾けて押すべきだとか、ワタシのようなフリーランスにはにわかに信じがたい風習も存在しているようです。

それに、宅配便の受け取りなど、日常的に使う機会もまだあります。1個もないというのは考えづらいというわけで、個人としては20年以上ぶりにハンコを買ってみました。

「ゲゲゲ ゲゲゲの鬼太郎はんこコレクション」キャップレスセルフインクタイプ。購入価格2,500円

注文したのは、ゲゲゲの鬼太郎のキャラクターを使った「ゲゲゲ ゲゲゲの鬼太郎はんこコレクション」です。タイプは、木彫りの印鑑と、キャップレスのセルフインクタイプの2種類。キャラクターは、鬼太郎、目玉おやじ、ねずみ男、猫娘、砂かけ婆、子泣き爺、ぬりかべ、一反もめんなど。それぞれのキャラクターは、アニメ第1期(1968年〜1969年)から第6期(2018年〜2020年)まで、時代ごとの絵柄が用意されています。

選んだのは、日常で使いやすいセルフインクタイプ。木彫りの印鑑もかっこいいですが、さすがに銀行印などに使う気がせず、用途を思いつきません。絵柄は第1期の「目玉おやじ」をチョイス。クラシカルな絵柄の方が妖怪らしさがありますし、ハンコというアナログな現在の妖怪的アイテムと親和性がある気がしまして。

「アニメ絵のハンコなどふざけるな」と怒る向きもあるかと思いますが、ハンコもこれからは、LINEのスタンプのように自分らしさを表現するアイテムとして残るんじゃないでしょうか。実際、歴史上の人物の印もかなり個性的なモノがあります。北条氏の印は虎の絵が付いていますし、武田信玄の印は竜の絵、弘法大師の印は絵なのか字なのかよく分からない模様です。

さて、ワタシの目玉おやじハンコ、人に見てもらってナンボなので、カバンに入れて持ち歩いておりますが、いまだ押す機会がありません。実物は見える人にしか見えない妖怪的な存在になっております。

かの空海、弘法大師の落款印(国文学研究資料館「蔵書印データベース」より)。これは文字なの? 絵なの? どことなく目玉おやじっぽくもある
小口 覺

ライター・コラムニスト。SNSなどで自慢される家電製品を「ドヤ家電」と命名し、日経MJ発表の「2016年上期ヒット商品番付」前頭に選定された。現在は「意識低い系マーケティング」を提唱。新著「ちょいバカ戦略 −意識低い系マーケティングのすすめ−」(新潮新書)<Amazon.co.jp>