老師オグチの家電カンフー

「ボディトリマー」の上の句とシモの句

カンフーには広く「訓練を積み重ねる」といった意味があります。「老師オグチの家電カンフー」は、ライターの小口覺が家電をネタに、角度を変えてさらに突き詰めて考えてみるコーナーです

 パナソニックの「ボディトリマー ER-GK60-W」を買いました。

 家電 Watchの読者に説明は不要かもしれませんが、アンダーヘアを含む男性のムダ毛をカットするためのバリカンです。ボディ全般の毛に使えますが、特にVIOラインの処理に合わせて開発されています。

「ボディトリマー」の上の句とシモの句 パナソニック「ボディトリマー ER-GK60-W」
パナソニック「ボディトリマー ER-GK60-W」

 VIOというのは、アンダーヘアの前(V)、下(I)、後ろ(O)を表していまして、特にボディトリマーの形状が効いてくるのがお尻の部分(O)です。ちょっと写真も見せられませんし、あまり突っ込んで説明すると家電Watchという媒体らしくない内容になりますので、各自検索してみてくださいね。

 こういった男性の美容製品は、意識の高いユーザーに支えられています。日本には伝統的に、「男は必要以上に見た目にこだわるべきじゃない」という雰囲気がありますから。特にアンダーヘアの処理は、海外から最近やってきた習慣です。欧米では、パートナーへのエチケットや衛生上の理由から一般化しているようです。セレブ女優が全身脱毛している情報が出回ったあたりから、日本でも女性に広まってきました。さらに、男性にもこの波が来ているわけですが、やはり男性にとって脱毛の敷居は高いので、ボディトリマーのようなアイテムなら始めやすいでしょう。ヒゲなら毎日剃っているわけですし。

 ボディトリマーは、そんな意識高い習慣に対応するアイテムではあるのですが、一方で、アンダーヘアという「シモ」に関わるため、これまで大手企業が手を出さない領域でした。昭和の時代ならあり得なかったでしょう。「我が社がそんな下劣な商品出せるわけない!」と役員が激怒する姿も想像できます。意識の高さと低さを両方取り込んだ製品であり、パナソニックが元気な理由がここに凝縮されていると思うのです。

「ボディトリマー」の上の句とシモの句 普通にヒゲトリマーとしても使えるが、抵抗を感じる人が多いと思う。「顔はやばいよ、ボディやんな、ボディを」
普通にヒゲトリマーとしても使えるが、抵抗を感じる人が多いと思う。「顔はやばいよ、ボディやんな、ボディを」

 どうしても気になってしまうのは、ボディトリマーという名称です。ボディは直接的ではない、ボカした表現です。しかし、それでも多くの人が正確に理解すれば問題ないわけです。生理用品のCMに青い液体が使われるようなお約束です。AV女優は、セクシータレントと言い換えられることでテレビに出やすくなりました。ちょっと、もやもやしますけど、そういう社会なんですよね。

 今回の結論を、百人一首(蝉丸の歌)をアレンジして表現してみました。シモの句は、そのままです。

これやこの
ボディトリマー
使いては
知るや知らぬも
あふ坂の関

※オグチ的現代語訳=これが話題のボディトリマーか。使ってみたところ、流行を知っている人にも知らない人にも合う製品を作る大阪の会社なのだなぁ。

小口 覺

雑誌、Webメディア、単行本の企画・執筆、マンガ原作、企業サイトのコンテンツ制作を手がけるライター。日経MJの発表した「2016年上期ヒット商品番付」では、命名した「ドヤ家電(自慢したくなる家電)」が前頭に選定された。

Webページ「有限会社ヌル/小口覺事務所」
http://nulloguchi.wix.com/nulloguchi